断脚に腎不全…何度も危機を乗り越えた“元・外飼い猫” 3本足でも貫禄たっぷり、20年寄り添った姿は「スナックのママみたい」

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2025年06月04日 13:30  まいどなニュース

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まいどなニュース

かわいい甘え顔

「酔って、床で寝てしまった夫の頭を一生懸命、毛づくろいし、介抱してくれた。『スナックのママさんみたいだね』なんて言って、Xには“スナック茉唯(まい)のまいママ”と投稿していました。

【写真】酔って、床で寝てしまった夫を介抱してくれたこともある…スナックのママみたいな猫さんです

亡き愛猫まいさんはそんな優しさと寛大さを持つ猫。獣医師からは、アメショーの血が混じっていると言われた。

まいさんは20年前、飼い主さん(@tomikopinkcats)の実家に迷い込んできた子。断脚手術を乗り越え、慢性腎不全と闘い、最期まで愛されながらニャン生を全うした。

外飼いだった実家猫を「うちの子」にして…

まいさんと出会った20年前、猫の完全室内飼いは主流ではなく、飼い主さんの祖母は家に猫を入れることに抵抗があった。だが、離乳後間もないまいさんを可哀想に思い、外飼いをし始める。

母の助言によって、まいさんは避妊手術も受けた。当時、大学生だった飼い主さんは撫でたり、ブラッシングをしたりしてスキンシップをとっていたという。飼い主さんにとっては、仲のいい妹のような存在だった。

やがて飼い主さんは実家を出て、結婚。その後、祖母が他界したことを機に、祖母が物をしまうため自宅近くに購入した中古の一軒家で夫と暮らし始めた。

まいさんとの関わり方が変わったのは、2015年のことだ。駐車場で後ろ足から血を流し、浅く呼吸をしているところを発見し、すぐにかかりつけ医へ連れて行った。猫同士の喧嘩によって深い傷を負っていたようだ。傷口は化膿しており、脱水症状も見られた。

熱もあったため、まいさんは2週間ほど入院。飼い主さんはほぼ毎日面会へ行き、話しかけたり撫でたりしながら、「我が家で引き取ろう」と決意した。

飼い主さんが驚くほど爆速で“家猫ライフ”に順応!

外生活が長かった猫の中には、完全室内飼いの生活に慣れることが難しく、自身の被毛をむしるなどの自傷行為をする子もいる。だが、まいさんは飼い主さんが驚くほど速く、家猫ライフに慣れてくれた。

「まずはケージで過ごしてもらったのですが、すぐにトイレを覚えてくれて…。夫もびっくりでした」

当時、自宅にはまいさんより年下の先住猫が暮らしていた。2匹を対面させたのは、1ヶ月の隔離生活を終えた後。初対面時、ビビリ倒している先住猫とは対照的にまいさんは「ふーん、アンタが先にいたのね。まあ、よろしくね」とでも言うかのように一瞥しただけだった。

外での辛い記憶はできるだけ忘れて、家猫生活を満喫してほしい。そう思い、飼い主さんはお迎え後、まいさんの名前の漢字を変えた。

「もともとは、外飼いを決めた祖母がファンだった力士の名前からとった“舞”でしたが、” 茉唯“にしたんです」

「繊維肉腫」で3本足になり、慢性腎不全との闘いも…

まいさんは温厚ではあったが、後に迎えた後輩猫2匹には教育的指導を行うことも。毛づくろいなどのケアを行う一方、後輩猫たちがいけないことをした時には、爪を出さずに軽く猫パンチ。猫界や家猫ライフを送る上でのルールを叩きこんでくれた。

「ただ、私たちには控えめな態度で、そっとよってきて、さりげなくナデナデをせがむんです」

まいさんが甘えるのはいつも、飼い主さんが一息ついた時。状況を把握してからトントンと背中を叩き、ナデナデを催促する姿が健気で愛おしかった。

しかし、穏やかな日々は、まいさんが14歳になった頃、一変する。右手をあげていることが多くなったなと思い、触ったところ、本気で怒られた。

温厚なこの子がこれほど怒るのだから、ただごとではない。そう感じ、病院へ行くと「繊維肉腫」という悪性腫瘍が見つかった。放置すれば、転移や右手が破裂する可能性が高い。そう告げられ、断脚手術に承諾した。

手術を終え、退院した後はしばらく、サークル内で過ごしてもらおうと思っていたそう。だが、まいさんの回復力は想像以上にすごく、退院初日に自力でトイレへ。

3日後には歩き始め、2週間後には階段を上った。飼い主さんはただただ、適応力の高さに驚かされたという。

ただ、ホっとしたのも束の間。断脚手術から1年も経たない頃、まいさんに新たな異変が…。水を飲む回数が増え、尿の色が薄いように感じた。もしかして…と思い、かかりつけ医で血液検査をすると、慢性腎不全が判明。投薬治療が始まる。

飼い主さんは水飲み場を8箇所に増やすなど、自宅でできるケアも行った。だが、18歳を迎える頃には動物病院で指導を受けて自宅で補液を行うほど、病状は進行。

「夜鳴きが増え、ソファーに飛び乗れなくなりました。寝ていると大きな声で呼ばれるので、そのたびにそばへ行き、落ち着くまで撫でました。いつも、心がはちきれそうなでしたが、『まいさんのためだけじゃない、私が後悔しないため』と自分に言い聞かせていました」

慢性腎不全から“てんかん発作”も起きて「最期の別れ」が…

そんなある日、まいさんは突然倒れ、立ち上がれなくなった。動物病院へ行くと、「老猫に多い、腎不全からくる“てんかん”」と言われ、目の前が真っ暗になったという。

診断から3日後、いつものように投薬と補液を済ませた夜、再びてんかん発作が起きた。飼い主さんは急いで、かかりつけ医の獣医師の携帯に電話。「タオルなどでサークルを作り、落ち着いた頃に投薬して」と指示を受け、準備していると、はい回り疲れたのか、まいさんが布団の横へ。

「だから、ずっと撫でました。祈るような気持ちでそばにいましたが、日々の夜鳴きに付き合っていた疲れからか、少しウトウトしてしまった。そしたら、その間に逝ってしまいました」

愛猫が旅立ったことに気づいた飼い主さんは名前を呼び、泣き叫んだ。

「四十路にもなるのに、深夜にわあわあと泣くことしかできませんでした。あんな泣き方をしたのは多分、幼稚園以来です」

まいさんが旅立った後は、心が苦しかった。だが、四十九日が近づく頃に不思議な夢を見たことで、心境に変化が。それは、対面したまいさんと人語で話す夢だ。夢の中で、まいさんは「天国ってね、概念なのよ。だから、ねえね(飼い主さん)が素敵なところを心に描いてくれたら、アタシはそこにいられるの」と語ってくれた。

「多分、私の願望なのでしょうが、その夢を見た後からはおいしいものを食べ、元気な姿で活き活きとしながらのんびり過ごしているまいさんの姿が浮かぶようになりました」

2年半経った今でも会いたいし、抱きしめたい。そう話す飼い主さんは華やかに彩った祭壇に毎日話しかけ、愛を伝え続けている。

どこか達観していたまいさんは、そんな飼い主さんを「本当にアタシのことが大好きなのね」と優しく見守っているはずだ。

(愛玩動物飼養管理士・古川 諭香)

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