「自分は大丈夫」という過信は禁物、巧妙化する特殊詐欺で老後資金はこう奪われた!「早めのSOSを」

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2025年06月09日 07:00  週刊女性PRIME

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 老後に備えて貯めたお金が消えてしまう―。「少なからぬ“虎の子”を持っている中高年が、お金に対する無知や財産管理意識の甘さからそんな状況に陥ることがあります。

 最悪、詐欺ですっからかんに……というケースも」とお金の専門家。「自分は大丈夫」という過信は絶対に禁物と釘を刺す。

周囲の人に相談することが大切

つい信用してしまいそうな詐欺の手口があります。どんな誘い、どんな言葉にもまずはひと呼吸置いてから。さらに周囲の人に相談することが大切です

 そう話すのはファイナンシャル・プランナーのまるこいずみさん。ライフワークとして生活困窮者の自立支援も行っている。まるこさんはこれまで、数々のお金に関する相談にも乗ってきているが、最近では詐欺例もあったそうだ。

「ロマンス詐欺に引っかかったのが埼玉県在住の中年男性のAさん。海外在住の女性とSNSを通じて知り合い交際をしていましたが、ある日、彼女から“真剣に結婚を考えているから、これからの生活に必要なお金をAさんに送金したい”という申し出があったそうです。

 “送金してくれ”ではなく“送金したい”と言われたら、相手の誠意や本気度を感じますよね。ところがAさんが口座を教えたところ、その口座は凍結されてしまったのです。調べたところ、マネーロンダリング(資金洗浄)に使われたかもしれないと。

 であればAさんはクレジットカードの決済もできなくなってしまいます。その後、女性からの連絡は途絶えたそうで、こうしたケースは個人ではなく、裏には犯罪組織がいる可能性もあります

 また大阪府在住、元大学教授のBさんは“善意”がもとで、虎の子の退職金の一部を失うはめになった。

「インターネットを通じ、ある女性と知り合ったのです。複雑な親のもとに育ち、経済的に恵まれない若者の自立支援のボランティアをしている、とのこと。

 以前は教員だったこともあり、Bさんはボランティア活動維持のための支援を求められると快く寄付。“Amazonギフトをネットで送ってほしい”という要求に次々と応えてしまったのは、“両親に捨てられた学生がいる”、“食事も満足にとれていない子どもを助けて”というその女性が醸し出す切迫感と、言葉巧みさからだといいます。

 また寄付するごとに褒められて、自分はいいことをしているという満足感もあった。しかし、多くの金額をつぎ込んだのち、なんだかおかしいと思ったときには後の祭り。そのボランティア組織は架空のもので、女性もスタッフではなかった。単なる詐欺でした」

 ファイナンシャル・プランナーで精神保健福祉士の石川智さんはロマンス詐欺などの事例は地方こそ深刻だという。

地方のほうが都市部より人間関係が親密な場合があります。いいことなのですが、ちょっと噂が立てば、すぐに広まってしまうようなことも。なので、こうしたことは相談がしにくい。子どもと同居している世帯でもだまされた恥ずかしさが先に立ち、一人で抱え込んでしまうんですね。表に出ていないだけで、こうした事例は決して少なくないと思いますよ」(石川さん)

 訪問系の詐欺も地方では多いという。

貴金属の買い取りを口実にして、ターゲットにした家に入り込み、お金があるかどうかを確かめるといった手口があります。田舎では鍵もかけずに出かけてしまう人もいる中、比較的容易に家に上げてしまうケースが多いのかも、と推測します」(石川さん)

お金に関しては肉親や親戚でも注意が必要。身内とはいえお金を要求してくる人もいるかもしれません」(石川さん)

遺言は後期高齢者になる前に用意すべき

 親族からでもお金を“奪われる”ことがあるという。石川さんの元へ相談に来た千葉県在住の40代主婦、Cさんの話。

「Cさんの夫の実父が亡くなったときの話です。実母は先に他界していたため、『死んだら遺産をおまえたちに』と言われていたそうです。Cさんは夫の実父の介護をしていて、ほとんど働くこともできなかった。

