東京都と国の上告断念を受け、記者会見する大川原化工機の大川原正明社長=11日午後、東京都千代田区 機械メーカー「大川原化工機」(横浜市)の社長らが不当に逮捕・起訴されたとして東京都と国に損害賠償を求めた訴訟で、警視庁と東京地検は上訴期限の11日、捜査を違法とした東京高裁判決について、上告を断念したと発表した。同社側も上告せず、都と国に計約1億6600万円の賠償を命じた東京高裁判決が確定した。
警視庁と地検は、大川原化工機の関係者に多大な負担をかけたことについて「おわび」を表明。今後、直接謝罪する意向も示した。警視庁は捜査の問題点を検証し、再発防止策を取りまとめるため、同日付で副総監をトップとする検証チームを設置した。最高検も、次長検事を責任者として公安部を中心に検証を行うと明らかにした。
警視庁公安部は2020年3月、同社が軍事転用可能な噴霧乾燥機を無許可で輸出したとして、外為法違反容疑で大川原正明社長ら3人を逮捕。しかし、初公判直前の21年7月、輸出規制対象に当たるか疑義が生じたとして地検が起訴を取り消した。
東京高裁は先月28日の判決で、公安部が必要な追加捜査を怠って逮捕に踏み切り、地検も通常要求される捜査をせずに起訴したと判断。一審東京地裁に続き、一連の捜査の違法性を認定した。
訴訟では、捜査に当たった複数の現職警察官が事件について「捏造(ねつぞう)」「問題があった」などと証言した。高裁判決はこうした証言を「重く受け止めるべきだ」と指摘した。