時計にイヤフォンを収納できる「HUAWEI WATCH Buds」は実用的? 2年間使用して実感したこと

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2025年06月05日 12:01  ITmedia Mobile

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「HUAWEI WATCH Buds」

 スマートウォッチの中にワイヤレスイヤフォンが収納されている――そんな前代未聞のガジェットがHuaweiから登場したのは2022年末だ。文字盤のディスプレイが開き、中からイヤフォンが現れるギミックは、まるでアニメの世界から飛び出してきたかのようなビジュアルの製品だ。


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 日本でも翌2023年の2月にクラウドファンディングサイト「GREEN FUNDING」にて先行販売が実施され、同年5月には一般販売が始まった。


 HUAWEI WATCH Budsを約2年間使用した結果、なぜ実用的な“変態ガジェット”だと感じたのかをレビューしたい。


●文字盤が開くトキメキを感じるガジェット イヤフォンがしっかりと使えたことに驚き


 HUAWEI WATCH Budsの文字盤にあたるディスプレイ部分は、本体下部のボタンを押すことでロックが解除され、軽く浮き上がる。そのままパカっと開くと、そこには左右どちらの耳にも装着できる小型のイヤフォンが格納されている。


 この構造には心をつかまれた。ディスプレイを開閉させる動作が楽しく、しばらくの間は意味もなく何度もフタを開け閉めしていたほどだ。その異端ともいえるビジュアルは、まるでスパイグッズ、いや、人気漫画「名探偵コナン」に登場する時計型麻酔銃のような仕上がりだ。


 実用的だと冒頭で述べたのは、日常的にありがちなカバンやポケットの中で「イヤフォンどこいった問題」と無縁になったためだ。仮にイヤフォンをカバンやポケットに入れ忘れても、手首にあるHUAWEI WATCH Budsがそのまま代役を果たしてくれる。イヤフォンがいつでも「身についている」という安心感は、一度体験すると手放せなくなるほどだ。


 着信時はウォッチのディスプレイで「誰からの着信か」を確認でき、必要であればイヤフォンでハンズフリー通話もできる。近年、イヤフォン収納ケースにディスプレイを備え、通知などを表示できる製品も登場しているが、HUAWEI WATCH Budsはそのような製品の先駆けといる。


 イヤフォンは小型ゆえに、音質や機能面についてあまり期待していなかったが、使用するといい意味で裏切られた。イヤフォン部分には4つのマグネットを採用した平面振動板ドライバーを搭載。高音質なAACコーデックに対応し、ノイズキャンセリングや外音取り込みの機能も備える。


 イヤフォンの操作は本体ではなく、センサーを用いてこめかみ付近をタップして行う。コンパクトでも操作性を損なっていない点もいいポイントだ。イヤフォンのサイズは21.8×10.3×10.3mmと、500円玉に収まるくらい小さい。


 イヤフォンの音質については、低音の迫力こそ弱めだが、中〜高音域の抜けはよくクリアなサウンドを楽しめ、当時の1万円クラスの機種とそん色ないレベルに迫る。音楽だけでなく、通話や会議用途でも実力を発揮する。


 ノイズキャンセリングの効果や外音取り込み機能も優秀だ。上位モデルには引けを取るものの、不満なく利用できた。マイク感度も高く、音声通話をした際にこちらが発した声が聞き取りにくいといったこともなかった。


 また、収納時の方向や装着時に左右を気にせず装着、収納ができる点は地味ながらありがたい。イヤフォンはウォッチのふた側にマグネットで固定されるため、収納時に装着位置がずれたり、落下したりしなかった。HUAWEI WATCH Budsは、実用面で困らないように“気が利く工夫”が随所にあり、変態ガジェットというカテゴリーながら、唯一無二の存在感を放っている。


●バッテリーの持ちはやや不満 小型ボディーゆえの制約か


 気になるバッテリーの持ちは2時間半程度。片耳ずつ使う会議などでは問題ないが、通勤通学はもとより、新幹線や飛行機の移動で音楽再生で使用する(両耳使う)場面では持たない感じた。先述の通り、小型なボディーゆえにバッテリー容量には制約があったためだろう。


 イヤフォンを使わなければおおむね2週間と、より長時間使用できる。毎日イヤフォンを音楽再生や通話で利用した場合は3〜4日程度持続した。HUAWEI WATCH Budsの他に「スマートウォッチを母艦にするイヤフォン」が市場にほとんど存在しないため、電池持ちが良いのか悪いのかの判断は難しいが、使い方によっては気にならないだろう。


 繰り返しにはなるが、スマートウォッチとイヤフォンを統合したような製品なので、バッテリーの持ち以上に、持ち運ぶガジェットが1つ減るというメリットは大きい。また、スマートウォッチを充電すれば自動的にイヤフォンも充電されるため、充電し忘れる心配もない。


