昨今、若手社員を中心に話題になっている「静かな退職」。やりがいやキャリアアップを求めず、決められた仕事を淡々とこなすことを指し、ワークライフバランスを重視した働き方が広がる中で注目されています。
マイナビの調査(※)によると、「静かな退職」を実践している年代は、20代が最も多く46.7%、次いで50代が45.6%、40代が44.3%と、若手に限らず幅広い年代に広がっています。
こうした価値観の広がりが見られる中で、ここ数年、社員の士気が高まっている企業には、どんな特徴があるのでしょうか。
本記事では、転職・就職のための情報プラットフォーム「OpenWork」に寄せられた若手社員による回答を分析。コロナ禍でリモートワークが普及し、働き方が大きく変化し始めたころと比較して、「社員の士気」が上昇した企業の特徴を探ります。若手の“やる気”を高める環境づくりには、どのようなポイントがあるのでしょうか。
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●若手社員による「社員の士気」スコアが上昇した企業ランキング
20代による回答を対象に、OpenWorkの8つの評価項目のうち「社員の士気」スコアについて、2020年のスコアと2024年のスコアを比較。この5年間で上昇幅が大きいTOP20企業のランキングは、以下の通りとなりました。
1位は、近年、柔軟な働き方に向けた取り組みが積極的に行われている「電通」で、2位以下に0.2ポイント以上の差をつける結果となりました。ランクイン企業のクチコミを見ると、次の3つの共通点が浮かび上がりました。
(1)風通しが良く、チームワークを大切にした働き方
ランクイン企業に最も顕著に見られた特徴が、「風通しが良い」「チームワークを大切にする」という点です。今回ランキング1位となった電通の「風通しの良さ」スコアは4.21と、同業他社の平均スコアと比較して0.75ポイント高い(※)という結果が出ています。ランクイン企業のクチコミにも、お互いに関わろうとする意識が強く、その中で社員同士が士気を高め合っている様子がうかがえました。
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「チーム作業や後輩思い、世話好きの社員が多く、若い世代は多くの成長機会に恵まれている。自分次第でもあるが、いくらでも成長できる環境である」(ビジネス・デザイナー、電通)
「人との関わり方には、異常なほどの熱量がある。自分が成長したい、部下・後輩を成長させたいということへの労力をいとわない」(営業、野村證券)
「社員同士の協力やチームワークも重視され、課題に対して、協働で解決策を見出す取り組みが多く見られる」(アソシエイト、船井総合研究所)
(2)部署や世代を超えたつながりを得る仕組みがある
また、業務の中で他部署との協働が推奨されていることや、異なる世代間の交流を促す仕組みにより学びの機会が豊富であることも、特徴の一つとして挙げられます。
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「企業文化には、変革を続ける姿勢と、協力を重んじる文化の両方が根付いていると感じる。同業他社から転職してきたが、チーム一丸となってクライアントへの価値提供を最大化しようとする姿勢が強く感じられる。また、他セクターなどとコラボしたシナジーを重要視している点も評価できる」(シニアアソシエイト、PwCコンサルティング合同会社)
「メンバーの年齢層は幅広く、挑戦意欲の高い若手とシニア層とのバランスが良いと感じる。その中で得られる経験は多い。複雑なドメイン領域や洗練された技術スタック(ソフトウェアやサービスを開発・運用するために使われている技術やツールの組み合わせ)に取り組むことで、自身の専門領域を広げ、スキルの向上につなげることができる」(エンジニア、サイバーエージェント)
「さまざまな挑戦をしてどんどん経験していく風土が感じられる。また、資格取得など社内でさまざまなイベントがあり、会社の方針として社員の成長をいろいろな角度から支援している。人脈に関して他部署と横断的に交流する機会も多々ある」(ITスペシャリスト、日本アイ・ビー・エム)
(3)学ぼうとする意欲を伸ばし、実力をしっかり評価される文化がある
チームで成果を出すことを重んじながらも、「出る杭は伸ばす」文化の中で実力がしっかり評価されている点も、大きな特徴です。実力が評価されることで自然と裁量も広がり、若手がのびのびと働いている様子がクチコミからもうかがえました。
「若手の発言もしっかりと聞いてもらえる環境があり、また学ぼうとする意欲や積極性が評価されると思う」(総合職、電通)
「頑張っても頑張らなくても変わらない人生なら頑張れない」というキャッチフレーズがあり、この言葉どおり、頑張りが評価される仕組みなので、自身の裁量により仕事のあり方をつくっていける」(営業、ジブラルタ生命保険)
「採用時に聞いていた『オープンでフランク』『出る杭は伸ばす』『年次関係なし』『役職機能論』などのキーワードは、実際の職場にも表れていると感じた。人間味があってビジネスへの本気度の高い人が多い。ある程度大きな組織なのでそうでない人が混じるのも事実だが、重要な役職に就く人間は企業風土を率先して体現しているため、良い影響が広がり、優れたメンバーが増えている印象を受けた」(コンサルタント、クイック)
●まとめ
この1年ほどで、社員同士の学び合いやアイデア創出を目的とした「出社回帰」の流れが見られるようになっています。ランクインした企業には、今もなおリモートワークをベースとしている企業も少なくありません。しかし出社の有無にかかわらず、これまで挙げてきた3つの特徴があります。
1. 風通しが良く、チームワークを大切にした働き方
2. 部署や世代を超えたつながりを得る仕組みがある
3. 学ぼうとする意欲を伸ばし、実力をしっかり評価される文化がある
上記の要素がしっかり機能し、企業文化として定着している様子がうかがえます。
若手社員は特に、周りの社員に影響を受けて育っていくものです。多様な価値観を認め合う時代だからといって、先輩社員が干渉せず、距離を取るような向き合い方を続けていくと、組織全体のコミュニケーション量も低下してしまいます。
社員の士気を高める環境は一朝一夕につくれるものではありませんが、最後に紹介したクチコミにも表れているように、目指したい企業文化を体現している人物を積極的に抜てきすることも、環境づくりの一助になるかもしれません。
(オープンワーク)
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