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2025年06月25日 16:10 ITmedia PC USER
PFUは6月24日、ScanSnapの上位モデル「ScanSnap iX2500」(以下、iX2500)を発表、販売を開始した。ホワイトとブラックのカラーバリエーションがあり、PFU ダイレクト価格で5万9400円となっている。
東京都内で行われた新製品発表会では、タッチアンドトライコーナーが設けられ、新機能のデモなども行われていた。
製品開発の背景なども語られた、本イベントの模様をリポートする。
●新世代のSoC「iiGA」を搭載したScanSnap iX2500の概要
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iX2500は、「ScanSnap iX1600」の後継機種となるフラッグシップモデルのドキュメントスキャナーだ。
チップに独自開発したSoC「iiGA」(イーガ)を搭載したことで、A4カラー両面のスキャン速度は毎分50枚(前モデルのiX1600では45枚)となり、原稿傾き検知、給紙性能や速度の改善、約2.9秒という短時間での起動、スキャンデータの高画質化、タッチディスプレイの操作性アップにつながった。
給紙台へのセット可能枚数は最大100枚になり(iX1600では50枚)、タッチディスプレイは4.3型から5型へと大型化し、さらに感圧式から静電容量式タッチパネルになったことで、スマートフォンのようなスムーズな操作性を実現したという。スキャンボタンは、タッチパネルではなく、物理ボタンを復活させた。
無線LANもWi-Fi 6(WPA3/TLS 1.3対応)となり(iX1600はWi-Fi 5)、セキュリティも確保されている。Bluetooth機能を搭載したので、スマートフォンとの接続もスマートに行える。
PCとの接続に使うスキャナー本体のコネクターがUSB Type-BからUSB Type-Cに変更になったのも地味にうれしいポイントだ。なお、規格はUSB 3.2 Gen 1 x1と変わらない。
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アプリ面でも、さまざまな改良が加えられている。
例えば、前モデルのiX1600では、読み取り解像度や保存場所などのプロファイルを本体に保存していたため、スキャナーのリプレース時にはイチから設定し直す必要があったし、コワーキングスペースなどで不特定多数の人が使う場所にあるScanSnapでは、ScanSnap Cloudの利用ができなかった。
しかしiX2500では「My ScanSnap」機能により、PCやスマートフォン側にスキャナーの設定を保存しておき、いずれかのデバイスをiX2500に接続するだけで、お気に入りの設定を反映できる。
コワーキングスペースやオフィス、公共施設などにある他人のScanSnapでも、自分のScanSnapのように使えるようになるわけだ。
なお、My ScanSnap機能は、現時点でPCにのみ対応している。スマートフォンをiX2500にかざして接続する機能は、今後のアップデートで提供される予定だ。
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●PC版/モバイル版ScanSnap Homeアプリの改良点
また、ScanSnap HomeアプリのPC版「クイックメニュー」が刷新された。スキャンしてから保存先や連絡先を選択できるようになり、BoxやDropbox、Googleドライブといったクラウドサービスや各種会計ソフトなどの他、Microsoft Teams/SharePoint/OneNote/Notion/iCloudとの連携機能が追加された。
スキャンしたデータをTeamsで会話中の人に即座に送りたい、というような場合に便利だろう。
なお、クイックメニューではドラッグ&ドロップでデータを連携先に追加する。担当者によれば、これは通常のフォルダー操作(エクスプローラーまたはFinder)と同様のことをアプリ上で再現しているだけなので、連携先を誤って選択した、あるいは気が変わったなどの場合は、正しい連携先を開いてドラッグ&ドロップすれば良いとのことであった。
モバイル版ScanSnap Homeでは、スマートフォンからの操作でも、検索可能なPDFとしてスキャンできるようになった。これにより、スキャンした名刺データから直接電話をかけられる。
また、PC版同様、複数のプロファイルを作成して保存できるようになり、スキャンデータの活用先を増やした。
