
今回は、高齢の親を守るために子ども世代ができる、お金のトラブル予防と通帳・カードの管理方法について解説します。
よくある高齢者のお金のトラブル
高齢になると、若い頃と比べて記憶力や判断力が低下し、商品やサービスの契約やお金の管理に関するトラブルが起こりやすくなります。中でもよく見られるのは、次のような3つのトラブルがあります。高齢者のお金のトラブル1:特殊詐欺・悪徳商法の被害に遭う
「手続きに不備がある」「未納料金がある」などの名目で金銭を要求されるケースや、訪問販売で高額商品を契約してしまうなど、悪質な手口に気付かず支払いをしてしまうこともあります。高齢者のお金のトラブル2:無計画に使い込んでしまう
年金を一気に使い切ってしまったり、同じものを何度も買ったりといった行動も、認知機能の衰えによって起こりやすくなります。本人に悪気がなくても、結果的に生活が苦しくなってしまうこともあります。
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高齢者のお金のトラブル3:認知症により預金が引き出せなくなる
銀行口座は基本的に本人しか操作できないため、認知症が進行すると口座が凍結されたり、医療費や介護費が必要なのにお金が引き出せなかったりという事態も発生します。親の資産を円滑に守る方法
家族としてできるのは、早めに話し合いの場を持ち、無理のない範囲で対策を進めていくことです。親の資産を守るための対策1:通帳・カードの一元管理
高齢になると、通帳やキャッシュカードの管理が行き届かなくなり、紛失や不正利用のリスクが高まります。まずは、使っていない口座や過去に作ったままの金融機関を整理することが大切です。不要な口座は早めに解約し、現在使っている口座だけに絞ることで、資産管理がシンプルかつ安全になります。親の資産を守るための対策2:家族との情報共有
通帳やキャッシュカードの保管場所や、どの銀行にいくつ口座があるのかといった基本的な情報は、信頼できる家族の中で共有しておくことが大切です。そうしておけば、もし親が急に入院したり、判断力が落ちてしまったりした場合にも、必要なお金をすぐに準備できるようになります。
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親のお金の使い方にまで踏み込みすぎると、「信用されていない」と感じさせてしまうこともあります。あくまでも、本人の意思やプライバシーを尊重する姿勢を忘れないことが、信頼関係を保つポイントです。
親の資産を守るための対策3:代理人取引制度
代理人取引とは、本人に代わって指定した家族などの「代理人」が銀行で取引を行う制度です。本人が高齢や病気などで銀行に行くのが難しい場合でも、代理人が窓口で手続きを行えるようになります。代理人となれるのは、原則、三親等以内の親族1名で、その際、同居か別居かは問いません。代理人取引でできることは、預金の引き出し・預け入れ、預金者本人の住所・電話番号の変更手続き、代理人の住所・電話番号・改印などの諸届などです。代理人ができること、代理人となれる人は、銀行によって異なるため、取引可能な範囲は事前に確認しましょう。
参考:代理人取引:ご高齢のお客さま・ご家族の方へ:常陽銀行
親の資産を守るための対策4:家族信託
よりしっかりと資産管理をしたい場合は、家族信託の制度を検討してもよいでしょう。法律に基づいて家族に資産管理を託す仕組みで、認知症後も財産を凍結せず使えるのが利点です。司法書士や弁護士など専門家に相談して進めましょう。
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「元気なうちに」こそ話し合っておきたい
高齢の親の資産を守るためには、家族の理解と協力が欠かせません。通帳やカードの整理、代理人制度の活用、家族信託の検討など、少しずつでもできることから始めてみることが大切です。その際、何より、親の意志や気持ちを尊重しながら、一緒に「どうしていくか」を話し合うことが、もっとも大事な第一歩です。“もしも”が起きてからではなく、「まだ元気な今だからこそ」話し合いをして対策を立てておきましょう。
舟本 美子プロフィール
会計事務所、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として勤務後、FPとして独立。人と比較しない自分に合ったお金との付き合い方を発信。3匹の保護猫と暮らす。All About おひとりさまのお金・ペットのお金ガイド。(文:舟本 美子(ファイナンシャルプランナー))