
2025 J1前半戦ベストイレブン 後編
J1のシーズン前半戦終了で注目の選手は誰か。チームを引っ張る活躍をする選手たち、思わず目を引くプレーヤー。識者がここまでのベストイレブンを選んだ。
>>前編「今季最大の発見」「驚異的な得点関与数」の選手たち
【インパクトを見せた選手たち】
浅田真樹(スポーツライター)
FW/鈴木章斗(湘南)、鈴木優磨(鹿島)
MF/伊藤達哉(川崎)、小泉佳穂(柏)、長谷川元希(新潟)、木村太哉(岡山)
MF/安居海渡(浦和)
DF/鈴木義宜(京都)、荒木隼人(広島)、植田直通(鹿島)
GK/早川友基(鹿島)
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今季前半戦をトータルで評価して、というより、現場で観戦した時のインパクトを重視して11人を選んだ。便宜上、本来とは異なるポジションに配置した選手もいるが、ご容赦願いたい。
GKは早川友基。首位とはいえ、ピンチが多い鹿島の戦いにおいて、彼の働きは出色だった。足元のつなぎの技術も含め、迷うことのない前半戦のベストGKである。
DFには、まず同じく鹿島から植田直通を推す。彼が見せる強度の高い守備が、劣勢の戦いのなかでもチームを救い、鹿島を首位に踏みとどまらせている。
同じことは、荒木隼人にも言える。優勝候補と目されながら、得点力不足から勝ち点を落とす試合が少なくない広島にあって、どうにか5位で前半戦を終えられたのは、彼を中心とした守備陣の奮闘が大きい。
鈴木義宣は、京都躍進の立役者だ。一歩間違えばリスクと背中合わせのアグレッシブな戦いのなかでも、強さとクレバーさを兼備した守備能力の高さが印象的だった。
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アンカーには浦和の安居海渡。彼の本領発揮は地味な役回りでの場面が多いが、1対1の強さ、セカンドボールの回収能力には際立つものがある。
2列目には、小泉佳穂と長谷川元希。所属クラブの順位は対照的ながら、個のパフォーマンスという点では目を引くことの多いふたりである。
柏の新たなスタイルのアイコン的存在である小泉はもちろんのこと、下位低迷の新潟にあって、長谷川が見せるアイディアと技術もまた、ファンタジスタと呼ぶにふさわしい。
両アウトサイドには、右に木村太哉、左に伊藤達哉を選んだ。木村は攻守にハードワークが目立ち、昇格1年目ながら大健闘の岡山を象徴する選手。J2時代から好感を持って見ていたが、J1でも十分にやれることを証明している。
川崎の伊藤はキレのいいドリブルが印象的。さすがはブンデスリーガ仕込みとでも言うべきか、一段レベルの高いプレーを見せている。
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そして最後に2トップは、鹿島の鈴木優磨と湘南の鈴木章斗。パーソナリティは対照的に見えるが、自ら点も取れるし、危険なラストパスも出せるという点で、プレースタイルには相通じるものを感じる。
現在のJリーグベストFWと言ってもいい鈴木優はもちろんのこと、鈴木章も将来的には日本代表を狙える素材ではないだろうか。
【推したくなる日本人選手5人】
杉山茂樹(スポーツライター)
FW/鈴木優磨(鹿島)、ラファエル・エリアス(京都)、ラファエル・ハットン(C大阪)
MF/マテウス・サヴィオ(浦和)、乾貴士(清水)、久保藤次郎(柏)
MF/マテウス・ブエノ(清水)
DF/渡辺凌磨(浦和)、マリウス・ホイブラーテン(浦和)、高井幸大(川崎)
GK/スベンド・ブローターセン(岡山)
日本人では変わった選手に目がいく。ひとり目は清水の乾貴士。なにより37歳とは思えない若々しさに驚く。相変わらずシャープ。いい意味で丸くなっていない。
いつの間にか、プレーのスタイルも変えていた。もはやウインガーではない。4−2−3−1の1トップ下だ。3−4−2−1では2シャドーの一角に収まるが、外ではなく内で構える時間のほうが断然長い。
ドリブラーと言えば外。サイドで魅力を発揮するものだが、乾は真ん中にも適性を見出した。中央からのドリブル突破という高度な技を発揮する。大活躍した2018年ロシアW杯当時より、現在のほうが幅の広い選手になっている。
続いては首位鹿島を牽引する鈴木優磨。パッと見、オラオラ系。吠えながらプレーしているかに見えるが本質は沈着冷静な頭脳派。ポジションワークに注意を払いながらフォア・ザ・チームに徹する。誰よりも反則を犯しそうなタイプに見えるが実際は被反則数で現在J12位にランクされる。このギャップがたまらなくいい。乾とともに絵になる選手だ。
3人目は柏の右ウイングバック(WB)、久保藤次郎。この小兵ドリブラーの足下にボールが収まると、瞬間、時間が止まったかのようになる。対峙する相手が迂闊に飛び込めない懐の深いボールの持ち方で、抜け目なく威嚇するようにスルスルと前進。前方に位置する小泉佳穂と絡みながら、チャンスメークを図る。
今季これまで2ゴール3アシスト。目を奪われるのは出場時間だ。フィールドプレーヤーでは3番目にランクされる。なにより労働力が求められるWBであるにもかかわらず、途中でベンチに下がったケースは先発15試合で4回しかない。ドリブル得意なテクニシャン。このスタイルを90分貫けるところに価値がある。
大外で構える右WBは言い換えれば、スタンドの目の前だ。ピッチまでの距離が近い柏スタジアムの場合はなおさらだ。地元ファンは久保のドリブルを目の前で観戦することになる。そこはまさに見せ場で、久保はこれまでのところ、それに応えるようなプレーができている。
4人目は渡邊凌磨だ。チーム最多の6ゴールを挙げながら複数ポジションをこなす多機能性を発揮する。これ以上、特異な選手はそういない。だが世界基準に照らすなら最も今日的な選手となる。もう少し騒がれなければならない選手。上位に浮上した浦和を支えるキープレーヤーであることは言うまでもない。
推したくなる日本人選手はこの4人と実力者の高井幸大(川崎)。どちらかと言えば今季これまでは、外国人選手の活躍のほうが目立っている。