
小さなガラスの向こうで、必死に誰かを呼ぶように前足を伸ばしていた長毛の子猫、瑠偉(るい)くん。ふわふわの毛並みの下には、骨と皮ばかりの細い体が隠れていました。見た目ではわからない“命の危うさ”。飼い主であるXユーザー・うにねこさん(@Unineco21412)は、その姿を見て胸が締めつけられるようだったといいます。
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必死に助けを求めていた子猫の異変
ケージ越しに人の姿を追い、ほかの子たちとは明らかに違う様子で前足を動かしていた子猫。長毛に覆われたその身体は一見健康そうに見えましたが、抱き上げた瞬間、驚くほど軽く、栄養状態がよくないことは明白でした。
「量販店に猫用品、フードを買いに行った際に、たまたまいたソマリなのですが、他の子に比べあまりにも必死にガラスを引っ掻いていたので気になり、見せてもらいました。長毛種のためふわふわで見た目ではわからなかったのですが、触ると骨と皮だけのガリガリで、栄養失調なのは明らかでした」
いったん帰宅し、夫と相談した飼い主さん。後日再び訪ねると、あの子はまだ同じ場所で、変わらず必死な様子だったといいます。
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「必死にガラスを引っ掻いている姿を目にして、うちに迎えることにしました。お迎えの際の説明で『ドライをお湯でふやかして、1回8グラムを1日3回あげれば十分です』と言われて…。こんなにガリガリなのにと思うと怒りと悲しみがこみあげてきて、説明を受けている間、ずっと堪えていました。生後2カ月半、体重も700グラムあるかないかという状態だったんです」
こうして、小さな子猫は、瑠偉くんと名付けられ、飼い主さん夫婦の家族に。そして、命を立て直すための生活が始まりました。動物病院を受診したところ、健康に大きな問題を抱えていることわかったのです。
「カンピロバクターによる血便と重度の栄養失調であることが判明。治療を開始し、完治までに3カ月以上かかりました」
初日から落ち着いていた瑠偉くん 保護猫の蓮くんとの“静かな距離感”
新しい環境に来た初日、瑠偉くんは驚くほど穏やかだったといいます。
「おそらく、それまでの過酷な日々による疲れが出たのではないかと思います。先住の保護猫『蓮(れん)』は、興味津々な様子でしたが、少し離れてそっと見守っていました。ケージの中で過ごし、夜鳴きもせず、安心し切ったように眠っていたのを覚えています。蓮と相性が合うか心配もありましたが、瑠偉はとてもおとなしい子だったためトラブルになることはなかったので安心しました」
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蓮くんは、保護猫として迎えられた存在。そんな蓮くんと瑠偉くんが、お互いを邪魔せず、見守り合うような関係を築き始めていたことが、飼い主さんの安心にもつながっていきました。
兄猫、妹猫と一緒に過ごす幸せな日々、多くの人のハートをわしづかみにする瑠偉くん
小さくて病弱だった瑠偉くんが、たくましく成長し、家族の中でもひときわ存在感を放つようになりました。
「瑠偉は、現在5歳を迎えました。我が家では、蓮のほかに、同じく保護猫の『ママ』、『みぃ』と一緒に暮らしています。そのなかでも一番、体が大きくなり、獣医さんから『健康に何ら問題ない』とお墨付きをもらうほど元気です」
ふわふわの見た目と“あざとい”仕草で人の心をつかむ天性の魅力も持ち合わせています。どうすればかわいがられるかを、どこか理解しているような、そんな表情で近づいてくるのだとか。
「また、マイペースであざといタイプだと思います。どうしたらかわいがられるのかわかっているようです。子猫のころから病院通いで、獣医さん、看護師さんたちからいつも『かわいい、かわいい』と褒めてもらったからかもしれません」
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瑠偉くんの“人好き”な一面は今も変わりません。
「成猫になった今も、家にお客さんが来ると、初対面の人であっても自らあいさつに行き、かわいらしい声で鳴いて、お客さんをメロメロにしています」
(まいどなニュース特約・梨木 香奈)