井上尚弥vs.中谷潤人を米ボクシング関係者たちはどう見る? モンスターの防衛戦を見て予想を変えた識者も

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2025年06月05日 07:20  webスポルティーバ

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米ボクシング関係者から見た井上尚弥vs.中谷潤人 前編

【「とてつもないビッグマッチになる」】

「いやぁ、ナオヤ・イノウエとラモン・カルデナスとのファイトは最高だった。現時点で、2025年のベストバウトと呼べるだろう。あの日は私が抱える選手も前座で出場したから、アリーナで生観戦したよ」

 2024年に『RING』誌から年間最優秀トレーナーに選出された50歳は、井上尚弥が現地時間5月4日にWBA/WBC/IBF/WBOスーパーバンタム級タイトルを防衛したファイトについて、そう語った。

 元IBFスーパーフェザー級チャンピオンのロベルト・ガルシア。引退後トレーナーに転じ、井上と2度拳を交えたノニト・ドネアやWBAライト級チャンピオンのブランドン・リオス、WBCウエルター級王座に就いたビクター・オルティスらをコーチし、指導者としての能力を示した。名トレーナーとして名が売れるようになってからは、引っきりなしに選手たちからコーチの依頼を受けている。

 無論、ガルシアは第2ラウンド終了17秒前に左フックを浴びて、モンスターがダウンしたシーンについても触れた。

「確かに第2ラウンドにダウンを喫したけれど、ボクシングならあり得ることさ。私が注目したのは、喰らった後だ。時間をかけてレフェリーのカウントを聞いて、立ち上がった点。キャリア初期にダウンすると、ファイターはどうすればいいのか分からなくなってしまう。でも、いかにダメージを回復させるか、相手の攻撃にどのように反応するかが大事なんだ」

 残り時間がわずかだった2ラウンドをしのいだ井上はディフェンスの意識を高め、同じ過ちを繰り返さぬよう戦った。

「イノウエは実にスマートだった。『やっぱり、ボクシングを知っているな』と唸らされたよ。成熟した巧みさを見せた。キャリアを積んでいるからこそだ。経験豊富なファイターで、すでに(ルイス・ネリ戦で)ダウンを味わっているからこそ、対処法を十分理解していたね。

 まさにプロの戦い方であり、非の打ち所がない。その後は『これぞボクシングだ』といった流れで、カルデナスを沈めた。ダウン、イコール衰えじゃない。私はイノウエが衰微を見せたとは、これっぽっちも感じない」

 モンスターは9月にムロジョン・アフマダリエフ戦を控えているが、ボクシングの本場で注目されているのは、やはりWBCバンタム級チャンピオン、中谷潤人との日本人頂上決戦である。

「2人とも素晴らしいファイターだ。ジュントを指導しているルディ・エルナンデスと私は、昵懇(じっこん)の仲。だから、ジュントのことは世界チャンピオンになる前から見てきた。

 ルディは自分のやるべきことを把捉しており、確かな腕を持つトレーナーさ。イノウエ戦は、師弟とって大きな挑戦だし、とてつもないビッグマッチになる。来年の5月だっけ? 世界中がトーキョーに熱い視線を注ぐだろう。今、ジュントもどんどん強くなっているからね」

 ズバリ、予想は? と訊ねると、ガルシアは言った。

「ジュントはリーチが長く、背も高い。リーチのアドバンテージがあるのは間違いない。ただね、今のジュントに必要なのは、勝ち続けること。それだけだ。連勝して自分のボクシングを見せることが、さらなる自信につながる。現時点でも十分に強いし、スタイルもいい。でも、5月まで勝ち続けてメガファイトを迎えてほしい。

 ものすごくいい試合になるだろうね。まぁ、実力は50/50......いや、60/40かもしれない。あるいは、45/55かもしれない。拮抗しているのは事実だ。つまり、今から1年後に両者がどんな状態でリングに上がるかで明暗が分かれるってことだ」

