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6月2日に行われた参議院の消費者問題特別委員会で、公益通報者保護法の改正案の審議が行われた。出席した議員らからは、法改正へのきっかけを作った”渦中の人物”について厳しい追及が繰り広げられた。
現在の公益通報者保護法でも、公益通報を理由にした懲戒処分などは禁止されているが、罰則規定はない。改正案では通報者への不利益な取り扱いへの刑事罰を新たに盛り込み、処分を実質的に決めた人への刑事罰(6カ月以下の拘禁刑か30万円以下の罰金)を設ける。
今回の見直しの背景には、兵庫県の斎藤元彦知事(47)が自身のパワハラなどの疑惑を告発した元県民局長を懲戒処分にした問題が指摘されている。’25年3月には兵庫県の百条委員会が元県民局長への一連の行為は「公益通報者保護法違反の可能性が高い」と結論づけ、県が設置した第三者委員会も「違反」と認定した。
「消費者庁は4月、兵庫県に斎藤知事の法解釈が”消費者庁の公式見解とは異なる”と助言。伊東良孝特命担当大臣も5月に国会で、斎藤知事の法解釈を否定しましたが、斎藤知事は”重く受け止める”という従来の姿勢を崩していません。
さらに5月27日には県が設置した第三者委員会が、元県民局長のパソコンから押収した私的情報を元総務部長が漏えいした件について、”知事が指示した可能性が高い”と認定。複数人の証言が一致する中、斎藤知事ひとりが否定。自らが設置した第三者委員会の結論も受け入れず、改めて情報漏洩以外の対応は『適切だった』との認識を続けています」(地方紙政治部記者)
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こうした斎藤知事の一連の対応を重く受け止めた複数の議員らが、6月2日の消費者問題特別委員会で斎藤知事を名指しで糾弾した。
社民党の大椿ゆうこ副党首は、消費者庁が”技術的助言”までして法解釈の是正を求めたにも関わらず、知事が会見で従来の立場を崩さず、消費者庁との間に齟齬がある状態を問題視し「『今まで自分が言ってたことは過ちでした』と普通の知事なら言う。そのひと言がないのは由々しき問題」と批判。改善がなければ「次の手を打つのか」と同庁に迫った。
さらに、前々回の知事選で知事を推薦した日本維新の会の松沢成文議員は、斉藤知事の指示による告発者の私的情報の漏えいについて「議会への根回しという形で”告発者潰し”を狙ったとの見方が強い」と指摘し、伊東大臣に見解を求めた。
すると伊東大臣は、「一般論」と前置きした上で、「組織の上に立つ方が制度の意義内容について十分に理解をした上で、制度を運用する必要がある」と発言。「特に国の行政機関及び地方公共団体は、自ら法令遵守を図り義務を履行することが期待されており、またその責任は常に国民や住民に対して直接負っている」とし、誠意を持って対応する必要があると答弁した。
あくまで”一般論”として回答した大臣だが、松沢議員は「今の大臣の見解を聞いてると、兵庫県の斎藤知事は”完全に失格”と言ってるに等しいと思います」と、厳しく指摘。続けて、第三者委員会が正しい場合、兵庫県知事の行為は現行法にどう抵触するかを問うと、大臣に代わって答弁に立った審議官は「一般論として公益通報したことを理由とする不利益な取り扱いには”事実上のいやがらせ”など精神上、生活上の取り扱いに関することも含まれる」と、現行法でも斎藤知事の行為は”事実上のいやがらせ”と示唆し、禁止行為に当たると”一般論”で示した。
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伊東大臣は、第三者委員会と百条委員会の結論を「知事が重く受け止めるべきだ」と述べた一方で、選挙で当選しているので「住民の意思を国が一方的に”お前、法律違反じゃないか”といって訴えるのはいかがか」と、国の対応に理解も求めた。
しかし、松沢議員は引かずに、改正案で刑事罰が盛り込まれることに触れた上で、「犯罪なんですよ」と糾弾し、「法律違反なのに全く改善しようとしない兵庫県を国が刑事告発できる」と刑事告発の検討を訴えた。
続いて、共産党の大門実紀史議員が「法令違反しても選挙で勝った人には消費者庁は物は言えない、言いにくい。そう言ったが、聞き間違いか?」と、伊東大臣の松沢議員への回答を追及。
伊東大臣は、第三者委員会と百条委員会の長時間の議論の「結果に(斉藤知事が)もちろん従わないわけでありまして、我々としても地方自治という観点から一つ、彼がそこにすがっているというか、頼っているんだなぁという思いをしたところでありまして、“選挙で勝ったから免罪符だ“という話をしたわけではありませんので、ご理解ください」と、”本音”を交えつつ先程の発言を釈明した。
さらに、伊東大臣はやや憮然として「誤解をもし与えたらあれですけど、我々の感覚からいくと、“あの人“がやっぱり選挙で当選してることは事実ですから。県民が投票してお決めになった話であって、我々が『辞めろ』とかいう話ではない」と、続けていた。
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今回の改正案には「昨今の地方公共団体における公益通報制度に係る事案を念頭に」との附帯決議がわざわざ添えられている。そして、4日の参院本会議で、公益通報者保護法の改正案は可決・成立したが、斎藤知事はいつまでも”重く受け止める”だけで受け流せるだろうか。
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