ニコニコ生放送、サイバー攻撃から復旧までの2カ月間──ドワンゴが舞台裏明らかに 1万字超のブログ公開

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2025年06月11日 06:21  ITmedia NEWS

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ドワンゴの技術ブログ「dwango on GitHub」より

 ドワンゴが6月9日に公開した記事「ニコニコ生放送がサービスを再開するまでの記録」が知見に富むと話題だ。記事は、ランサムウェア攻撃の影響で24年6月にサービスを停止したニコニコ生放送が、約2カ月後に復旧するまでの道のりを“中の人”自ら振り返るもの。Xでは「こんなに詳細を出してくれるのか」といった反応がある他、ニコニコの栗田穣崇代表による紹介の投稿にも3000以上のいいねが集まるなど、注目を浴びている。


【画像】サイバー攻撃後に急遽立ち上げた「ニコニコ生放送(Re:仮)」、社内Slackに飛び交ったという「偉業」スタンプなど(計3枚)


 書き手は、ニコニコ生放送におけるバックエンド開発のマネジャーを担っているというyanagiさん。記事では当時の様子を、サイバー攻撃直後の時点から時系列順でまとめている。例えば攻撃の直後、6月8日の状況について「サービス停止の長期化が避けられない事態に直面していると理解するまでに、それほど時間は要しませんでした」と振り返っている。


 ニコニコ生放送の多くのシステムは攻撃を受けた時点で、パブリッククラウド上に移行していた。ただし、映像配信システムといった一部の重要な機能はプライベートクラウドに残っていたため、ランサムウェア攻撃の影響を受ける事態に。さらにコードベースやCI/CDパイプライン(ソフトウェアの開発プロセスを効率化する仕組み)もプライベートクラウド上に残されており、利用できない状態に陥ったという。


 そのため同社は被害を受けた2日後から、各開発者のローカル環境に残されたコードをもとに、コード管理プラットフォーム「GitHub Enterprise Cloud」上でコードベースの復旧作業を開始。その後約1カ月半をかけてCI/CDパイプラインも再構築したといい、並行して共有アカウントの運用ルールなどを改めて策定したことを明らかにしている。


 記事では復旧と並行して立ち上げた、ニコニコ生放送の一時的な代替サービス「ニコニコ生放送(Re:仮)」にも触れた。「放送できる番組は1つのみ」といった最低限の機能での提供だったが、yanagiさんは「事態の長期化を避けられないことは明らかだったため、まずは『息をしている』というメッセージを示すことが重要だと考えた」とリリースの意図を振り返る。


 記事では他にも、企画職・エンジニア職のマネジャーによって行われたサービス再開の方針に関する会議の様子など、社員同士のコミュニケーションについても紹介している。中でも情報共有の助けになったのは、Slackで作成した、ニコニコ生放送関係者全体の横断チャンネル。ここにチャンネル復旧に関する情報を集約することで「なんとなく今が分かる場所として機能した」という。


 さらに、Slackではささいな進捗にも「偉業」という絵文字でたたえ合う習慣が自然と広がっていたといい、yanagiさんは「モチベーションにプラスの影響をもたらしていた」と振り返る。


 XなどのSNSでは記事に対し「(コードの)ローカルコピーがこんなに役立つのか」「スピード感のある意思決定で段階的に復旧していったことが偉業だ」など、当時の判断や対応を評価する声が挙がっている他、情報公開の姿勢そのものを評価する意見もある。


 ドワンゴはアマゾン ウェブ サービス ジャパンが6月25〜26日に幕張メッセで開催予定の年次イベント「AWS Summit Japan 2025」でも、ニコニコのセキュリティに関する講演を行う予定。



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