
移動手段が乏しい高齢者を中心に、眼鏡が破損したり度数が合わなくなったりした眼鏡の修理に頭を悩ませる人が少なくない。そんな中、「走る眼鏡店」として約20年にわたり島根県東部の2市を奔走している男性がいる。島根県松江市在住の平野武志さん(63)だ。
「調子はどうですか?」。自ら改造し、視力検査の機器や新品のフレーム、細かい部品などを積み込んだ商用の大型バンの車内で、なじみ客に優しく尋ねる。レンズを削る作業以外はほとんどの作業が可能。「眼鏡で困っていることがあればできる限り解決してあげたい」と毎日ハンドルを握る。
1980年代中ごろに「めがねのクラモト」(本社・山口県下関市、現在廃業)に就職。当時、同社は視力の検査機器などを積み込んだマイクロバスを松江市内で8台走らせ、訪問販売事業を展開していた。「眼鏡屋の方から目の悪い人のもとを訪ねていく逆転の発想。面白そうな仕事だ」と引かれた。
他企業での勤務も経て、独立したのは2007年。利用者は50〜90代と幅広く、40年来の付き合いになる常連も。需要は高く、個人宅や学校を巡りながら多い時で1日約40人と向き合う。移動店の最大の利点を「実際にどんな環境で使っているか目にすることができ、使っている人の気持ちになれる」と強調する。
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島根県内で高齢化が年々進行し、個人経営の眼鏡店が減り続ける中、十分にメンテナンスができない高齢者は増えているという。家々を巡り、補修や洗浄などきめ細かいサービスを届け続けている。「目は生活に直結する本当に大事な器官。なかなか自力で店に行けないからと不具合を我慢してしまう人もいる。こちらから出向くことで、より良い状態で眼鏡を使ってもらいたい」と話した。
(まいどなニュース/山陰中央新報)