ブルペンで投球練習するロッテ・種市篤暉[撮影=岩下雄太] 「ここまでずっと不甲斐ないピッチングをしているので、そろそろちゃんと長いイニングを投げて、納得できるピッチングができるように。交流戦で掴んでいきたいと思います」。
ロッテの種市篤暉は、巻き返しを誓った。
種市は開幕前に行われた『ラグザス 侍ジャパンシリーズ2025 日本vsオランダ』の第2戦に先発し、「自分のやりたいことは全部できたかなと思います」と自己最速タイの155キロを計測するなど、2回・23球を投げ、0被安打、2奪三振、無失点と圧倒的なピッチングで日本の野球ファンを熱くさせた。
オランダ戦の投球を見れば、開幕から先発の軸として1年間投げた時に素晴らしい成績を残すのではないかと期待感を抱かせた。開幕してからの投球は、今季への期待値を考えれば物足りないものだった。
5月28日のオリックス戦で、らしさが戻ってきた。特に最大の武器であるフォークは素晴らしかった。「初回は全然だったんですけど、3回くらいから掴みましたね」と振り返る。その中でも、1−0の5回一死一、二塁で紅林弘太郎を1ボール1ストライクから空振りを奪った3球目の140キロフォーク、続く空振り三振を奪った141キロフォークはストライクゾーンからボールゾーンに良い落ち。本人も「ああ良かったですね!ちょっとシュートしながら、はい」と納得のいくフォークが投げられた。
フォークが良くなったところについて、「力感が良くなったのかなと思います。ずっと力んで投げていたので、その分いい指の抜け感というか、そういう感じですね」と明かした。
ストレートも力強かった。シーズン序盤は150キロを超えるストレートが1試合を通して10球届かなかったこともあったが、前回登板のオリックス戦では最速153キロ、150キロ超えは25球あった。
「それまでずっとブルペンもキャッチボールも良くなくて、投手コーチ、吉井監督とも技術の話をいろいろしました。今井に教えてもらったのが、感覚が良くなったので、試合の日のキャッチボール、ブルペンも、投球内容は良くなかったですけど、去年の感覚に近いものが出てきた。自信を持って次の登板に臨めるんじゃないかなと思います」。
種市はこれまでの取材で、ストレートの状態が落ちた時に見直す部分について、“左肩の開き”、“横の動きの時間”、“体を振りすぎないこと”を挙げてきたが、そこ以外の部分を見直してきたのだろうかーー。
「そうですね、結局投げる時は開かないといけないので、開くタイミングの問題というか、僕はちょっと左肩が我慢しすぎちゃったのかなと思います」。
スライダーも0−0の2回一死一、二塁で若月健矢をファウルにした初球の136キロ、2球目の135キロ真ん中低めの空振りが逆曲がりで良かった。
「逆曲がりしていて、(若月への)2球目は良かったですね。意図的に投げられたらいいですけど、という感じです」。
スライダーも良くなっているように見えるが、本人は「スライダーはもうちょっとかなと思います。フォークの方が逆にいい感覚になってきているという感じです」と教えてくれた。
前回登板のオリックス戦は5回を投げ、球数96球とやや多かったが、5被安打、5奪三振、3与四球、無失点にまとめた。前回登板、無失点に抑えられた理由のひとつに、0−0の2回無死一、二塁で中川圭太、若月を連続三振で2アウトにすれば、1−0の3回一死二、三塁で頓宮裕真を空振り三振、1−0の5回一死一、二塁で紅林、頓宮を連続三振と、得点圏に走者を置いた場面で三振を奪えたことが挙げられる。
種市本人も「ピンチになって三振を狙おうと思って入った試合だったので、そこをしっかり自分で取れたのが状態がちょっとずつ上がっている要因かなと思います」と話し、「犠牲フライも許せない状況もあったので、そこはやっぱり三振狙いながら配球できたのも良かったと思います」と続けた。
開幕から奪三振が少なく、追い込んでから狙って三振が取れなかったのも苦しんだ原因のひとつだったのだろうかーー。
「そうですね、そもそも三振数が僕のバロメーターでもあるので、そこはやっぱり上げていけたら支配的なピッチングができるんじゃないかなと思います」。
状態は上がってきている。シーズンをどう始めるかではなく、どう終わらせるかが重要になってくるーー。「去年、一昨年と終わり方が悪かったので、徐々に上げていけるように。チーム状況もあまり良くないので、自分のピッチングで流れを変えられればなと思います」。多くの野球ファンが注目する巨人戦で、圧倒的支配的な投球で、これが種市篤暉という姿を見せて欲しい。
取材・文=岩下雄太