米実業家イーロン・マスク氏(左)とトランプ大統領=5月30日、ワシントン(EPA時事) 【ワシントン時事】トランプ米大統領は5日、ホワイトハウスで記者団に対し、実業家イーロン・マスク氏が大型減税関連法案への批判を強めていることについて、電気自動車(EV)促進策の撤回を盛り込んでいるためだとの見解を示した。マスク氏には「非常に失望した」と不快感をあらわにした。
これに対し、マスク氏はSNSで「私がいなければ、トランプ氏は(昨年の)選挙に負けていた」と踏み込んだ。マスク氏はトランプ氏の大統領選を巨額献金で支え、「政府効率化省(DOGE)」のトップとして政権の重点施策である行政の無駄削減を進めた。しかし、ここへ来て両氏の決裂は決定的となった。
トランプ氏肝煎りの大型減税法案には、バイデン前政権が取り組んだEVなどクリーンエネルギー促進策の撤回が含まれる。EV大手テスラの最高経営責任者(CEO)を務めるマスク氏は、先週の政権離脱直後から、法案が債務増大を招くとして「唾棄すべきものだ」「廃案にしろ」などと、痛烈な批判を展開。法案は上院で審議中だが、共和党の財政規律派が懸念を強めており、議会通過に不透明感が漂う。
トランプ氏は「マスク氏はEV促進策撤回のため怒っている。EVは困難な時期にあり、巨額補助を望んでいる」と指摘。マスク氏は撤回を早くから知っていたのに、「突然問題視した」と非難した。
一方、マスク氏はSNSで「法案ではEVや太陽光発電への促進策は削られるのに、石油・ガスへの補助はそのままだ」と反発した。トランプ氏も「予算削減で最も簡単なのはイーロン(・マスク氏の企業)への政府補助や契約を切ることだ」とやり返し、両氏の対立は泥仕合の様相を帯びている。