化学機械メーカー「大川原化工機」(横浜市)の社長らの起訴が取り消された冤罪(えんざい)事件で、東京高裁から逮捕や取り調べが違法と認定された警視庁が、捜査の問題点を検証する方針を固めたことが関係者への取材で判明した。起訴が違法と認定された検察当局も検証を進めるとみられる。
判決の上告期限は11日で、被告の東京都と国が上告を断念する方向で最終調整していることも判明した。違法捜査を理由に都と国に計約1億6600万円の賠償を命じた2審判決が確定する見通し。警視庁は大川原側に謝罪する方針で、東京地検も対応を検討している。
大川原化工機の社長らは、軍事転用可能な噴霧乾燥器を輸出したとする外為法違反で逮捕・起訴された。噴霧乾燥器が経済産業省の輸出規制省令に該当するかがポイントとなったが、警視庁公安部は国際基準と異なる独自の省令解釈で捜査を進めた。訴訟では、省令の解釈は妥当だったか、規制品に該当するかを判断する温度実験が適切だったかが主に争われた。
1審・東京地裁判決(2023年12月)は公安部の独自解釈を妥当としたが、高裁判決は「法令の解釈が不確かな場合は縮小解釈すべきなのに公安部は拡大解釈をした」と指摘。経産省が当初、公安部の解釈に否定的だったことも踏まえ、「独自解釈は合理性を欠き、犯罪の容疑の成立に係る判断に基本的な問題があった」と1審よりも踏み込んだ認定をした。
温度実験については、1、2審ともに大川原側から実験の不備が指摘されていたのに、公安部と地検は再実験をしなかったと認め、「通常要求される捜査が遂行されていない」として逮捕・起訴を違法とした。元取締役に対する公安部警部補の取り調べについても、省令の解釈をあえて誤信させるような偽計的な手法が用いられたとして1、2審とも違法と認定した。
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都と国は2審の認定内容について、上告に必要な憲法違反や判例違反を見いだすのは困難と判断したとみられる。
大川原側は公安部による省令の独自解釈が「合理性を欠く」と認定されたことについて「事件そのものが捏造(ねつぞう)と認定された」と評価し、都と国に上告を断念するよう求めている。【木下翔太郎、北村秀徳、山崎征克】
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