 なので、将来、遺産を自分たちの老後資金にできたら助かると考えていました。しかし、実父には後妻(Cさんの夫の育ての母)がいました。その後妻が『遺産は私一人が受け取りたい。私が死んだら遺産は全額、おまえ(夫)にいくから今はそうして』と。

 血のつながりのない後妻とはいえ、育ての母。それに高齢の独り身ですから、Cさん夫婦は了解したそうです。ですが、なんと養子縁組もされていないことがわかりました。遺産をCさん夫婦がもらえることはありません

 この場合、たとえ後妻が亡くなっても、Cさんの夫へお金が戻ることはなく、「奪われた」格好となった。

親戚との関係を大事にしたい。あるいはこの人に残したい、残してほしいと思うなら、意思表示が何より大切。具体的には遺言を書く、書いてもらうことをおすすめします

 その遺言も、後期高齢者になる前に用意すべきという。

本人は認知機能に自信があっても、周囲はそうは見てくれなくなることもあるからです。75歳になる前に、練習のつもりで書いてみては」(石川さん)

 家族がお金で争う“争族”ほど悲しいことはないとまるこさん。

誰にどれくらい残すかを、自筆で書く自筆証書遺言ぐらいは毎年作ってもいいように思います。公証役場に届けるまではしないまでも、その年ごとの家族の経済状況を知っておくのにおおいに役立つはずですから

 身内との関係を大切にしたいと願うのならば、はっきりとした意思表示が何より大切と、両FPは口をそろえる。

 わが子を原因とする老後資金の逼迫も。まるこさんが相談を受けた青森県のDさん80歳の話。

息子が若いころからずっとひきこもっているそうです。人間関係で会社に行けなくなったようで。これまで妻と2人で面倒を見てきましたが、とうとう手持ち資金が底をついて。親子3人、これからどうやって暮らせばいいのやら……

 老老介護に働けない息子、不安ばかりの毎日だという。

共依存で親子双方が困窮するこうしたケース、最近は特に増えています。家族の問題と抱え込まないで、相談できるところを探してみてください。そうしないと共倒れしてしまいます」(まるこさん)

 わが子がひきこもってしまったら、早めに対策したり、支援を求めること。

人に頼る術や相談できる機関を知っておく

将来の万が一に備えて、お金について学んでおくことが大切です。中高年になると、なかなか人に相談できないこともあると思いますが、これまでお話しした詐欺などの事案も、家庭の事情も、素直に“助けて!”と言ってもらえれば、傷は浅くて済むはずです。人に頼る術や、相談できる機関を知っておきましょう」(石川さん)

 夫婦であってもお互いの財布事情を知らない人が多いことも指摘する。

管理はどちらか一人でやってもいいので、家計状況は夫婦でできるだけ共有しておきましょう。退職金の金額、ローンの状況まで知っている状態にできるといいでしょう。一括管理していたパートナーが亡くなると、残されたパートナーは途方に暮れたり、だまし取られる場合が多い。お金を管理した経験がないからです」(まるこさん)

 お金はまかせっきりにせず、把握することが大切だ。

何よりも、健康でいることが大切です。病気になればそのぶんお金がかかります。健康でいれば長く働くことも可能です。それに、詐欺に引っかからないためにも、判断できる能力を維持していきましょう

 老後資金は、自分の身は自分で守り、慎重な行動を。

石川 智さん ファイナンシャル・プランナー(AFP認定者・2級FP技能士)、精神保健福祉士。一般向けのライフプラン相談・保険見直し相談だけでなく、生きづらさを抱えた人の家計相談やライフプラン相談も引き受ける。

まるこいずみさん ファイナンシャル・プランナー(CFP認定者1級FP技能士)。20年以上、大手保険会社で勤務、その間に関わったクライアントは延べ1万人を超える。家計改善支援員としても活躍中。

このニュースに関するつぶやき

  • 日本の年金制度だって特殊詐欺みたいなもんなんだけど?
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