日本代表FW町野修斗 2026年北中米ワールドカップに向け、本格的な強化がスタートした。ご存じの通り、今回の6月シリーズはサバイバル色が非常に強いメンバー構成となっている。絶対的な主力と言えるのは、キャプテンの遠藤航、カタールW杯経験者の鎌田大地と久保建英、GK鈴木彩艶くらい。それ以外の面々はここから日本代表で確固たる地位を築いていかなければならないのだ。
カタールW杯経験者でありながら、第2次森保ジャパンでは2回しか招集されていない25歳のFW町野修斗もその一人。2022年のE-1選手権で目覚ましい働きを見せ、中山雄太の負傷辞退によって前回W杯のラストピースとなった男は、日本代表新体制の初陣だった2023年3月シリーズに参戦。2戦目のコロンビア代表戦に先発起用されたが、その時の評価が低かったのか、そこから招集見送りが2年も続くことになってしまったのだ。
その間、町野は湘南ベルマーレから当時ブンデスリーガ2部のホルシュタイン・キールへとプレー環境を変え、最初から主軸FWの座を射止めた。そして、1年で1部昇格をつかみ取り、今季は欧州5大リーグに初参戦。チームの重要なピースとしてフル稼働し、リーグ戦32試合出場11得点2アシストという傑出した数字を残すことに成功している。キールは惜しくも1年での降格を強いられたが、個人的な評価を一気に引き上げたのは間違いない。森保監督も進境著しい25歳のFWに着目。今年3月シリーズに再招集し、北中米W杯出場を決めたバーレーン戦でピッチに送り出したのだ。「僕に関しては、ここからしかないので。また頑張っていきたいです」と本人はやや不完全燃焼感をにじませながらも、毅然と前を見据えていた。
それから2カ月半が経過し、6月シリーズを迎えたわけだが、今回のFW陣はかつて湘南で共闘していた大橋祐紀、2022年のE-1選手権でともに戦った細谷真大との3人体制。アジア最終予選で目下、グループ2位につけるオーストラリア代表戦の方が重要度が高いと目されるため、ここで誰が先発起用されるかで、現時点での序列がハッキリすると見てよさそうだ。
町野としては、第1戦目のスタメンを貪欲に狙っていきたいところ。最終予選の招集回数では大橋に劣るものの、彼には欧州5大リーグでの確固たる実績がある。その決定力を前面にアピールしていくしかない。加えて言うと、キールでの町野は単にゴールを奪うだけでなく、2列目に下がって起点を作ったり、ボールをさばいたり、ロングスローを投げたり、FKキッカーも務めるなど、実に幅広いパフォーマンスを見せていた。その器用さと万能性は大きな魅力と言っていいだろう。
「日本代表ではキールみたいに2列目まで落ちるシーンはなかなかないと思います」と町野は話しているが、1トップの位置でターゲットになりながらも、周りと意思疎通を図ちながら、自分らしさを発揮していけばいい。今回は代表経験の少ないメンバーとの共演になるため、多少は難易度が上がるかもしれないが、W杯経験者として若い面々をリードするくらいの風格を見せてほしいところだ。
そのうえで、得点・アシストという明確な結果を残す必要がある。町野はここまで代表6試合に出場。2022年のE-1選手権の香港戦で2得点、韓国戦で1得点をマークしているが、それは3年も前の話だ。ドイツでの2シーズンで屈強なDFと対峙し、駆け引きしながら、フィニッシュに持ち込むようなプレーに磨きをかけ、力強さもアグレッシブさも増したはず。スケールアップした姿をオーストラリアというタフな相手に見せつけ、非凡な得点力を発揮できれば、常連組の仲間入りも見えてくるのではないか。
森保監督は今のところ上田綺世と小川航基をFWの大黒柱と位置づけている様子だが、3枠目はまだまだ流動的。左サイド兼務の前田大然もFW要員の一人であり、昨年9月シリーズ以降、代表から遠ざかっているベテランの浅野拓磨も虎視眈々と復帰を伺っているため、狭き門を巡る争いはかなり熾烈だ。だからこそ、この6月シリーズの一挙手一投足が極めて重要になってくる。
「もう一度、W杯に行って、今度こそピッチに立つ」と誓ってこの3年間過ごしてきた町野が、今回の限られたチャンスに賭ける思いは凄まじいものがある。そういったマインドを含めて、持てるものを全て出し切ることが肝要なのだ。果たして5日のオーストラリア戦の先発FWは誰なのか、町野に出番は訪れるのか……。そこに注視しながら、森保監督の判断を待ちたいものである。
取材・文=元川悦子