近年はメガネ型のウェアラブルデバイス(スマートグラス)に注目が集まっていますが、その1つがARグラスと呼ばれる製品です。グラス部分に投射されたデジタル情報と、周囲を同時に見られる光学パススルーデバイスとも言えます。
「スマートフォンやPCと接続すれば、目の前に100型を超える超巨大なディスプレイが広がる!」──そんなキャッチコピーが勢いよく踊っている商品がちまたでは多いのですが、実際にはどんな見え方になるのか、どんな使い方ができるのか。気になっている方も多いのははないでしょうか。
筆者は実際に使ってみて、個人的には十分に実用性が備わっているデバイスだと実感しています。特に今回取り上げる「XREAL One」は、PC用の仮想モバイルディスプレイとして現時点でベストなアイテムです。普段は画面が小さなノートPCを使っている方ほど、手に入れてほしいと思います。
●見た目も機能もスマートなXREAL One
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XREAL Oneは、これまでもさまざまなARグラスを世に送り出してきたXREALが開発した最新世代の製品です。価格は6万9980円です。フレーム部分に厚みはありますが、普遍的なサングラスのデザインに落ち着いています。質量は約82gで、本体にバッテリーはなく、PCやスマートフォンとはUSBケーブルで接続します。
XREAL Oneには「XREAL X1」チップという専用の制御チップが搭載されています。頭の前後/左右の傾きや回転を検知できる3DoFセンサーも内蔵しています。XREAL One以前のARグラスは、頭を動かしても常に仮想ディスプレイ映像が視界のどこかに固定されて表示されましたが、XREAL Oneは360度、どの方向にも仮想ディスプレイを空間上に(疑似的に)固定できます。
XREAL Oneに使われているディスプレイパネルは、ソニーセミコンダクタソリューションズ製の0.68型マイクロOLED(有機EL)です。解像度は400万ピクセルで、1080pの映像を映し出せます。
視野角はARグラスの中では広めの50度が確保されています。ディスプレイパネルの映像を反射させるハーフミラーの品質は高く、OLEDならではの鮮やかな映像が目に飛び込んできます。
XREAL OneをWindows PCやMacと接続すると、すぐに外部ディスプレイとして認識されます。専用アプリなどを起動する必要はありません。USB Type-Cを搭載したiPhoneや、DisplayPort Alternate Mode(DP Alt Mode)対応のAndroidであればミラーリング表示されます。
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シームレスに使えるのもXREAL Oneのいいところ、といえますね。
●装着感は?
XREAL Oneは普段使っているメガネよりは明らかに重いし、USBケーブルの重さも気になってくるものの、これは慣れれば大丈夫です。最初は30分も装着していると疲れを感じていましたが、今は2〜3時間の連続着用でも気にならなくなりました。
重さや形状のバランスの良さだけではなく、電気調光式で明るさを3段階で変えられるレンズが秀逸なのです。仮想ディスプレイの画面に集中したいときは暗くして没入感がアップして、歩くときなどは明るくして外界を見やすくなります。この切り替えがボタン1つで行えるし、仮想ディスプレイを固定して見ているときは暗く、仮想ディスプレイから目を離すと自動的に明るく変化してくれるのでストレスを感じにくいのもうれしいところですね。
内蔵されているスピーカーの品質も良好です。BOSEとの共同開発によって生まれたオーディオシステムだそうですが、メリハリが効いています。カフェやコワーキングスペース、電車内など公共の場では控え目な音量に設定しますが、思ったより音漏れが少ないのもいいところ。
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BOSEはウェアラブルBluetoothスピーカーというべき最初期のスマートグラスを作ったメーカーの1つでもあり、グラスデバイスにスピーカーを組み込むことに長けているようですね。
●特筆するべきは、ウルトラワイドモードの使いやすさ
