
もともとは都会で選ばれることが多かった家族葬ですが、新型コロナウイルスの流行をきっかけに、地方でも広まりました。今では、全国的にも多くの人が家族葬を選ぶようになっています。
今回は、家族葬を選ぶ人の割合や、かかる費用の目安などを分かりやすくご紹介します。
家族葬をどのくらいの人が選んでいるの?
家族葬は、2000年代のはじめ頃から注目されるようになった、比較的新しいお葬式のスタイルです。最初は東京や大阪などの大都市や、その周辺の地域で広まりましたが、現在では日本全国で多くの人に選ばれるようになっています。では、なぜ家族葬を選ぶ人が増えているのでしょうか?理由の1つは、高齢化の進行です。人の寿命がのびたことで、亡くなる方の年齢も高くなっています。そのため、故人のまわりの友人や知人も高齢になっており、体力的な理由などでお葬式に参列できないことが増えています。
また、定年退職後は仕事関係のつながりが少なくなることや、ご近所づきあいや親族との関係が以前ほど密ではなくなっていることも、お葬式をコンパクトにする理由になっています。こうした背景から、「大勢を招かず、家族だけで静かに見送りたい」という希望が増えてきたのです。
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2024年に株式会社鎌倉新書が行った「第6回お葬式に関する全国調査」では、実際に行ったお葬式の種類について、次のような結果が出ています。
【行った葬儀の種類】
・第1位:家族葬(50.0%)
・第2位:一般葬(30.1%)
・第3位:1日葬(10.2%)
・第4位:直葬・火葬式(9.6%)
この調査からも、いまや2人に1人が家族葬を選んでいるということが分かります。
大勢が参列する「一般葬」と、家族や親しい人だけで行う「家族葬」では、大きくちがう点が2つあります。それは、「だれが参列するのか」と「お葬式の雰囲気」です。
一般葬では、家族や親せきのほかに、会社の人、ご近所の方、友人など、多くの人が参列します。そのため、お葬式は決まった流れにそって進められることが多く、準備や当日の対応にも時間や手間がかかります。
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参列者が少ないぶん、準備の負担も少なく、落ち着いた気持ちでお別れができることが、家族葬の大きな魅力といえるでしょう。
「にぎやかに送るよりも、心のこもったお別れがしたい」そんな思いから、家族葬を選ぶ人が増えているのかもしれません。
家族葬にかかる平均費用は「105万7000円」
多くの人が選ぶようになった「家族葬」。費用はどのくらいかかるのでしょうか?同調査によると、家族葬の平均費用は「105万7000円」。これは、一般的な「一般葬(平均161万3000円)」よりもかかる費用が6〜7割に抑えられます。
葬儀費用は、固定費である「基本料金(式場使用料や火葬費など)」、変動費である「飲食費(通夜ぶるまいなど)」「返礼品費(香典返しなど)」の3つで構成されており、参列者が多いほど変動費が増えて高額になります。
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・一般葬(参列者多数):161万3000円
・一日葬(通夜を行わない):87万5000円
・直葬・火葬式(火葬のみ):42万8000円
これより、葬儀の規模が小さいほど費用も少なくなる傾向が見て取れます。
自分たちに合ったお葬式のカタチを選ぶ時代へ
家族葬は、近年とても多くの人に選ばれているお葬式のスタイルです。少人数で静かにお別れができること、そして準備や費用の負担が比較的少ないことが、多くの方にとって安心につながっているようです。
費用面では、一般葬に比べておさえやすい傾向がありますが、「安いから選ぶ」のではなく、「どんなふうに故人を見送りたいか」「どんなお葬式が自分たちに合っているか」をしっかり考えて選ぶことが大切です。
家族葬を選ぶときは、いくつかの葬儀社から説明や見積もりを取り、内容や金額を比較しておくと安心です。料金だけで判断せず、含まれているサービスやサポート内容にも注目しましょう。
大切なのは、「無理のない形で、心をこめてお別れができること」。これからは、そうしたお葬式のカタチが、ますます求められていく時代といえるでしょう。
舟本 美子プロフィール
会計事務所、保険代理店や外資系の保険会社で営業職として勤務後、FPとして独立。人と比較しない自分に合ったお金との付き合い方を発信。3匹の保護猫と暮らす。All About おひとりさまのお金・ペットのお金ガイド。(文:舟本 美子(ファイナンシャルプランナー))