重量挙げ部の元監督が奨学生から学費をだまし取ったとして詐欺容疑で逮捕された日本大では近年、不祥事が相次いで発覚している。
自身に権力を集中させて「日大のドン」と呼ばれた田中英寿元理事長(故人)は2021年、大学の取引業者から受け取ったリベート(謝礼)などを隠し、所得申告しなかったとして東京地検特捜部に所得税法違反の疑いで逮捕、起訴され、その後有罪が確定した。
今回逮捕された重量挙げ部元監督の難波謙二容疑者(63)は、田中元理事長に近い存在として知られていたという。田中元理事長は相撲部の監督、総監督から理事、理事長に就いており、競技部の監督から教授になった難波容疑者を評価していたとの見方がある。
学生側に必要のない入学金や授業料を支払わせた疑いがある事件の構図は、大学の活動に関して強い権限を持つ立場を利用していたとみられる点で田中元理事長と重なる。
奨学生からの不正徴収は、重量挙げ部だけでなく、他の競技部でも横行していた。日大の調査では、陸上競技部では10年間で25人から計約4400万円、スケート部でも7年間で29人から計約2400万円の学費を不正に受け取っていたという。
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陸上競技部とスケート部は調査に対して不正を認めた。一方で難波容疑者は否定し、日大に詐欺容疑で刑事告発された。
難波容疑者は被害弁済の立て替え払いを巡る大学側との民事訴訟で、00年の監督就任時に、自転車部監督(当時)から不正徴収の手法を教わったと説明。「(田中元理事長も)寄付金受領の方法を把握し、内容や合理性を問題視していなかった」とも主張した。長年にわたって、日大内部でこうした違法行為が許容され続けていたとみられる。
22年7月に就任した作家の林真理子理事長は、大学の古い体質を改めると誓った。だが23年にはアメリカンフットボール部の違法薬物問題が発覚。大学側の対応が後手に回って批判を浴びた。そして24年に今回の不正徴収が明らかになった。
日大では田中元理事長の脱税事件以降、繰り返し表面化した不祥事により、私学助成金(20年度は約90億円)の全額不交付が21年度から4年も続く。ガバナンス(組織統治)の改善は不十分との烙印(らくいん)は押されたままとなっている。【山本康介】
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