似たアカウント名の別人と勘違いされ…SNSで罵倒され、住所まで晒された! 眠れぬ夜が続く被害者が法的にとれる対応とは【弁護士が解説】

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2025年06月21日 19:00  まいどなニュース

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知らない人がいきなり私の個人情報を晒し始めた… ※画像はイメージです(Peak River/stock.adobe.com)

40代半ばのAさんは、普段から穏やかな性格で同僚や友人とも良好な関係を築いていました。リアルの関係だけでなくSNSを通じた交流も深めており、友人たちの投稿を眺めては「いいね」を押すなどして楽しんでいました。

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ある日、いつものようにAさんがSNSを見ていると、自分を名指しで批判してくる人と遭遇します。彼はAさんと似たアカウント名の別人と勘違いして、Aさんに対する罵倒を繰り返してきたのです。Aさんが別人であることを伝えても、相手は投稿を止めません。ついにはAさんの住所まで特定し、SNS上に公開してきたのです。

このままでは自宅に相手がくる可能性もあり、Aさんは恐怖を感じて夜も安心して眠れません。このような晒し行為は法的に問題ないのでしょうか。まこと法律事務所の北村真一さんに聞きました。

個人情報の晒し行為は法的に問題あり

ーSNSでの個人情報の晒し行為は法的に問題がありますか

SNSで他人の住所や勤務先などの個人情報を本人の許可なく晒す行為は、法的に大きな問題となります。個人の私生活上の情報を無断で公開する行為は、プライバシー権の侵害にあたります。プライバシー侵害が認められると、投稿の削除請求や損害賠償請求(慰謝料請求)が可能です。

晒された情報が、その人の社会的評価を下げるような内容である場合、名誉毀損罪に問われる可能性があります。また「お前の家に行ってやる」など、相手を怖がらせるようなメッセージを伴う場合は、脅迫罪に問われる可能性もあります。

ー過去にはどのような判例がありますか

原告が知人と撮影しX(旧Twitter)上にアップしていた写真を、無断で複製してアップした被告に対して、著作権侵害およびプライバシー侵害で損害賠償請求された事例があります。裁判では損害賠償として約47万円の支払いが命じられ、そのうちプライバシー侵害に対する損害は30万円と認定されました。

このように個人情報の晒し行為だけでは、刑事事件とはなりません。そのため、何かしら法的な責任を問うためには相手を特定し、民事事件として訴える必要が生じます。

ただし名誉毀損罪や脅迫罪に相当する内容も投稿されていれば、刑事事件として扱われ、刑事罰が与えられたケースも存在します。

ーどの程度の情報であれば問題になるのでしょうか

明確な基準はありませんが、プライバシー侵害が成立するかどうかの判断基準として、以下の3つの要件が判例で示されています。

・私生活上の事実または事実らしく受け取られるおそれがある事柄であること
・一般的な感受性を基準にして公開して欲しくない内容であること
・一般の人々にまだ知られていない事柄であること

すでに公開されている情報や、公益性のある情報(例えば、政治家の公的な活動に関する情報など)はこの限りではありません。

ー被害者になった場合はどうしたらいいでしょうか

ご自身の情報が晒されてしまった場合は、冷静に、そして迅速に行動することが重要です。まず、晒されている投稿のスクリーンショットを撮るなどして、証拠を保全してください。次に、SNSの運営者やサイト管理者に対し、利用規約違反やプライバシー侵害を理由に削除を依頼します。

もし、身の危険を感じるような脅迫的な書き込みがある場合は、すぐに警察に相談してください。投稿の削除請求や、加害者を特定して損害賠償を請求したい場合は、IT問題に詳しい弁護士などの専門家に相談することをお勧めします。

◆北村真一(きたむら・しんいち)弁護士 「きたべん」の愛称で大阪府茨木市で知らない人がいないといわれる大人気ローカル弁護士。猫探しからM&Aまで幅広く取り扱う。

(まいどなニュース特約・長澤 芳子)

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