ファン悲鳴!人気ラーメン「天下一品」大量閉店の“真の理由”2つ。実食してわかったのは

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2025年06月05日 09:00  女子SPA!

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「こってり味付煮卵ラーメン」(1090円)を注文。味は健在なのか?
 人気ラーメン店も閉店ラッシュ!?

 食文化研究家のスギアカツキです。『食は人生を幸せにする』をモットーに、食トレンド、スーパーマーケットやスタバ、ダイエットフード、食育などの情報を“食の専門家”として日々発信しています。

 京都発のこってりラーメンとして50年以上にもわたり愛されてきたラーメンチェーン「天下一品」の大量閉店が話題になっています。

 具体的には6月末に首都圏の10店舗が閉店する予定で、X上ではラーメンに対するネガティブコメントは見当たらず、閉店ラッシュを悲しむ声が相次ぐ状況に。ではなぜこのような事態になっているのでしょうか?

 そこで今回は、看板商品であるこってりラーメンを食べながら、ラーメン業界を俯瞰して考察し、真の理由を探ることにしました。

◆マツコも驚いた看板商品「こってりラーメン」を改めて実食

 まずは久しぶりに看板商品であるこってりラーメンを実食してみました。天一のこってりラーメンといえば、『マツコの知らない世界』でギタリストのSUGIZOさんからチートデイに食べたい“ご褒美ラーメン”として紹介され、マツコが驚いたことでも知られるラーメン。

 また最近では日清食品が天下一品監修でチルド麺商品を発売するなど、確かな称賛を得ている全国区の人気ラーメンであることは間違いありません。

 店内はお昼時ということもあってか、大盛況。客層を見るとやや男性寄りではあるものの女性客もいて、人気店の雰囲気をしっかりまとっています。私が注文したのは、「こってり味付煮卵ラーメン」(1090円)。

 一口食べてすぐに確信がありました。それは、唯一無二の味わいであること。独特のおいしさが心身に染みわたります。鶏ガラと野菜から生み出される濃厚スープは、他では絶対に味わえない秘伝感があり、とんこつ、しょうゆといったカテゴリーでは語れない次元にまで昇華されています。

◆こってりラーメンは、時代を超えてますます人気に

 ここ最近のラーメントレンドを見てみましょう。

 好きなラーメンに関する調査結果などを見ていくと、ラーメン業界が多様化する中で、こってり系の家系やとんこつは根強い人気であることがわかります。また訪日外国人観光客が過去最高を記録する今、外国人が天一のこってりラーメンを大絶賛するYouTube動画も続々アップされています。

 天下一品を進化・変化の視点で見ていくと、定番に頼りきらない企業姿勢を垣間見ることができます。

 商品では、2022年に50周年を記念した「超こってりラーメン」。2023年にはこってりのコクと旨みを限界まで追求した「こってりMAX」。そして2024年には新しい世界観として「「鯛だし香る塩ラーメン」を発売しています。

 このように、競争が厳しいラーメン業界において、あぐらをかいているわけではなさそうです。

◆結論:閉店ラッシュの理由は2つ

 それではなぜ天下一品の閉店ラッシュが起こっているのでしょうか? 結論から言うと、一番の理由は、事実が大げさに取り上げられてしまう点にあります。

 そもそもニュースで取り上げられやすいのは、タピオカ、唐揚げ、高級食パンなどの閉店ラッシュや、焼肉・ステーキのような定番ジャンルの廃業の話題。逆に開店ラッシュの話題はニュースになりません。

 今回の天下一品の閉店を冷静に整理してみましょう。天下一品の公式サイトによると、6月2日時点では全209店舗を展開。このうち10店舗が閉店するとなると、約4.7%にあたる計算に。今年閉店ラッシュで話題になったドミノピザは、国内店舗の約2割にあたる172店舗を閉鎖しています。

 増収増益が続くドミノの事例からもわかるように、閉店という経営判断は収益性向上を目的としているため、“閉店=人気に陰り”ということではないのです。

 また大手ラーメンチェーンで店舗数を比較すると、一風堂は149店舗(国内)、一蘭は81店舗(国内)。天下一品は2倍以上の店舗数であり、依然として業界でも有数の店舗数を誇っています。最適化の結果として一部の店舗は整理された可能性がありますが、ブランドとしての存在感は健在です。

 ちなみに、一風堂ののれん分け制度、一蘭の全店直営と比較して、天下一品はフランチャイズに言及した考察は十分ではありません。フランチャイズが主体のモスバーガーやドトールの好調ぶりをみれば、原因は根源的なところにあると考えられます。

◆940円のラーメンを明日も食べられる人は、どれほどいるか

 そんなことを考えていた時に、ラーメンどんぶりに書かれているメッセージ「明日もお待ちしています。」を見て、店舗減のもうひとつの理由が思い浮かびました。それは、手取りが上がらず、物価高が続く社会環境において、940円のラーメンを明日も食べられる人はどれほどいるか?ということ。

 食べたくても、お金が続かない可能性があるのです。天一のこってりラーメンに使われる鶏ガラの量は、1日あたり16トン。日清のチルド麺商品の希望小売価格650円であることからも、安価に作ることができるスープではないことが分かります。つまり天一のラーメンは、食べたくても頻繁に食べることができない至高のスープを守り続けているのです。

 しかしながらこの価格は、1杯2000〜3000円が当たり前の海外観光客からすれば安く感じられるわけですから、日本人の賃金上昇は、備蓄米で注目されているコメ問題と同じくらい切実です。

 今後、本当においしいラーメン店がやむなく閉店に追い込まれないことを、切に願いたいところです。

<文・撮影/食文化研究家 スギアカツキ>

【スギアカツキ】
食文化研究家、長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを学ぶ。現在、世界中の食文化を研究しながら、各メディアで活躍している。女子SPA!連載から生まれた海外向け電子書籍『Healthy Japanese Home Cooking』(英語版)好評発売中。著書『やせるパスタ31皿』(日本実業出版社)が発売中。Instagram:@sugiakatsuki/Twitter:@sugiakatsuki12

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