今後予定されているのは、PC版/モバイル版ともにScanSnap Home間でスキャンデータを同期する「Date Sync」機能の搭載だ。実装されれば、オフィスや自宅などでスキャンしたデータをPCでもスマートフォンでも、手元にある任意のデバイスで閲覧できるようになる。
本体のみでNASへ保存すること、向き補正や縦スジ軽減機能も予定されている。
「時・場所・デバイス、自由自在」をコンセプトに開発されているだけあり、好きな時に好きな場所で、どのデバイス(手持ちのPCやスマホ、自他のScanSnap)でも紙資料をスキャンして持ち歩けるような製品に仕上がっている。
●写真で見るiX2500
ブースでは、今後実装予定のスマートフォンをかざしてスキャン機能のデモが行われていた。「開発途中なので、提供されるものは画面や操作が変わっている可能性がある」としながらも、高速でスムーズな操作感を確認できた。
●開発の背景にある「AI」
発表会に登壇したPFU 代表取締役 社長執行役員 平原英治氏は、PFUが「現場でリアルタイムに課題解決するためのエッジプロダクトとソリューションに強みを持つ会社だ」と述べてから、「現場で発生する紙をいかに簡単にデジタル化するか、という課題から生まれたのがScanSnapの歴史だ」とScanSnap誕生の背景について説明した。
「目指す姿は現実とデジタルの垣根をなくし、リアルと1つにつながるというもので、その第一歩がiX2500だ。これからも手軽に情報を入手できる社会の実現を目指していきたい」と抱負を語った。
iX2500の開発背景を語ったのはPFU 取締役 常務執行役員 宮内康範氏だ。「生成AIの台頭は目覚ましい」と述べた後、「とはいえ、AIの進化に不可欠な良質な学習データが2028年、早ければ2026年には枯渇するといわれている。AIが自らの成長を止めてしまうという懸念が持たれている」と語る。
PFUが着目したのは、良質な学習データの宝庫になりえる紙資料だ。「iX2500は、画像品質やスキャンスピードの向上、場所やデバイスを問わないハイブリッドワークスタイルに対応するような技術を備え、AI時代のニーズにかなう進化を遂げている」と宮内氏は語る。
「紙資料をスキャンしてOCRをかけ、テキストとして読めるようにするだけではなく、AIが学習に活用できる構造化データに変換していく必要がある。紙にある情報をAIに渡せるようにする。
そのためにドキュメントイメージング事業の方向を転換させる必要がある。ユーザーとAI、そしてPFUが共存共栄する社会を作り上げるよう進化するその形態の第一歩となる製品がiX2500なのだ」(宮内氏)
PFU ドキュメントイメージング事業本部 販売推進統括部 南萌々夏氏は、「今後はAIのパーソナライズ化が加速する」と前置きし、「それには身の回りのリアルな情報をデジタル化する必要があるが、紙にある情報をAIが理解させるのはハードルが高い」と現状の課題を取り上げた。
「iX2500はその架け橋になり得る存在だ。会社に眠っている紙資料をデジタル化することにより、これまで時間がかかっていた提案書や見積書の作成などが短時間で行えるようになる。プライベートでも、子どものプリント類や処方箋などをデジタル化しておけば、持ち物リストの自動作成、常備薬のリマインドなどへと活用できる。
生活動線上にScanSnapがあることで、アナログとデジタルの融合をいつどこでも行えて情報の価値を最大限に引き出し、快適で創造的な日常を送れる世界線を目指していきたい」(南氏)
PFUでは、PCまたは今後実装予定のスマホ連携によるMy ScanSnap機能の真価を発揮させるべく、「ScanSnap Spot協力パートナー」の募集をスタートさせた。これは、コワーキングスペースや商業施設、カフェ、学校、公共施設など紙をデジタル化したいと思うタイミングでScanSnapがそこにあるという世界を目指すものだ。
募集自体はまだ先だが、ウェイティングフォームが開設されており、このタイミングで登録すれば、ScanSnapの無料設置、ScanSnap Spotとして専用サイトで紹介といった特典が用意されている。
また、スキャンしたデータとAIを組み合わせることで生まれる価値についてのアイデアを募集する「SCAN to AI 価値創造アイデアコンテスト」も始まった。優秀賞にはPayPayポイント30万円分が、部門賞にはそれぞれ10万円分が授与される。
期間は第1期が9月30日まで、第2期は10月1日から2026年1月31までとなっている。詳細は募集ページを確認してほしい。
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