肝心要の視野についても、XREAL One以前から発売されてきた「XREAL Air 2 Pro」と比較しながらご紹介しましょう。
XREAL Oneの視野角は50度です。下の図の薄緑色の枠くらいの仮想ディスプレイが得られます。主観ではありますが、1m先の距離に33〜34型のディスプレイが見えるという印象です。
対してXREAL Air 2 Proの視野角は46度です。水色の枠、32型くらいです。公称では4m先の場所に147型のディスプレイが広がるとされています。数値的には間違っていないものの、もっと近くの場所に、そこそこ大きいディスプレイがあると感じますね。
これくらいの差なら「XREAL Oneでなくてもいいんじゃないか」「リーズナブルなXREAL Air 2 Proでもいいのでは」と思うかもしれません。事実、スマートフォンと接続してゲームで遊ぶ、NetflixやAmazonプライム・ビデオを見る分にはXREAL Air 2 Proで十分に満足できます。調光機能はありませんが、視野角が同じXREAL Air 2でも十分です。そういった用途ならコスパはめちゃくちゃ良いですよ。
しかし、仕事用として使うなら話は別です。
前述したように、XREAL Oneは3DoFセンサーを活用することで仮想ディスプレイを特定の方向に固定できます。この図のように、ノートPCの上に置くような配置も可能です。首を少し下向きに傾ければすぐにノートPCの画面も目に入ってくるので、デュアルディスプレイとして使えます。
しかし、仮想ディスプレイを固定できないXREAL Air 2 Proは、首を動かしても常に仮想ディスプレイの映像が目に入ってきます。よってデュアルディスプレイとしての運用ができません。
XREAL Beamというオプションを使うことで3DoFによる表示も可能になるのですが、仕事用として使うならXREAL Oneですね、と言うしかないトドメがこちら。
XREAL Oneのメニューから「ワイドスクリーンモード」を選択すると、仮想ディスプレイが左右に広がるウルトラワイドモードになります。一度に見える範囲は薄緑の領域のみとなりますが、首を左右に振ることでさまざまなアプリのウィンドウを開いて配置できます。
これが、仕事の進ちょくというか生産性に効くんです。効きまくるんです。
●XREAL Eyeを追加することで6DoFにステップアップ
さらにXREAL Oneには、カメラユニットのオプションが用意されます。メーカーよりお借りして実験しているのですが、コイツがすごい。動画や写真の撮影だけではなく、高さや奥行きも測れるセンサーとして機能し、XREAL Oneが6DoFのARグラスに進化します
MRやVRコンテンツを使うのでなければ「6DoFってそこまで必要ないかな」と思っていたのですが、それは大間違い。仮想ディスプレイをApple Vision Proや、Meta Quest 3みたいに、空間に固定できるようになるのです。
椅子の背もたれに身体を預けているときは、通常よりもウルトラワイドモードの広い範囲を見ることができるし、身体を近づければじっくり見たい部分を拡大できる。
しかも補正レンズを入れておけば、老眼対策にも効果あり。どんな姿勢、どんな距離であっても仮想ディスプレイが見やすいから、現実のディスプレイより使いやすいのではと感じてきます。
控えめにいって、最高のモバイルディスプレイです。
●ビジネスマンだけじゃない。クリエイターにも効くディスプレイデバイスだ
XREAL Oneだけでも優れたモバイルディスプレイになるし、XREAL Eyeを足すことで、さらに生産性がアップします。Google ドキュメントなどのオフィススイート系サービスから、Photoshopによる画像レタッチ、Premiere Proを用いた動画編集、Canvaなどのデザイン系Webアプリでも使ってみましたが、文字入力もデザインワークも仕事が進むこと進むこと!
最近は17型を超えるモバイルディスプレイも多く販売されていますが、いくら薄いとはいっても運ぶのは面倒です。しかしXREAL Oneならバッグの中に500mlのペットボトル1本分くらいの余裕があれば大丈夫。6万9980円という価格も、ちょっと良さげなモバイルディスプレイと同じくらいですし、ビジネスマンもクリエイターも買って得するテバイスですよ、コイツは。
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