トランプ米政権の関税政策が、日本企業のIT投資や戦略に大きな見直しを迫っている。IT調査会社のアイ・ティ・アール(東京都新宿区)が、国内企業のIT戦略や実務に携わる課長職以上を対象に実施した「米国の関税政策にかかるIT動向調査」で明らかになった。
●自動車業界で業績悪化の懸念が顕著に
トランプ米政権の関税政策が、自社の業績にどのような影響を及ぼすのか。「大幅に悪化すると思う」「やや悪化すると思う」と回答した企業は合わせて71%だった。特に自動車製造業では影響の大きさを重く見ており、業績悪化を懸念する企業は90%に達している。
トランプ関税を受けて、企業のIT投資計画にも見直しの動きが広がっている。2025年度のIT予算については、見直しを「すでに実施済み」「検討中である」、または「今後見直す可能性がある」とした企業が44%に上った。
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2026年度のIT予算については、見直しの意向の割合が58%まで拡大しており、トランプ関税の影響は今後さらに広がることが予想される。
IT戦略に関わる中期計画についても、見直しの意向を示す企業は58%に達した。トランプ関税の影響は短期的なIT投資にとどまらず、中長期的なIT戦略にも波及しているようだ。
トランプ関税に伴い、企業はハードウェア、ソフトウェア、クラウドサービスなどの各IT支出がどのように変動すると見込んでいるのか。「サーバ/ストレージ/ネットワーク機器」「PC」「モバイルデバイス」といったハードウェアへの支出は「減額する」と答えた企業が「増額する」と答えた企業を上回った。
一方で、「IaaS/PaaS」「SaaS」といったクラウドサービスへの支出は「増額する」と答えた企業の割合の方が多く、IT投資の重点がハードウェアからクラウドサービス利用へとシフトしつつある様子がうかがえる。
IT人材の採用コストについては、全項目の中で「増額する」と答えた企業の割合が最も多く、減額を大きく上回った。IT製品やクラウドサービスのコスト見通しが不透明な中でも、企業はIT人材への投資を積極的に進めていて、IT戦略の推進に力を入れようとする姿勢が見られる。
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トランプ関税によりIT戦略上の優先度が高まる取り組みについては、「コスト管理の厳格化」(28%)が最も多かった。次いで「国内ITベンダーとの取引強化」と「海外製品・サービスの調達コスト上昇への対応」(いずれも25%)が同率で並んだ。
関税によるコスト増への対応として、企業ではITコストの削減や調達先を国内ベンダーへの切り替えが加速すると見込まれる。
調査は、国内企業でIT戦略の策定やIT実務に携わる課長以上の役職者1271人を対象にインターネットで実施した。調査期間は、4月22から24日まで。
(小松恋、アイティメディア今野大一)
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