RIZAPグループ 代表取締役社長の瀬戸健さん 2025年3月期決算で黒字達成のほか、chocoZAP事業の継続的な拡大と収益性の向上を示したRIZAPグループ。そうしたなか、新たにスタートするフランチャイズ展開。事業開始から3年、直営のみで1799店舗(会員数135万人)まで拡大してきたなか、フランチャイズ展開が次なる成長へ向けた戦略転換になるのか代表取締役社長の瀬戸健氏に聞いた。
【ビフォーアフター】「どえらい変化!」25キロの減量に成功した、ミス筑波大学・なこさん◆事業開始3年での急成長は、世の中のトレンドに乗った成功を示している
――2025年3月期決算では、3期ぶりの通期連結営業黒字および最終黒字を達成し、RIZAP関連事業のフリーキャッシュフローを黒字化しました。chocoZAPは、会員数がプラス15万人、店舗はプラス409出店と成長を続けています。今期の手応えを教えてください。
【瀬戸社長】 chocoZAPをスタートして2年で事業の黒字化を達成し、3年でここまでの規模に拡大できたことは、世の中のトレンドに乗った成功を示しています。継続的に収益を上げる事業であることを確認できました。約1800店舗の黒字化も進んでいて、これまでに閉店は1店舗もありません(※テナントオーナーの都合による退店を除く)。事業自体が非常に上手く進んでいると確信しています。経営面では営業キャッシュフローもフリーキャッシュフローもプラスになり、ようやくスタートラインに立てたと感じているところです。
一方、1年目で100店舗、2年目で1000店舗を超える拡大を遂げてきたなか、サービスの歪みも生じています。ある程度の運用期間を経ないとマシンの消耗や故障などのデータは揃わない。ようやく出揃ってきたところで緊急対応が必要になり、アウトソーシングのコストが収益を圧迫してしまったことは、反省点としてあります。
――前期は、規模拡大よりも、品質向上を優先にする期間としていました。急速な店舗拡大で発生した問題の解決や改善の現状は、どのように捉えていますか?
【瀬戸社長】 マシン自社開発による故障発生率低減など、さまざまな施策により、確実に改善は進んでいます。ただ、修復と同時に、経年劣化や連続使用による異常や故障などもあり、トラブル自体は発生しているのが現状です。加えて、消耗も含めて対応していかないといけない。個別の緊急対応もあれば、壊れやすいパーツの改良や耐久性の高いマシンの開発など1〜2年のスパンでの根源的な要因への対策をセットで取り組んでいます。われわれは社会に前例がない事業に挑み続けています。常に歩みを止めてはいけないと考えています。
◆クボタやトヨタを始め企業内出店の事例も着実に増加
――前期の改善に対するお客様の声などリアクションはいかがですか?
【瀬戸社長】 DXによって、故障や不具合の1つひとつを見える化していることで、短期間での修復が可能になり、お客様からの厳しいご意見は減っています。ただ、まだ課題は残っているので、現状に満足せず常に100点満点を目指すことに意識を向けています。
――廃校舎のほか、公民館や図書館、公共施設の待合室など自治体との連携によるchocoZAP出店は、どのくらい進んでいるのでしょうか? 本年度の目標も教えて下さい。
【瀬戸社長】 空きスペースの活用により価値を生んでいく取り組みであり、実際に複数の自治体と官民連携コンビニジムの出店をしており、現在具体的な話を進めている先もいくつかございます。自治体との連携による出店の余地は全国に1700店舗ほどあると見込んでいるので、自治体連携を通して全国のあらゆる地域にサービスを届けていきたいと考えております。
――札幌トヨタ本社ショールーム内の出店が発表されましたが、共同出店や協業モデルによる企業内出店も進めています。
【瀬戸社長】 chocoZAPは、いろいろな場所、場面で活用されやすい特性があります。お客様の日常生活のなかでシームレスにご利用いただけて、スキマ時間の有効活用になります。企業コラボレーションの事例が出始めていますが、すでに特別な出店ではなくなっています。企業側のニーズともマッチしているので、これからさらに加速させていきます。
◆直営オンリーからフランチャイズへ戦略転換「社内完結せず、当事者を増やしくことも重要なポイント」
――今期から新たにフランチャイズ出店をスタートさせます。これまで直営のみで拡大してきたところからの戦略転換になるのでしょうか。
【瀬戸社長】 ひとつの転換ではあると思います。1000店舗を超える直営出店は、資本を含めたファイナンスの観点からビジネスとしては異例でした。それでも、これまでにない新しいものを作っていくにあたり、スピード感を持って迅速にビジネスモデルを確立していくために、直営でやることの意味がありました。それがある程度出来上がったいま、自社のリソースだけでなく、外部のリソースもお借りしてフランチャイズ展開をすることは、今後の事業の成長を加速する上でプラスになります。無人ジムのchocoZAPは、採用や教育が不要であり、場所と設備をシステムで動かしてくので、遊休資産をお持ちの地方の方や投資家の方も含めて、いろいろな方と連携できます。
――フランチャイズ契約への反響はいかがですか?