 ガルシアは勝敗予想に関する明言を避け、つけ加えた。

「このところ、ジュントは著しい成長を見せているだろう? 試合の度によくなっているから、ジュントには大きなチャンスがある。私はそう思う」

【「両ファイターには差があると思う」】

 元世界ヘビー級チャンピオンの父を持つ、ハシーム・ラクマン・ジュニアは20年以上ラスベガスに住み、現役ボクサーとしてリングに上がる傍ら、取材者としても競技を見つめている。

 2001年4月22日、ラクマンの父は圧倒的不利とされながらも、南アフリカでWBC/IBFヘビー級チャンプのレノックス・ルイスを5ラウンドでノックアウトし、王座を奪取した。当時、ジュニアは10歳だった。"世紀の番狂わせ"と評されたが、世界の頂点に立った父親と共に、いくつかの祝勝会に出席しては無邪気な笑みを浮かべていた。

 ただ、ラクマンの父は約7カ月後のダイレクト・リマッチで4回に沈められ、あっさりとベルトを手放している。

「父の影響で、幼い頃からメディアの人達と付き合ってきた。今、休学中なんだけど大学で心理学と演劇を専攻している。"ボクシング取材"は、俺のキャリアが生かせるなって思ってさ」

 ラクマン・ジュニアも5月4日は、井上が8ラウンドでカルデナスを下すシーンを会場で目にした。

「ナオヤ・イノウエは本物だよ。パウンド・フォー・パウンドのトップ争いをするに相応しい逸材だ。いつもノックアウトを狙って、エネルギーに満ち溢れたファイトをする。そして、必ず挑戦者を倒す。そこが魅力さ。

 2020年にラスベガスで試合をした時、記念撮影を求める幼いファンへの対応に温かい人柄が滲み出ていた。あんな姿を見たら、誰だって応援したくなるよ」

 ボクシングメディアで働いているだけに、ラクマン・ジュニアも当然のように中谷を知っていた。

「きれいなボクシングをする、いい選手だね。でも、イノウエほどじゃない。2人がぶつかれば、トーキョードームは満員になるし、ジャパニーズファンは盛り上がるだろう。でも、両ファイターには差があると俺は思う。イノウエのプレッシャーに、ナカタニがロープを背負う展開になるんじゃないか。中盤までに、モンスターが本領を発揮して仕留めると予想する。

 イノウエの才能って、類を見ないレベルだ。並の世界チャンピオンじゃない。同じウエイトや下の階級の選手じゃ、太刀打ちできないだろう」

【「コンディションがいいほうが勝つ」「ジュントにチャンスを感じるようになった」】

 井上と中谷、両チャンピオンの世界タイトルマッチで、何度も選手コールを行なっている、名リングアナウンサーのジミー・レノン・ジュニアにも、ジャパニーズのメガ・ファイトについて質問してみた。

「ナオヤもジュントも私にとっては友人だから、とても答えづらいなぁ......」としながら「今の時点では、ナオヤにややアドバンテージがあるように感じる。とはいえ、背が高く、リーチのあるジュントが来年春の激突までに、どのくらい伸びるかも実に興味深い。彼らが戦うのが2026年の5月であるのなら、当日、コンディションがいいほうが勝つということになるかな。実力的に大きな差は感じられない」

 レノンは、"あの声"でそう答えた。

 そして、5月4日のT−モバイル・アリーナで隣り合わせた『ヴェンチュラ・カウンティー・スター』紙のフランシスコ・サラザール記者にも日本人頂上決戦を占ってもらった。サラザールは、井上vs.カルデナス戦前、「うーん。実力伯仲だが、イノウエの経験値を買うかな。55/45でモンスター有利と予想する」と話していたが、井上のダウンシーンを目撃し、50/50と数字を変えた。

 ボクシング記者歴25年の49歳は「カルデナスの左フックをヒットされたシーンを目の当たりにし、ジュントによりチャンスを感じるようになったよ」と語った。

(後編:井上尚弥と中谷潤人の試合予想にノニト・ドネアも「興奮してくる!」伸び盛りの中谷は今後、パッキャオのようになれるか>>)

このニュースに関するつぶやき

  • それよりも、中谷は8日にIBF王者の西田との統一戦が控えてる。西田は侮れないぞ。あのエマニュエル・ロドリゲスにも、いい試合して勝ってる。腹でダウンも奪ってる。
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