オリックス・麦谷祐介を支える恩師の言葉 「野球はどこかで賭けなければいけない。引いたらダメだ」

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2025年06月20日 10:10  webスポルティーバ

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オリックス・麦谷祐介インタビュー(後編)

 オリックスのドラフト1位ルーキー・麦谷祐介(富士大)。開幕直後から勝負強い働きぶりと、走攻守にわたる全力プレーでチームに新風を吹き込んだ。

 6月に左手薬指の骨折で登録抹消されたものの、今後チームの顔になる可能性を秘めている。走攻守に能力が高いだけでなく、強烈な野心を隠さないキャラクターも人を惹きつける。故障離脱前の直撃インタビューでは、麦谷はプロ入り後の課題や今後の希望について語っていた。

前編:オリックスのドラ1ルーキー・麦谷祐介が貫く自分流の戦い方はこちら>>

【バッティングは試行錯誤】

── 打撃フォームは少し変わりましたか? 構えもグリップ位置が体の近くになっています。

麦谷 ここまではプロのストレートに差されているので、試行錯誤しています。フォームは少しコンパクトにしました。バッティング練習で感覚を得て、試合でアウトプットして、それを突き詰めて再現性を高めていこうとしています。ただ、正直に言って、まだしっくりとくるものができていません。自信がないわけじゃないんですけど、変えていかなくちゃいけないところがあるのは確かです。

── 麦谷選手は大学時代から、守備・走塁に比べて打撃への課題意識を語っていました。大学時代から積み上げてきたものを生かせる範囲なのか、それとも根本的に変える必要があるのか、どっちでしょうか。

麦谷 根本は変えないようにしています。ただ、迷っている部分もあって。もう1回、自分自身を見つめ直しているところです。いずれにしても、バッティングに関しては、自分のなかで天と地ほどの差を感じています。まだ1年目ですし、いろんな経験をさせてもらっているので、すぐに結果は出ないと思うんですけど、我慢しながらやっていきたいですね。

── 一方で、走塁面は健闘しています。(6月19日現在)8盗塁はチームトップです。

麦谷 自信を持ってスタートを切れています。足は持ち味のひとつでもありますから。

── あまり言われてきていませんが、大学4年秋に記録した10試合15盗塁はとてつもない記録です。春は膝を痛めた影響もあって、0盗塁でした。何かつかんだものがあったのでしょうか。

麦谷 特別なことはないですけど、やっぱり気持ちの持ち方じゃないですか。富士大の安田(慎太郎)監督からは「野球はどこかで賭けなければいけない。引いたらダメだ」というようなことを言われていました。4年秋のシーズンは、自信を持ってスタートを切れていましたね。

── 大学時代から、大観衆の前でプレーすると意気に感じていましたね。「球場の全員がオレのことを見てるだろと思ってプレーしています」と語っていました。

麦谷 今は毎日試合にお客さんが来てくれて、大勢の前で野球ができるので楽しくやらせてもらっています。それこそ「全員がオレのこと見てる」じゃないですけど(笑)。僕がチャンスで打てばお客さんに喜んでもらえますし、「楽しませたい」という思いは常にあります。

【高卒の選手が何年目なのかわからなくなる】

── 印象的な試合でのプレーについてお聞きします。4月15日の西武戦では、麦谷選手はプロ初の1番打者で先発出場。1打席目に安打と盗塁、失策が絡んで無死三塁とチャンスメークし、太田椋選手の内野ゴロの間に生還しました。さらに8回裏にはファウルで粘って12球を投げさせた末に、四球。ディアス選手の適時打で2点目のホームを踏みました。麦谷選手の2得点もあり、チームは2対0と勝利しています。

麦谷 西武は高橋光成さんが先発だった試合ですよね。いいピッチャーなので、フォアボールでも何でもいいから塁に出ることを考えていました。初めての1番打者起用で、「自分にできることは何か?」といったら、ホームに還ってくることしかない。チームの勝利に貢献できたので、自信になりました。

── ロッテ戦では印象的な活躍が多く、4月29日にはプロ初のサヨナラ適時打を打っています。さらに5月28日にも中森俊介投手から決勝適時打を放ちました。中森投手は同学年で、明石商の頃から甲子園のスター投手でした。意識するものはあったのではないですか?

麦谷 それが、あんまり知らなかったんですよ。あとになって(明石商の同期である)来田(涼斗)から聞いて、「あ、甲子園で投げていたのって、この子だったんだ」とわかりました。

── 大学時代にプロで活躍している同世代への複雑な思いを語っていたので、てっきり敵愾(てきがい)心を燃やしていたのかと思っていました。

麦谷 プロに入ると、選手がたくさんいるので、高卒の選手が何年目なのかわからなくなるんです(笑)。最近、ロッテの山本大斗が同期ということも知りました。ずっと年上だと思っていましたから(笑)。

── 来田選手の名前が出ましたが、同年齢で右投左打の外野手という共通点があります。選手としてのタイプは違いますが、一軍定着を狙ううえでライバルになると思います。来田選手の能力の高さを感じることもあるのではないですか?

麦谷 来田は、バッティングはすごいし、フィジカルも自分とは全然違うと感じます。ただ、ライバルという意識はないんです。まずは自分にできることをやっているので。誰かと比べて勝つというより、今は自分のことを見つめて、高めていかないと。そうしないと、一軍にはいられないのかなと感じます。

【野球が仕事になっているんだなと実感】

── 大学4年時にインタビューした際、麦谷選手は「自分もプロに行けたら野球がどれくらい楽しくなるか知りたい」と語っていました。今まさにプロ野球選手になってみて、野球はさらに楽しくなっていますか?

麦谷 そう言っていましたね(笑)。でも、やっぱり楽しいです。ひとつの夢がかなって、ここに立てているので、すごく光栄です。家族、友人、ファンの方々が喜んでくれたり、時には悔しさを分かち合ったり。本当に野球が仕事になっているんだなと実感します。息の長い選手になりたいですし、もっとチームの中心に立っていきたいです。

── これから中心選手になっていくためには、どんな部分が足りないと感じますか?

麦谷 やっぱりフィジカルです。12球団のいろんな選手を見てきて、自分とは体の分厚さが全然違うと感じました。技術ももちろん足りないですけど、体はあと5〜6キロは増やしていきたいです。いきなり大きくなるわけではないので、コツコツとやっていきます。

── これからの進化を楽しみにしています。

麦谷 ぜひ、また取材に来てください。よろしくお願いします!

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 先述のとおり、麦谷はこのインタビュー後、試合中に負傷して戦線離脱を余儀なくされた。だが、麦谷祐介という野球選手の将来を考えると、この治療期間すらも必要な時間なのではないかと思えてくる。

 明確な課題意識を持った野心家は、きっとひと回り大きくなって一軍の世界に戻ってくるはずだ。


麦谷祐介(むぎたに・ゆうすけ)/2002年7月27日生まれ、宮城県出身。大崎中央高から富士大に進み、1年春からベンチ入り。4年秋のリーグ戦では本塁打王、打点王、盗塁王のタイトルを獲得し、優秀選手賞、ベストナインにも選ばれた。24年のドラフトでオリックスから1位指名され入団。プロ1年目の今季、開幕一軍を果たした

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