車に乗せた松葉杖の少女は、誰よりバスケに真剣だった「夢なんてねぇよ」同級生ドライバーが心揺さぶられた夏【漫画】

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2025年06月09日 10:10  まいどなニュース

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女子バスケットボール部「海都」の活躍を目の当たりにした主人公「青人」 ©2宮/講談社

若い頃にしか味わえない青春の時期といえば、人によって様々な思い出があることでしょう。作画と原作のコンビで活動する2宮さんが手がけた『灰夏のタクシー』は、“車の送迎”をテーマに高校生の男女2人による人間ドラマを描いた読切作品です。X(旧Twitter)に同作がポストされると、多くの人の関心を集めて2.9万もの「いいね」が寄せられています。

【漫画】松葉杖の女子生徒の送迎係をしているうちに…「灰夏のタクシー」全編を読む

スナックで働く母を車で送迎している高校生の「青人(あおと)」。本来であれば学校の規則で高校を卒業してからではないと免許の取得を許されてなかったものの、家庭の事情によって青人は車の運転を許されていました。

ある雨が降っていた朝、母を迎えに行くために車でスナックに向かう青人。道中で偶然にもクラスメイトの女子「海都(かいと)」を見つけます。海都はバスケットボール部での怪我によって松葉杖をつきながら必死に登校しており、その姿を見て「かわいそー」と思いながら通り過ぎると、「あ 青人くん!?」「乗せてえ〜〜」と声をかけられます。

見兼ねた青人は海都を車に乗せることに。天真爛漫な性格の海都は「親の仕事を手伝うために運転してるんだよね」「えっらいなぁ」「運転やっぱ楽しい?」と青人に話しかけます。さらに青人の応えを聞く前に、「私はバスケすっごい楽しいよ」「最後のインハイ 絶対レギュラーになるの!!」と喋り続ける海都。そして、「青人くんはやりたい事とか夢とかないの?」と尋ね、青人は「ねぇよ」と応えたものの、海都はそっちのけで濡れた制服を脱いで肌着の姿になっているのでした。

無事に学校まで送り届けた後、学校で挨拶を交わす青人と海都。青人は同級生の男子に海都の話をすると、「(バスケが)めちゃくちゃ下手らしいよ」と言われます。その夜、母を車で送ってる道中で学校の体育館を通り過ぎた時、海都が1人で自主練をしている姿を目撃。それからというものの、青人は海都が気になるようになり、翌日の朝、再び遭遇した海都を車で送ることにします。

すると海都は「青人くんの青春って特殊なイメージあるよね」「“青”よりも深い雨のような“灰色”」「そんで今は“春”じゃなくて“夏”だから〜うん“灰夏”だ」と話し始め、「はは…意味わかんね」と軽く受け流す青人。その後も海都の頑張る姿を見た青人は、“自分も何か頑張れることを探さなくては”という思いに駆られるのでした。

その後、青人は偶然にも海都のチームメイト同士の「ぶっちゃけだりぃよな海都」「うちらがわざとケガさせた」という会話を聞いてしまいます。複雑な心境になった青人は、自らの意思で夜に練習している海都を車で送ることに。そして、“ケガをさせられてもバスケが好きか?”と質問すると、海都は泣き始めてしまいます。車内の雰囲気は重くなったものの、その後ドライブスルーで腹ごしらえをして、すぐに仲直りをするふたり。そこで青人は“足が治るまでドライバーをやらせてくれないか”と海都に打診し、その後の2週間もの間、海都の送迎を続けるのでした。

そしてインターハイ初戦の5日前、レギュラー発表の日を迎え、海都は先発メンバーから落選という結果に。青人は海都を慰めるため、きれいな夜空が見える山奥の穴場に連れていき2人だけの時間を共有します。

その後、迎えたインターハイ初戦では相手に大差をつけられていたものの、海都は途中から出場してシュートを決めるのでした。

海都の影響もあってか、青人はタクシードライバーになることを決意。海都は大学に進学し、青人も夢に向かって進み始めたことで2人は疎遠になっていきます。それから10年ほど経ったある日、青人は夢を叶えて個人タクシーのドライバーになっていました。

そして、突然ドアをノックする客が現れて後部座席に乗せると、そこには海都の姿が。青人が「よくわかったな」と伝えると、「簡単だよ」と応える海都。というのも青人が運転するタクシーの扉には、大きな文字で「灰夏のタクシー」と書いてあるのでした。

読者からは「読後が心地いい作品」「泥臭く頑張る海都に感動した」などの声が。そこで2宮さんの原作担当と作画担当の2人に、同作を創作したきっかけについて話を聞きました。

印象的な表情の描写 特に力を入れたのは?

―『灰夏のタクシー』の創作に至った経緯を教えてください。

原作担当:高校生の青春物を描こうとなりまして、今の高校生にとって特別なことはなんだろうと考えた時に出てきたのが「運転」でした。あとは担当さんと修正していき、具体的なタクシー運転手としての夢を固めました。

―『灰夏のタクシー』の中で、特に作画の際に力が入った場面があれば、理由と一緒にぜひお聞かせください。

作画担当:感情の動きが話の軸となっていたので、表情描写には全体的に力を入れました。特に2人で夜空を見上げるシーンは涙を流したり、画面的にも見栄えがあったので、その場の雰囲気がより伝わるように描きました。

―同作は第113回新人漫画賞の特別奨励賞を受賞されていますが、結果を知った際の感想をぜひ教えてください。

原作担当:一番は「悔しさ。」です。上の賞を獲らなければいけないのに、獲れなかった。悔しさと焦り。反省が率直な感想です。

作画担当:正直、前回他の作品でいただいた賞と同じだったので、悔しさはありました。しかし、特別奨励賞からマガポケへの掲載権が得られるため、その点はとてもホッとしました。もちろん上の賞を取りたいですが、個人的にはせっかく描いた作品が誰にも読まれないことの方が悲しいので、大勢の方に読んでいただける機会をいただけて光栄です。

―読者にメッセージをお願いいたします。

原作担当:とりあえず今は答えを早く見つけたい状況にあります。そのために様々な挑戦をしなければなりません。ぜひ読み守っていただけましたら、幸甚でございます。

作画担当:ご拝読いただきありがとうございます。感想はSNSやアプリ全て目を通しているので、やる気に繋がります。2人体制の強みを活かし、さらなるクオリティの向上を目指していきたいと思います。

(海川 まこと/漫画収集家)

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