FIRE投資家が「子どもに“400円×年齢”のおこづかい」を毎月渡し続けたワケ。おもちゃに散財してもマネーリテラシーを鍛えられる“条件”とは

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2025年06月09日 09:31  日刊SPA!

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―[FIRE投資家が教える「お金・投資」の本質]―
東京23区の中古ワンルームマンション中心に不動産投資を展開。現在、37戸の物件を所有し、時価資産額約10億円、年間家賃収入約4000万円の個人投資家・村野博基氏。2人の子どもを育てている村野氏は「子どものマネーリテラシーをどう育てるか」という観点でもユニークな方法を取っていました。お金を使うこと、消費のマネーリテラシーを磨くための方法を村野氏が語ります。

◆子どものマネーリテラシーはどう鍛える?

お子さんを育てる親世代ならば「子どもにどうマネーリテラシーを身に付けさせたらよいだろうか?」を思い悩む経験があるのではないでしょうか。子どもが小学生の頃からおこづかい制を導入しているご家庭も多いと思います。私自身も2人の子どもを持つ親の立場ですが、子どもたちには独立した際に「家計をやり繰りしていく術は身に付けて欲しい」と願っていました。

子どものマネーリテラシーはどう鍛えるべきか? 私の持論はまずは「お金を使う感覚を身につけること」だと思っています。お金は実際に使うことで、自分自身の快・不快が見えてきます。実際にお金を支払ってその対価を得たときに、初めて「支払った対価に見合っているか」を肌感覚として理解できるのではないでしょうか。

もちろん本当の意味では、使う前に自分で「稼いでお金を得る」ことが必要ですが……。義務教育中は子どもが働くのではなく、その時々に経験できることをして欲しい。ですから、村野家では子どもたちが小学生の頃から「年齢×月400円」を毎月おこづかいとして渡すようにしていました。これは、岩下桂子さんの『かしこい子どもを育てるおこづかいトレーニング』(学習研究社刊)の岩下式おこづかいを実践した形です。

◆おこづかい額は年齢×月400円

年齢×月400円の方式だと、6歳ならば月2400円、12歳ならば月4800円、15歳ならば月6000円です。小学生の月のおこづかい平均額は500〜1000円くらい、中学生のおこづかいの月額平均は2000〜3000円程度です。「周囲の子どもよりもかなり多いのでは?」と思われる方もいるでしょう。

しかしポイントは額ではなく、渡したおこづかいを「どう使うか自分で考えて決める」ことです。ですから遊びに行ったときのアトラクション代も、気に入った文房具を購入するのも、外出時の「買い食い」も、お金を出すか出さないかを自分で判断させました。また通常は親が出すのが当たり前であろう給食費も、一部は子どもたちのおこづかいから出させていました。時折「お手伝いをしたら50円」という形で追加のおこづかいもありましたが、基本的には「年齢×月400円」の範疇で子どもたち自身がやりくりをします。

こんな方式を取ったのには、早い内から「何かを得るためには対価を払う必要があること」「自分で主導権を持って決めること」「制限のなかで工夫すること」を理解して欲しかったから。そして、「物の値段や価値をどう判断するか」というリテラシーを身に付けて欲しかったためです。

どんな商品やサービスでも、得るためには対価を支払う必要があります。そして、それを購入するか否かを自分以外に決めさせるのは悪手です。自分にとって「何かを買う」のは、同時に「何かを諦めて買えなくなる」ことでもあります。それをまず理解しなければなりません。当然、買えないことは苦痛にもつながります。でも、そのとき他責思考では改善の創意工夫は産まれません。「自分で決断して買った」という主導権を持って行動した経験がどうしても必要なのです。同時に「無駄なものを買ってしまった……」という後悔と、それに対して反省することを早く経験して欲しいとも願っていました。

◆おこづかいを渡す代わりの条件とは

一点だけおこづかいを渡すにあたっては条件を付けていました。それは「おこづかい帳」を付けること。もらったおこづかいを何に使ったのか、複式簿記に近い形でのおこづかい帳に記入することが条件です。

おこづかい帳があれば月々何に使っていたのかが振り返って見えるようになります。おこづかい帳は「自分がどう決断したか」によって変わる行動の履歴でもあるわけです。仮に「何に使ったのか分からない……」という、いわゆる使途不明金があっても、その事自体を認識していればおこづかいは渡していました。

◆「おこづかい帳」で無駄遣いの浪費がわかる

なぜ帳簿を付けることを条件にしたかと言えば、子どもたち自身で「何にお金を使ったか」をちゃんと認識して欲しかったためです。

本人が価値を感じないモノやコトに対してお金を支払うのは「浪費」です。自分自身でもお金を使う中で、何が必要で何が無駄かは人それぞれであり、その人が実際に使ってみないと分からない……というのが私自身の持論。だからこそ小学生の頃からお金の使い方で、「何が必要で何が不要かを考えて欲しい」。それがこのおこづかい制度のねらいです。

正味なところ、子どもたちの帳簿を見ていると「ポケモンカードの購入費」や「GSM内のゲームセンターでの交遊費」「自販機のジュース」などの項目があり、気になる点がないわけではありません。「うちに帰ってくればすぐにジュースが飲めるのに、何でこのタイミングで買う!?」と思ったこともしばしば。このおこづかい制度を始めた最初のうちは、毎月すぐに散財していました(笑)。

とはいえ、私は子どもたちにおこづかいを渡した以上は「何に使っても構わない」と考えています。お金の使い方で、将来どうなるのかは子どもたち次第。使い方は教えられるものではなく、自分自身で気が付かない限りは一生身につかないモノだと思っています。親ができることといえば、大変寂しくて残念なのですが「子どもが考えられる環境を提供すること」ぐらいなものです。

「年齢×月400円」という金額は子どもには大きなお金ですが、同時に金額の制限があります。「その制限のなかでどう工夫するか」も大きなポイントです。例えば、遊園地で1日遊びたいと考えても子ども用のチケット費だけで3000〜4000円かかるもの。しかし数か月ほどお菓子やゲームを買うのを我慢して貯めれば、その金額は自分たちのおこづかいで準備できるのです。欲しいモノやコトを実現するための道筋を考え、スケジュールを組み、実行する。この一連の流れを知るのは「生きていく上できっと役に立つだろう」とも考えていました。

改めてですが、大事なことはおこづかいの金額の多寡ではなく、「何に使ったのか?」を意識すること。そのお金を「自分が決めて」、使って「どんな価値が得られたのか」を考えることです。大人たちもこの点に立ち返って考えてみると、自身の「浪費」を制限できるかもしれません。

<構成/上野 智(まてい社)>

―[FIRE投資家が教える「お金・投資」の本質]―

【村野博基】
1976年生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、大手通信会社に勤務。社会人になると同時期に投資に目覚め、外国債・新規上場株式など金融投資を始める。その投資の担保として不動産に着目し、やがて不動産が投資商品として有効であることに気づき、以後、積極的に不動産投資を始める。東京23区のワンルーム中古市場で不動産投資を展開し、2019年に20年間勤めた会社をアーリーリタイア。現在、自身の所有する会社を経営しつつ、東京23区のうち19区に計38戸の物件を所有。さらにマンション管理組合事業など不動産投資に関連して多方面で活躍する。著書に『43歳で「FIRE」を実現したボクの“無敵"不動産投資法』(アーク出版)

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