代表復帰の佐野海舟には現有戦力を超える期待が…「初選出選手」が7人でも「“消化試合”ではない」と明言する森保監督の狙い

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2025年06月05日 16:01  日刊SPA!

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佐野海舟 ©産経新聞
 サッカー日本代表は6月5日にアウェイでオーストラリア代表と、6月10日にホームでインドネシア代表と対戦する。これでFIFAワールドカップ26 アジア最終予選の全日程が終了。3月20日に行われたバーレーン代表戦で勝利し、ワールドカップ本大会の出場権を獲得した日本代表にとっては、残りの2試合は“消化試合”になる。とはいっても、約1年後に開催される本大会で勝ち抜くため強化を図るという意味では、活動期間の少ない代表チームにとって残された試合はすべて貴重な機会。
 さて、今回の2試合に向けて森保一監督は初選出となる選手を7人も招集。新戦力発掘を目的とした試合と位置づけたようだ。

◆「代表に消化試合はない」と明言

 森保監督はメンバー発表の会見で、大幅にメンバーを入れ替えた理由を明かしている。

「これから先のことも見据えチーム力を上げるためにも、勝利を目指すということにこだわりながら、選手一人ひとりの成長を促し、選手の成長がチームの大きな成長につながるように、チームとしての選手層の幅を厚く強固にして、これからのさらなる成長につなげていけるようにしたいと思っています」

 加えて、「代表に消化試合はないですし、負けていい試合はないと思います」とコメント。新たな戦力の成長を狙いつつ、全力で勝ちにいくと念を押している。

◆“戦術の肝”だが、手薄なポジションが

 しかし、「勝ちにいく」プライオリティはさほど高くないのではないか。メンバーを見れば明らかで、本音では新戦力の発掘に重きを置いたのだろう。実際に、手薄といえるウイングバック、サイドバックを担える選手を多く招集している。

 森保監督が率いる日本代表にとって、このポジションは“戦術の肝”になるといっても過言ではない。このポジションに誰を起用するかで戦術が変わる。アジア最終予選では、堂安律、伊東純也が右のウイングバックとして起用されることが多く、左は三笘薫、中村敬斗の出番が多かった。強豪と対戦することになる本大会を見据えると、攻撃的な彼らを起用せずに対人能力に優れた守備的な選手を起用する機会もあるだろう。「カタール大会のような戦い方」といえば想像がつきやすいのではないか。

 また、このポジションに菅原由勢や中山雄太のようなサイドバックを担える選手を起用することで、試合の途中で3バックから4バックにシステム変更することも容易となる。このように戦術の幅を決定づけるうえでも、極めて重要なポジションといえよう。

◆佐野海舟には現有戦力を超える期待が

 攻撃的な戦術を担う人材は申し分ない。一方で、守備的な戦術をとりたい際には一抹の不安が残る。強豪相手の場合、ワールドクラスのアタッカーに対峙しなければならない。その場合、1対1に強く、空中戦でも負けない選手を起用して対策したい。

 だが、そのすべてを満たす候補は現状見当たらない。本大会までに発掘できなかった場合は、冨安健洋や伊藤洋輝といったセンターバックタイプの選手を起用して守備的な戦術を取ることも視野に入れるべきだろう。

 また、佐野兄弟(海舟と航大)のような中盤の選手が多く選出されたところにも注目したい。近年、このポジションは遠藤航、守田英正、田中碧、そして時には鎌田大地が担ってきた。顔ぶれを見る限り、新戦力の必要性は感じられない。

 ただ、このポジションは消耗が激しい。本大会を勝ち抜き、試合数を重ねたときに代替できる戦力を加えておきたいと考えていても不思議ではない。もちろん、1年後には現有戦力を超えるタレントが生まれている可能性もある。その筆頭が佐野海舟で、クラブチームでの勢いそのままに代表での躍動にも期待したい。

◆初招集の若い選手にも十分なチャンスが

 これまでの戦いや森保監督の目指すサッカーから必要な戦力をひもとくと、最優先になるのは先に挙げたウイングバック、サイドバックの人材になる。先述のとおり、本大会で勝つためにはこれまでの戦い方とは異なり、守備的な戦術を取らなければならない試合もあるだろう。また、相手によっては3バックより4バックのほうが相性がいい場合もある。森保監督は常々、「戦術は選手によって変わる」と主張してきているだけに、タイプの異なるさまざまな選手を駒として保持しておきたいと考えているはずだ。

 余談になるが、大半の監督は同等レベルであれば若い選手を選ぶわけだが、森保監督も例に漏れない。つまり、今回選出された初招集の選手らにも十分にチャンスはある。サイドの攻撃的な役割を担うウインガー、ウイングバックや、FWの後方に位置するトップ下やインサイドハーフの人材は今の日本代表には飽和しているものの、現戦力に追いつき追い越す存在が現れると、本大会に向けてより楽しみが増える。今回の試合では、スターの原石が彗星の如く現れることを期待したい。
 
<TEXT/川原宏樹>

【川原宏樹】
スポーツライター。日本最大級だったサッカーの有料メディアを有するIT企業で、コンテンツ制作を行いスポーツ業界と関わり始める。そのなかで有名海外クラブとのビジネス立ち上げなどに関わる。その後サッカー専門誌「ストライカーDX」編集部を経て、独立。現在はサッカーを中心にスポーツコンテンツ制作に携わる

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