【瀬戸社長】 実は以前からいろいろなお話を受けており、需要は感じていました。今回の決算発表のあと、大々的な告知や広告等は行なっておりませんが、わずか数日間で100件以上の連絡をいただいています。まずはトライアル募集と位置づけており、いろいろな方と一緒にビジネスモデルを検討し、より収益性の高い事業として早い段階に動き出したい。トライアルでの実績を確認した上で、下期以降には一気に広げていきたいと思っています。ただ、あくまでもトライアル的な位置づけなので、本年度の事業計画の売上や利益の見込みには含んでおりません。
――フランチャイズ契約によっては、カラーが異なる店舗が生まれることもありそうです。chocoZAPブランドがブレることにはなりませんか。
【瀬戸社長】 フランチャイズ店にどこまで自由度を持たせるかは、トライアルをしながら検討中です。そこにはメリットとデメリットが生じますから、しっかり見極めないといけない。ただ、自由度があることで、新しい発想が生まれたり、新たな可能性が開けることがあるかもしれません。フランチャイジーからの強い要望が出ることもあるでしょう。それらを社内で完結せずに、一緒になってより良くしていく。そういった当事者を増やしくこともひとつの重要なポイントです。
――トラブルなどの緊急対応において、直営店とフランチャイズ店の差は生じませんか。
【瀬戸社長】 フランチャイズの加盟プランにより、メンテナンス等を加盟店側がどこまで担うか等、多少の違いはありますが、基本的にはchocoZAPの無人運営のシステムで運営するので、お客様が利用する上で直営店とフランチャイズ店の違いはありません。
◆地域創生への貢献も担う地方こそchocoZAPの当初からの計画が花開く
――5月18日放送のバラエティ番組『ナニコレ珍百景』(テレビ朝日系)で、「chocoZAP木曽岬店」(三重県)が「田舎の田んぼのど真ん中に24時間営業のジムがある光景」として取り上げられました。空き施設となっていた建物を活用した同店は、ジム以外にもカラオケなどのサービスがあることで地域のご年配の方からも人気があり、過疎化地域の活性化に繋がっています。まさにchocoZAPが目指してきたものですね。
【瀬戸社長】 その通りです。「chocoZAP木曽岬店」は、三重県木曽岬町との包括連携協定による、地域住民の健康づくりやコミュニティの活性化などに向けた官民連携店になります。地方の店舗は家賃など設備費用がある程度低いため、ローコスト運営が可能になる一方、周辺人口が少ないので利用会員数は限られます。それでも、「chocoZAP木曽岬店」は月400人を超える利用があり、十分利益を出しています。こういった地方への出店こそ、社会における役割も含めて、当初から計画していたことが花開いていくと考えています。
――グローバル展開では、4市場14店舗でのテスト出店の成果をもとに、タイやシンガポールへの進出も視野に入れているそうですね。今期の具体的な展開を教えてください。
【瀬戸社長】 文化の異なる海外の国で、サービス業で世界的に成功している日本の企業はほとんどないなか、弊社のハードとシステムで動くビジネスモデルは、国境を超えても金太郎飴のように再現性が高い。ローコストオペレーションで安価に提供できる競争力さえ持てれば、サービスは受け入れられる。テスト出店を経て、勝てる要素が揃ってきており、アジア圏を中心に積極的に取り組むほか、他の国や地域でも進出の余地が大きくあると考えています。
◆今期は事業全体でベストな体制を構築し、次の成長につなげる
――chocoZAPの全速力で駆け抜けてきた3年間をどう振り返りますか。フランチャイズがスタートするここからは次のフェーズに進むのでしょうか。
【瀬戸社長】 ゴールは変わりませんが、ただ単にやみくもに走るわけにはいかないところまで来ています。大きな改善も見えているし、1年のなかでムダなことも発生しているなか、今期のうちに事業全体でベストな体制を構築することで、次の成長につなげようと考えています。2〜3年のスパンで振り返りをして、改善を繰り返し収益性を高め、お客様に還元していく。それがchocoZAPのファンを増やしていくベースになります。今期は最終的な成長へ向けた改善の年になるでしょう。
――いま改善が必要な具体的な課題を教えてください。
【瀬戸社長】 まずは前期から取り組んでいる品質改善や満足度向上の取り組みをさらにブラッシュアップしていきます。加えてお客様の利便性やトレーニング効果の向上のために、短期的な施策だけではなく、マシンを含めたインフラをどう動かしていくか。そこからシステム体系の策定と運用に加えて、パーソナルデータの制御と活用まで提案していくわけです。常にお客様のお役に立てて、よりご満足いただくことを目指していく。そのための開発や検証は、中長期的な視野で時間をかけてやっていくものです。
(文/武井保之)