広島・中村奨成、プロ8年目の覚悟 「自分がもう優先される立場にないことはわかっている」

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2025年06月24日 07:20  webスポルティーバ

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広島・中村奨成インタビュー(後編)

前編:中村奨成が8年目でたどり着いた新境地はこちら>>

 覚悟を決めた8年目のシーズン、広島・中村奨成の変化は単なる数字の上昇だけにとどまらない。かつては"一軍と二軍を行き来する男"と見られながらも、自らを見つめ直し、打撃技術と精神面の両方で大きく成長。フォーム改良、メンタルの立て直し、そしてベテランからの学び──。ライバルとの競争が激化する外野のポジション争いのなかで、中村の「ラストチャンス」に懸ける思いとは。

【悪い感覚は頭のなかから削除したい】

── 入団時から打撃技術は高い評価を受けていましたが、一方で精神面を課題とされてきました。

中村 昨年末に鈴木(清明)球団本部長と直接、契約更改の話をしていただいて「おまえのポテンシャルにもう1年かけてみる」という言葉をいただきました。今年はもう、打てなかったら先はないと、"ラストイヤー"というくらいの気持ちでいます。昨年まで7年やって、これだけの成績しか残せなかったので、一軍でもらえるチャンスも減ってくることは覚悟しながら臨んでいます。

── 好結果を残すなか、新人の佐々木泰選手の昇格によって出番が減ったように、新しい戦力に目が向くのはプロ野球の世界では常。そのなかで勝ち抜いていかないといけない世界だと思います。

中村 僕自身、3年目で初めて一軍に上げてもらって、4年目にはたくさん試合に使ってもらった経験があります。あの時は、若い選手から優先的に使ってもらったけど、僕はそこで結果を残せなかった......。これだけの年数がたった今でも、使ってもらっていることはありがたいですし、自分がもう優先される立場にないことはわかっています。

── あの時、チャンスをつかみきれなかった自分自身への感情は何かありますか?

中村 ないですね。たまに「あのときやっておけば......」という後悔はありますけど、今から変わっていければと思っています。

── 最近は、一時期よりも出場機会が限られるようになりました。そのなかで意識していることはありますか?

中村 僕は"感覚派"なので、試合でのいい感覚ってすごく覚えているんですよ。「あの球をこう打ったな」とか、「あの軌道にこう出せた」とかが残っているので、練習時間だけじゃなく、自主練習の時間も使って振り込んで感覚を思い出す作業を続けています。

── 打席の記憶を鮮明に残せるのは昔からですか?

中村 これまでは悪い打席が多かったので、思い返したくない打席ばかりでしたね(笑)。でも、その感覚はやっぱり残っていました。打席の記憶があるから思い出すと、その感覚も思い出せてしまう。でも、今年はいい感覚が増えているので、その感覚を自分のなかにすり込ませるようにしています。

── 悪い感覚はなるべく消し去りたい?

中村 頭のなかから削除したいです。何もしなかったら悪い感覚が残ってしまうので、いい感覚で打てた打撃の映像を見て上書きするようにしています。「こういうふうに打っていたな」と、自分に言い聞かせるように。

【プラスに考えられるように】

── 今季、昨季までの自分になったものがあるとすると、それは何ですか?

中村 "継続力"ですね。結果が出ていないと、やっぱり腹が立つじゃないですか。打ちたいし、「なんで打てないんだ」という思いもある。今年は短期間でも打てた時期があったことも大きかったですけど、考え方も変えたんです。結果が出なくても、納得できる打撃内容とか自分のなかでプラスになる方向へ持っていくようにしています。

 昨季までは「打てなかったら二軍だな」とか、どうしてもすべてがマイナス、マイナスに考えてしまっていました。今もそういった感情もゼロではありませんが、そこに向いてしまうと、これまでと同じになってしまうので、グッとこらえてプラスに考えられるようにとしています。そうすることで"継続力"につながっているのかなと思っています。

── 昨季までは強さを見せようとしていたように感じられましたが、今季は弱い自分も受け入れているように映ります。

中村 周りに流されるのは簡単ですが、やるのは自分です。自分がやらないといけない。(今年1月に2年連続で行なった)護摩行も何か変わりたいと思って、アツ(會澤翼)さん、堂林(翔太)さんにお願いして参加させてもらった。我慢して、自分でコントロールできるようになることも大事だなと感じています。

── 先輩の存在は?

中村 アツさんからの視線はすごく感じているので、勝手に気にかけてもらっているんだなと思っています。アツさんもそうですし、経験ある秋山(翔吾)さんたちと話すことができるのは、自分にとって安心材料になっていることもあると思っています。

── 秋山選手とはどういった話をしているのですか?

中村 センターの守備や打席での心構えなど、いろいろさせてもらっています。プロで長く、ずっと試合に出てこられたなかで、いろんなことを経験されている。これまでは自分のことで精一杯だったんですけど、今年は周りの先輩方ともいろんな話をさせてもらっています。

── 打撃成績のほとんどでキャリアハイを更新していますが、今後さらなる成長が期待されています。

中村 最低でも1年間、一軍に帯同しないと話にならない。そのうえで、すべての面で今までのものを越えていかないことには先がない。もちろん今年よくても、来年ダメだったら意味がないんですが、まずは今年1年で自分の打撃スタイルやポジションを確立したい。「こいつ、これだけできるんだな」という印象を与えたいです。今年は、自分が結果を出し続けないといけないシーズンだと思っています。

── 広島では外野の激しい争いが続いています。チームの優勝争いとともに、チーム内の競争も続いていきます。

中村 もちろん、それは覚悟しています。そこでレギュラーを獲っていかないといけない。まずは限定されたところから結果を出して、可能性を広げていきたいと思います。


中村奨成(なかむら・しょうせい)/1999年6月6日生まれ。広島県出身。広陵高校時代、3年夏の甲子園で1大会6本塁打の新記録を樹立。2017年のドラフトで広島から1位指名を受け入団。「打てる捕手」として大きな期待を受けるも、なかなか結果を残せず、24年に捕手から外野手登録となり、背番号も22から96に変更となった。25年は勝負強い打撃でチームの勝利に貢献している

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