
生まれ育った町を愛するAさんは、高校を卒業する時も迷わず地元の大学を選びました。大学卒業後も大手企業にエリア限定社員として採用され、これ以上ない喜びを感じていました。実家から通える範囲だったので、ずっとこの町で働けると安心していたのです。
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入社から5年が経過し、Aさんは仕事にも慣れ充実した日々を送っていました。しかし、会社の業績不振によりAさんが勤務する事業所が閉鎖されるという通達が出されます。閉鎖後は遠方の別の事業所に統合される予定で、Aさんは引っ越しをしなければならなくなったのです。
エリア限定雇用とは名ばかりで「結局は転勤をしなければならないのか」とAさんは途方に暮れます。Aさんは、会社の意向に従わないといけないのでしょうか。社会保険労務士法人こころ社労士事務所の香川昌彦さんに聞いてみました。
ーエリア限定雇用とはどういうものなのでしょうか
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エリア限定雇用とは、勤務地を限定した雇用形態です。「地域限定社員」といった名称で呼ばれる場合もあります。通常の総合職採用とは異なり、採用時に定められた地域や職務内容から変更されることが少ないのが特徴です。
ー事業所が閉鎖される場合、解雇されるのでしょうか
事業所が閉鎖されると、従業員の雇用に大きな影響を与えます。原則として、事業所閉鎖は解雇理由となるものの、会社は従業員に対して解雇回避努力義務を果たさなければなりません。
解雇回避努力義務とは、会社が人員削減を行う際に解雇を回避するための努力をする義務を指します。このケースでいえば他の事業所への配置転換や、取引先や有料の職業紹介を活用した再就職支援などが考えられるでしょう。転居先の用意や単身赴任手当の支給などで、エリア限定雇用の社員の転勤を支援する企業もあります。
ー解雇回避努力義務が認められれば、企業は解雇できるのですか
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たとえば事業所の廃止が決まっていたことをすぐに公表せず、廃止直前に公表するといった行為は企業にとって不利に働くでしょう。退職金の積み増しや、退職の準備ができていない社員に対する費用を求められる場合もあります。
また、解雇回避努力義務を果たしても従業員側が納得せず、ストライキなどの対抗措置に出る場合もあります。西武池袋店の事例では、不動産の売却に対して反対する従業員がストライキを断行しニュースにもなりました。仕組み上、解雇ができるとはいえ、穏便に進めるためには企業側に十分な準備が求められます。
とはいえ、Aさんが転勤を拒否したとしても、事業所の閉鎖は覆りません。会社に転勤を伴わない勤務先がない以上、Aさんが勤務し続けるのは困難です。転勤を受け入れるか、転勤を拒否して退職勧奨を受け入れるかのどちらかを選ぶことになるでしょう。
◆香川昌彦(かがわ・まさひこ)社会保険労務士 大阪府茨木市を拠点に「良い職場環境作りの専門家」として活動。ラーメン愛好家としても知られ、「#ラーメン社労士」での投稿が人気。
(まいどなニュース特約・長澤 芳子)
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