▲合田直弘が海外競馬の「今」を詳しく解説!(c)netkeiba【合田直弘(海外競馬評論家)=コラム『世界の競馬』】
◆二冠を達成するのはどちらの馬か? それとも…
今週末は、日本で、そして欧米で、見逃せないレースが目白押しだが、その中からこのコラムでは、7日(土曜日)に行われる米国3歳三冠最終戦G1ベルモントSの展望をお届けしたい。
本来の開催地であるベルモントパーク競馬場が改修工事で閉鎖中のため、昨年に続いて、同じニューヨーク州にあるサラトガ競馬場で開催されるベルモントS。距離も、通常の12Fから10Fに短縮しての施行となるのも、昨年同様だ。
注目は、三冠初戦のG1ケンタッキーダービー(d10F)を獲ったソヴリンティ(牡3、父イントゥミスチーフ)と、二冠目のG1プリークネスS(d9.5F)を獲ったジャーナリズム(牡3、父カーリン)のリマッチである。
ゴドルフィンによる自家生産馬で、祖母がG1スピンスターS(AW9F)勝ち馬ムシュカという血統背景を持つのがソヴリンティだ。W.モット厩舎から2歳8月にデビュー。サラトガ競馬場のメイドン(d6F)4着、アケダクト競馬場のメイドン(d8F)2着と連敗したが、陣営は同馬の3戦目にチャーチルダウンズ競馬場のG3ストリートセンス(d8F)を選択。ここを制しデビュー3戦目にして重賞で初勝利をあげた。今季初戦となったガルフストリームパーク競馬場のG2ファウンテンオブユースS(d8.5F)も制し重賞連勝。続く同じくガルフストリームパーク競馬場のG1フロリダダービー(d9F)で2着となって参戦したのがG1ケンタッキーダービーだった。
生中継をご覧になった方は目にされたと思うが、ケンタッキーダービー当日のチャーチルダウンズ競馬場は、折からの大雨で泥田のような馬場状態になった。そんな中、末脚が武器のソヴリンティは、前半16番手を追走。キックバックを盛大に浴びながらも3コーナー過ぎから進出し、直線残り1Fで先頭に立つと、そこから1.1/2馬身抜けて優勝を飾った。
レース後、管理するモット師は早々に、二冠目のプリークネスSを回避し、G1ベルモントSを目標にすることを発表。ケンタッキーダービーから5日後の5月8日にはサラトガ競馬場に移動し、調整を積まれてきた。
一方、G2ラカナダS(d8F)を制した他、G1ラブレアS(d7F)3着など6つのG1で入着を果たしたモポティズムの初仔で、ファシグティプトンサラトガ1歳市場にて82万5千ポンド(当時のレートで約1億1773万円)で購買されたのがジャーナリズムだ。M.マッカーシー厩舎から2歳10月にデビュー。11月にデルマー競馬場のメイドン(d8F)を制しデビュー2戦目で初勝利をあげると、続くG2ロスアラミトスフューチュリティ(d8.5F)、今季初戦となったG2サンフェリペS(d8.5F)、続くG1サンタアニタダービー(d9F)をいずれも制し、重賞3連勝を飾っての参戦だったのがケンタッキーダービーだった。オッズ4.42倍の1番人気に推されたジャーナリズムだったが、発馬直後に他馬と接触するアクシデントに遭遇。それでも、怯むことなく10番手を追走した同馬は、3コーナーから馬群外を通って進出し、直線残り270mで先頭へ。ところが、同馬の外を通ってソヴリンティが伸びてくると抗い切れず、三冠初戦は2着に終わった。
そこから、中1週で挑んだG1プリークネスSは、ケンタッキーダービーよりさらにタフなバトルとなった。6番手内ラチ沿いを追走したジャーナリズムは、3〜4コーナー中間から内ラチ沿いを通って進出。ところが4コーナーで、逃げていたクレバーアゲイン(牡3、父アメリカンファラオ)を外から交わそうとして右に動いたところ、ゴールオリエンテッド(牡3、父ノットディスタイム)と接触。さらに、直線に向くと今度は、内クレバーアゲイン、外ゴールオリエンテッドに挟まれる形となり、推進力をそがれた。しかし、挟んだ2頭を押しのけるようにして進路を確保したジャーナリズムが、残り1Fで猛烈な末脚を発揮。一旦は5馬身ほど抜け出していたゴスジャー(牡3、父ナイキスト)をゴール間際でとらえると、そこから1/2馬身抜けて優勝を飾った。
厳しい競馬が2戦続いたことでダメージが心配されたが、馬主サイドがベルモントS出走を望んだことから、ジャーナリズムをサラトガ競馬場に移動。慎重なことで知られるマカシー師が出走へのゴーサインを出し、ソヴリンティとの2度目の対決が見られることになった。
ベルモントSにはこの他、G1ケンタッキーダービー3着馬で、G1プリークネスSをスキップしたバエザ(牡3、父マッキンジー)、5月10日にアケダクト競馬場で行われたG2ピーターパンS(d9F)を制し重賞初制覇を果たしたヒルロード(牡3、父クオリティロード)らが出走を予定している。
(文=合田直弘)