
白黒のタキシード柄が印象的な猫の「ママちゃん」(女の子)と、Xユーザー・うにねこさん(@Unineco21412)が出会ったのは、今から2年前のこと。実家近くの敷地にたびたび姿を見せていたママちゃんは、そのとき2匹の子猫を連れていました。
「当時、ママはガリガリに痩せていて、子猫たちもとても小さかったです。私の母が見かねて、ママに『うちの庭に子猫を連れておいで』と言い聞かせていたところ、本当に子猫を連れて庭にやって来たのです」
子猫たちはすぐに実家で迎え入れることになりました。ママちゃんも同様に迎える予定でしたが、強い警戒心からなかなか保護できなかったといいます。
「ママを保護するまでに、1年近くかかりました。捕獲器を警戒して、なかなか近づいてくれなかったんです」
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ママちゃんには一度、避妊手術を受けてもらいましたが、すぐに保護しようとしてもうまくいかず、その後も時間がかかったそうです。そんな中、ご夫婦が実家の隣に引っ越したことで、少しずつ距離を縮めることができるようになりました。
「ある日、庭に用意した寝床でママが眠っているところを見つけて、そっと入り口を板で塞ぎ、そのまま家の中へ。準備していたケージに入れて、ようやく保護することができました」
当時、ママちゃんは推定4歳。ようやく一緒に暮らす日々が始まりました。
ごはんも水も受けつけず、家の中でも落ち着けなかった日々
保護直後のママちゃんは、極度の緊張から心身のバランスを崩し、何も口にせず、威嚇を繰り返していたといいます。慣れない環境に強いストレスを感じていた様子でした。
「1カ月以上、夜鳴きが続きました。人の顔を見るとシャーシャーと威嚇し、猫パンチを炸裂させていました。3日ほどはごはんも食べず、水も飲まず…トイレもしない状態が続きました」
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飼い主さんの家には、先住猫の蓮(れん)ちゃんと瑠偉(るい)ちゃんが暮らしていました。ふたりとも、出会った当初から人に慣れていたそうです。そのため、ママちゃんへの接し方には特に悩んだといいます。
「ママが不安と恐怖でいっぱいになっているのを見て、『私たちにどこまでできるだろうか。今のやり方で間違っていないだろうか。この先、心を開いてくれるのか』と、複雑な思いを抱きながら必死にお世話を続けました」
飼い主さんは、ママちゃんのペースを尊重し、気を配りながら、そっと見守ることにしたそうです。すると、少しずつママちゃんに変化が現れました。
「幸い、しばらくしてごはんを食べてくれるようになり、夜鳴きもおさまってきてホッとしました。ケージの外に自分から出てくるようになるまでに半年。基本的にはケージ中心の暮らしで、昼間は少しだけ部屋を散策。先住猫たちと距離が縮まるまでには1年以上かかりました。私たち人間が触れるようになるまでは、さらに2年。最近はようやく、自分から『撫でて』とすり寄ってきてくれるようになって、とてもうれしいです」
不器用だけれど愛しさもひとしお…ママちゃんと築いた絆
ママちゃんは、現在推定6歳を迎えました。少しずつ関係が深まり、自ら近づいてくれることも増えたといいます。
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「臆病で甘え下手。人慣れした今でも私たちが側を歩くと小走りで逃げたり、すり寄って甘えてきたから撫でるとびっくりしたり、とてもビビりな子だと思います」
他の猫たちが飼い主さんに甘えているときの様子からも、ママちゃんの“遠慮がちな気持ち”が伝わってくるそうです。
「蓮や瑠偉が私たち夫婦に甘えて、のどをゴロゴロ鳴らしていると、少し離れてママものどをゴロゴロ鳴らしていることも。かまってほしいけれど、なかなか上手に表現できない。そんな甘え下手な一面がかいま見えることが多々あります」
だからこそ、ママちゃんの小さな変化がうれしい―そう語る飼い主さん。
「そんなママを見るたび、『手がかかる子ほどかわいい』というのは、こういうことなのかなと思いますね」
(まいどなニュース特約・梨木 香奈)