サッカー日本代表がたった5日で改善した理由 予選突破は「格下に大勝」の結果にすぎない

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2025年06月11日 18:20  webスポルティーバ

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 5日前、オーストラリアに0−1で敗れた日本は、インドネシアに6−0で大勝した。森保一監督はよほどうれしかったのだろう。終わりよければすべてよしといわんばかりに、試合後の会見の席でいつにも増して饒舌だった。

 オーストラリア戦から立て直すことに成功した。最終戦をいい形で締めくくることができた......。先に会見に臨んだインドネシアのパトリック・クライファート監督が、日本を持ち上げたことも拍車をかけた。会見場は穏やかなムードに包まれた。

 だが、この予選全10試合を振り返えれば、インドネシア(4位)、バーレーン(5位)、中国(6位)とのホーム&アウェー戦が6戦全勝で得点27、失点1という結果だったのに対し、残るオーストラリア(2位)、サウジアラビア(3位)との4試合は1勝2分1敗(得点3、失点2)。大苦戦を強いられている。格下に大勝したことが世界最速で予選を突破した理由に他ならない。

 力が比較的接近したチームには苦戦。格下には楽勝。今回のオーストラリア戦、インドネシア戦の日本もそうした特徴を端的に表わしていた。まさに今予選を象徴するような2試合と言えた。

 インドネシアはかつてより確かに強くなっている。選手の技量、特に球さばきは著しく向上した。だが依然として、全体的にヘナッとしている。オランダ生まれが増えたとはいえ身体が強くない。球際も強くない。かつてのヴァヒド・ハリルホジッチ監督は、ことあるごとに日本人選手のプレーの強度不足を嘆いたが、今回、筆者の目にはインドネシアがそう見えた。

 オーストラリアは逆に身体が強い。大きくてしっかりしているので、体を張ったプレーができる。ボールさばきも及第点だ。先日の試合の終了間際、瀬古歩夢に競り勝ち、アジズ・ベヒッチの決勝弾を演出したライリー・マクグリーの折り返しなどは、インドネシアには真似できそうもない力強いプレーになる。

 日本とインドネシアはホーム&アウェー2試合の合計スコア10−0だ。しかし、それでもインドネシアはプレーオフに進出する。ワールドカップ本大会出場の可能性を残している。アジア予選のレベルの低さにあらためて驚愕する。

【スタメン級が3人になったことでスムーズに】

 一方で、これはある程度予想されていたことでもある。予選突破確率90パーセント以上。この設定のなかで、森保監督は8戦目までテストらしいテストを怠った。判で押したようなメンバーで戦い、世界最速で本大会出場を決めた。大きな収穫を得たとは言いがたい。

 オーストラリア戦のピッチに立った11人のなかで、レギュラー級は鎌田大地と町田浩樹のふたりのみ。その他は新顔とそれに準じるこれまで出場機会に恵まれなかった選手で固められた。

 変えすぎだった。ハマるか否か。パーツになり得るかどうかをチェックすることが代表チームのテストだとすれば、これはベンチのミスになる。テストにならない上に、そもそもテストとしてアンフェアだ。これでは継続性が生まれない。

 佐野海舟と藤田譲瑠チマが組んだ中盤がいい例だ。オーストラリアに対し、1年数カ月ぶりに招集された代表キャップ2回の前者と、E−1東アジア選手権でしかプレー経験のない後者が中盤を組めば、うまくいかないことは見えていた。新人と組ませるべきはベテランないしは中堅だ。佐野海舟を出すなら傍らに遠藤航を据えなければテストにならない。

 また、パスコースを意味する3角形のなかで、経験者がふたりを占めないと、円滑なコンビネーションは期待できない。そうした設定になかった前回は、テストとして問題があると言わざるを得ない。

 上記の2点はオーストラリア戦後の原稿で記したが、インドネシア戦では一転、解消されていた。

 佐野海舟の横には、こちらの指摘どおり遠藤が座った。久方ぶりに1トップに座った町野修斗の脇には、鎌田大地(左)、久保建英(右)が2シャドーとして構えた。ウイングバック(WB)として大外で構える三戸舜介(左)、森下龍矢(右)にとっても、鎌田、久保が比較的近くにいることで、スムーズに試合に入っていけたに違いない。

 中盤より前に限ればオーストラリア戦ではひとり(鎌田)だったスタメン級は、インドネシア戦では3人(鎌田、久保、遠藤)に増えた。三戸、森下、町野、佐野が及第点のプレーができた理由だ。交代で入った選手たちも空回りすることなくスムーズに試合に入ることができた。

【森保采配への批判は消えたが......】

 問題を挙げるとすればフル出場した最終ラインの3人だ。鈴木淳之介、瀬古、高井幸大は総じていまひとつだった。鈴木は新人で高井も似たようなものだ。瀬古も選ばれたり外れたりを繰り返してきた選手である。インドネシアだったからいいようなものの、相手がオーストラリアならば、決定的シーンを作られていた可能性がある。離脱者(町田、渡辺剛)が出たためやむを得ない編成だったとはいえ、最終ラインの人材は、前線に比べて、好素材が目白押しという感じではない。

 突如、多くの人材をテストしたオーストラリア戦、インドネシア戦を見ていると、徐々に変えることができない森保采配の"貧しさ"をあらためて痛感させられる。

「代表チームに負けていい試合はひとつもない」と森保監督は繰り返すが、実際には負けていい試合はある。勝ちすぎなくていい試合もある。バーレーン、中国、インドネシアを相手に6試合で得点27、失点1。ろくにテストもせずに収めたこの成績を決して褒めるわけにはいかない。怖がり、小心者の采配。優しく言ってもバランス感覚に乏しい監督の采配、となる。

 だが、会見場の空気がそうであったように、このインドネシア戦の勝利で、森保采配を否定的な目で見る人は減るだろう。オーストラリア戦からわずか1試合で、悲観的なムードは雲散霧消した。

 会見場のひな壇に座る監督は実際、ひと安心している様子だった。勝ちたくなる理由をそこに見ることができる。勝利を重ねている限り、批判は出ない。だが、その安心感こそが真の強化の妨げになる。

 ワールドカップ本大会という代表チームにとっての本番から逆算して眺めたとき、足枷になる。世界最速。圧倒的な成績でアジア予選を突破しても、筆者には森保ジャパンが理想的なステップを踏んでいるようには見えないのである。

このニュースに関するつぶやき

  • インドネシアの戦術が不完全だった。ボールホルダーに厳しくいかなかった。三戸のアシスト時もそう。ゴールエリアでのファールを控えなければ次のステージで不利なので、結果として緩い守備になった。
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