 スマートウォッチの充電は、専用ケーブルで行う。Qi規格準拠のワイヤレス充電にも対応し、スマートフォンの「リバース充電(ワイヤレス給電)」機能でも充電できる。


 HUAWEI WATCH Budsはスマートウォッチなので、専用ケーブルで充電する。さらに、Qi規格のワイヤレス充電にも対応しているため、ワイヤレス充電器に置いたり、スマートフォンに搭載されている「リバース充電」で充電することも可能だ。


●スマートウォッチとしての機能も充実 充電するデバイスが1つ減るのはありがたい


 HUAWEI WATCH Budsは、時計としての基本性能も充実している。着信や通知の受け取りはもちろん、音楽再生や文字盤のカスタマイズもできる。心拍数や睡眠、ワークアウト記録といったトラッキング機能はHUAWEI WATCH GTシリーズに近い水準を確保しており、スマートウォッチとしても一切抜かりない。


 繰り返しにはなるが、このスマートウォッチはイヤフォンを内蔵しているため、ウォッチに音楽を転送すれば単独で音楽を再生できる。もしセルラー通信に対応し、ストリーミング配信サービスが利用できれば、最強の音楽プレーヤー代わりになるスマートウォッチになっただろう。


 イヤフォンの設定や管理はHUAWEI Healthアプリで行う。同社のイヤフォンは基本的にHUAWEI AI Lifeというアプリで管理するが、HUAWEI WATCH Budsではヘルスケア系のアプリで完結する仕様になっている。


●2年間使用して実感したこと 「ネタ」で終わらない高い完成度


 HUAWEI WATCH Budsを2年間使って確信したことは、この機種が「ネタ」だけで終わらない、高い完成度を持っていることだ。多機能を詰め込んだ製品は数多くあるが、ここまで「ワクワク」と「実用性」を両立させたプロダクトは珍しいと感じた。


 余談だが、このスマートウォッチからイヤフォンを取り出す様子を他人に見せると、ほぼ毎回「それは何?」と質問される。ガジェットが会話のきっかけになるため、飲み会の席での話題にも最適だ。


 使っていて不満に感じたことは耐久性やサイズに関すること。耐久性については、イヤフォンがIP54等級の防塵(じん)・防滴の性能も有しているものの、スマートウォッチは防水性能を有していない。そのため、雨の日や水回りで使うことはできず、スマートウォッチのアクティビティートラッカーとしての機能を十分に生かせないと感じる。


 スマートウォッチにイヤフォンを収納する構造上、本体の大きさや厚みもそれなりにある。そのため、装着する人やシーンを選ぶ他、袖の狭い服を着ると引っ掛かりやすいという難点もある。


 とはいえ、「スマートウォッチとイヤフォンの融合」というユニークなアイデアを、実用レベルかつスタイリッシュに仕上げたのはHuaweiだけだろう。市場を見渡しても、同じコンセプトを本気で製品化した例は他にない。HUAWEI WATCH Budsはニッチな存在かもしれないが、だからこそ唯一無二だと感じた。好きな人には深く刺さり、替えの効かないデバイスとなるだろう。


 後継機が出るなら、防水機能の強化とウォッチ本体の薄型化を望む。決済機能(中国向けには搭載済みだ)も利用したい。これらがかなえば、最強のスマートウォッチになるだろう。


 最後に、現在のHuaweiがグローバル市場で勝負するには、HUAWEI WATCH Budsのような飛び道具的な存在が不可欠だと感じる。米国の制裁によってプロセッサの使用に制限がある中、他社のように性能面で勝負するのが非常に難しくなっているからだ。


 こうした状況を受け、性能ではなく、唯一無二のハードウェアで勝負する方針へと変わったように見受けられる。HUAWEI WATCH Budsはもちろん、当時最軽量を達成した折りたたみスマートフォンの「HUAWEI Mate X3」、3つ折りの「HUAWEI Mate XT Ultimate Design」、そして特徴的な画面比率の「HUAWEI Pura X」といった製品からも、その方針は見て取れる。


 HUAWEI WATCH Budsはその先駆け的な製品として、多くのガジェット好きを熱狂させた唯一無二のプロダクトだったと評価したい。


●著者プロフィール


佐藤颯


 生まれはギリギリ平成ひと桁のスマホ世代。3度のメシよりスマホが好き。


 スマートフォンやイヤフォンを中心としたコラムや記事を執筆。 個人サイト「はやぽんログ!」では、スマホやイヤフォンのレビュー、取材の現地レポート、各種コラムなどを発信中。


・X:https://twitter.com/Hayaponlog


・Webサイト:https://www.hayaponlog.site/



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