大川原化工機(横浜市)を巡る冤罪(えんざい)事件で、警察と検察は11日、違法捜査と認定された東京高裁判決を受け入れ、捜査の問題点を検証する方針を示した。これとは対照的に、事件で保釈が認められないまま元顧問が病死し、「人質司法」の批判の矛先となった裁判所からは、当時の経緯を検証する動きはない。
大川原正明社長ら3人の弁護人は起訴後、保釈請求を繰り返した。しかし、検察側は3人が起訴内容を否認していることから「罪証を隠滅する恐れがある」と反対し、東京地裁もこの主張を追認した。社長と元取締役の勾留は約11カ月に上り、元顧問の相嶋静夫さんは胃がんの発覚後も保釈が認められずに被告の立場のまま72歳で亡くなった。
一連の保釈判断に対し、罪を認めなければ簡単に保釈されない「人質司法」への批判が高まった。一方で、憲法76条は外部の干渉から独立して自由で公平な判断を実現するため「裁判官の独立」を保障している。個別の保釈判断の是非に組織として踏み込めば憲法違反となる恐れがあり、最高裁は一貫して検証に否定的だ。
ただし、内部からは「複雑な事件では、保釈に反対する検察官の主張を受け入れてしまう面はあった」(ベテラン裁判官)と自戒する声も上がる。
山崎学・元東京高裁部総括判事は「保釈が認められないまま、一人が亡くなった冤罪事件を教訓とすべきだ」と指摘。「被告の身体拘束は最小限にすべきだという考えを出発点に、罪証隠滅の恐れが現実的にどれだけあるのかをしっかり判断していかなければならない」と話した。【巽賢司】
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