炎天下を保護されたミックス犬　目はうつろで毛玉だらけ　笑顔を忘れたあなたに舞い込んだ赤い糸　明るく健やかな犬生を過ごしてね

2024年夏の炎天下、静岡県内の公営施設の一角をフラフラしながら歩く小型ミックス犬がいました。目は虚ろで体は毛玉だらけで足先はモップ状態。異臭を放っています。どうしてこの地にひとりぼっちで過ごしているかは謎ですが、この小型犬の存在を知った地元自治体の職員が捕獲しました。

その後、「一般譲渡は難しそうだが、殺処分は避けたい」と、地元の保護団体、アニマルフォスターペアレンツに引き取りの相談を持ちかけました。

意図的に誰かがこの場に棄てた

団体ではこの小さな命を引き取ることにしました。多くのワンコと触れ合ってきた団体メンバーから見ても、犬種がよくわからず、その月齢も「シニアである」ということ以外は推測ができないような状況でした。

ただし、公営施設に突然、こんなに疲弊し切った小型犬がやってくるとは考えにくく、誰かが意図的にこの場に棄てたとしか考えられないとも思いました。

それでも照りつけるような炎天下で、がんばって生き抜いてくれた命です。まずはそのボロボロの体を綺麗にトリミングして、適切な医療ケアも実施することにしました。ここで付けてあげた名前は「千花」。いつの日か幸せを掴んで穏やかな犬生を送って欲しいという願いを、この名前に込めました。

団体と懇意のトリマーさんが千花のボロボロの毛を綺麗に刈り上げてくれました。すっかり綺麗になったものの、その表情は暗く笑顔はありません。

また、トリミングを受けている間、おとなしく静かに過ごしていた千花ですが、首や顔周りを触ると「ヤメて！」と噛む仕草ををしました。後の検診では腫瘍や怪我などは見受けられなかったため、もしかしたら過去に首や顔周りを虐待されていた可能性も考えられます。

また、団体施設で千花をフリーにさせると、小さいエリアだけをヨチヨチと歩きます。よほど狭いところにいたのだろうと思われますが、千花はどんな過去を背負っているかは、こういった動作などから想像することしかできません。

とにかくこれまで辛くて怖い思いをした分、次なる犬生では幸せいっぱいの日々を過ごして欲しいと思いました。

千花は少しずつ「自分がしたいこと」を慎ましく表現するようになっていきましたが、そんな矢先に「迎え入れたい」という里親希望者さんが現れ、見事「ずっとのお家」を掴むことができました。

千花が心に負った傷はそう簡単に癒えるものではなさそうですが、優しい里親さんの元でたっぷりの愛情を受けることで、いつの日かワンコ本来の幸せを感じてくれることでしょう。自らの力で必死に生き抜いてくれた千花。これからの犬生は明るく穏やかになることを願ってやみません。

（まいどなニュース特約・松田義人）