注目のビジネスワード「ネットポジティブ」とは何か?

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2025年06月04日 17:30  BCN+R

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ネットポジティブは、単に悪影響を減らすだけではなく、「良い影響を増やす」ことを積極的に目指す姿勢を指している(画像はイメージ)
【家電コンサルのお得な話・252】最近、ビジネスの現場でも「ネットポジティブ」という言葉を耳にするようになってきた。これは、企業活動が社会や環境に対して「プラスの影響」を与える存在になることを目指す考え方である。

その他の画像はこちら 似たような言葉に「ネットゼロ」があるが、こちらは温室効果ガスなどの排出を実質的にゼロに抑える目標を意味しており、あくまで「悪影響をなくす」という発想である。一方、ネットポジティブは、単に悪影響を減らすだけではなく、「良い影響を増やす」ことを積極的に目指す姿勢を指している。

●企業経営の新しい理念

 たとえば、世界的な消費財メーカーであるユニリーバは、気候変動対策や人権保護に積極的に取り組むことで、企業価値を高めてきた。こうした事例を背景に、ネットポジティブは経営の新たな潮流として注目されている。確かに、環境破壊や社会格差といった複雑な課題に対し、企業が「与える側」に立つという発想には、人を惹きつける魅力がある。

 しかし一方で、このネットポジティブという思想には、どこか「理念先行的な印象」を感じるのも事実である。実際、ネットポジティブは倫理や価値観に強く根ざしており、科学的な裏付けや実証的な測定が難しい場面も多い。SDGsや脱炭素のように、賛否両論の意見があり、エビデンスに疑問があっても、観念的な「否定のしにくさ」が利用され、政治的・経済的な「思惑」として、一方的な意見が広げられることも多い。

 私は、こうした思想的な概念とは一定の距離を保ちつつ、「利用できるうちは活用する」というのが企業経営として、健全な姿勢ではないかと考えている。つまり、どっぷりと浸かるのではなく、状況の変化に応じて方向転換ができるよう、余白を残しておくのである。社会の評価軸が移り変わる以上、企業はしなやかでなければならない。必要な場面ではネットポジティブの看板を掲げ、投資家や顧客に向けて信頼を示すことも大事だろう。ただし、それはあくまで経営上の選択であり、価値観の全面的、妄信的な受け入れを意味するものではない。

 思想を否定するのではなく、使いこなす。そのためには、熱に浮かされることなく、冷静な視点を持ち続けることが求められている。ネットポジティブという言葉の奥にある、社会の変化とそれに対する自社の立ち位置を、改めて見つめ直す時期が来ているのかもしれない。(堀田経営コンサルタント事務所・堀田泰希)

堀田泰希

1962年生まれ。大手家電量販企業に幹部職として勤務。2007年11月、堀田経営コンサルティング事務所を個人創業。大手家電メーカー、専門メーカー、家電量販企業で実施している社内研修はその実戦的内容から評価が高い。

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