フルアルバムでCDデビュー!直田姫奈「FEVER -僕たちの計画-」リリース記念インタビューアニメやゲームの主題歌、テーマソングなどを歌うアーティストに楽曲について語ってもらう雑誌「メガミマガジン」のインタビュー企画「Megami’sVoice」。2025年7月号には、初のフルアルバム『FEVER -僕たちの計画-』でCDデビューを果たした直田姫奈が登場。
形に残るものが届けられる喜び
――いよいよ、待ちに待ったCDデビューですね!
これまでに3曲をデジタルリリースさせていただき、それだけでも幸せでしたが、私自身がもともとCDをワクワクしながら買いに行っていた世代なので、こうやって形に残るものとして届けられることが本当にうれしいです。
――アルバムタイトルの『FEVER -僕たちの計画-』にはどんな意味を込めたのでしょうか?
タイトル会議をしているときに、英語だったら「FEVER」、日本語だったら「僕たちの計画」しか考えられなくなっちゃったんです。「FEVER」は「微熱」という意味で使っていて、アーティスト活動がじわじわと熱を帯びていまに至るという意味合いで考えました。それから、アルバムでみんなの心がフィーバーしてくれたらいいなという思いもありました。「僕たちの計画」は、まさにこの1年の軌跡を言葉にしたものだと思いましたし、これからも一緒に計画を立てていきたいという気持ちもあり、どちらも捨てきれずに両方採用しました。
――収録される10曲のうち、配信リリースされていない7曲はライブで披露されていますが、もともとライブのために作ったのですか?
そうなんです。アコースティックライブで披露した「たどり着いた場所であたしお熱が出ている」以外の曲のレコーディングはファーストライブの前に終わっていたのですが、その当時は私のところにはCD化をするというお話はありませんでした。
――それもあってか、かなりバラエティに富んだ楽曲ですよね。
デジタルシングルの「ラベンダー・ブルー」「My Truth」「ばっかだな」は、3曲でひとつのストーリーができあがる曲ですが、それ以外は独立しています。自分にどういう方向性があっているのか、お客さんはどういう曲が好きなのかがわからなかったので、とにかくどんな曲でもトライしてみようという気持ちが強かったんです。ただ、ライブ前提なのでバンドサウンドが映える曲を作っていただいた感じでした。このくらいバラバラだと、きっとどれかしら1曲は刺さる曲があるんじゃないかと思っています(笑)。
――曲順はどう決めたのでしょうか?
まず、デジタルシングル3曲は冒頭から並べ、ファンの皆さんとの連帯感を歌った「たどり着いた場所であたしお熱が出ている」をそのあとに入れました。5曲目以降は、後半になるにつれて明るく、ラストは晴れやかでハッピーな気分になるように決めていきました。私の曲は失恋ソングが多いのですが、そのなかでも、「DAYDREAM BEAT」と「ASTRO ESCAPE」は比較的前向きなので、ラスト近くに持っていき、失恋はしているけれど、音楽的に背中を押してくれるような「好きだった」で晴れやかな気持ちになって幕を閉じるという形です。私自身が最後にわっと盛り上がるよりも、しっかり締めくくるのが好きなので、好みを詰め込んでいきました。
――あらためて、それぞれの楽曲についての思いや制作の思い出などをお聞かせください。まずは、デジタルシングルとしてリリースされた3曲からお願いします。
1曲目はアーティスト活動の始まりとしても思い出深い「ラベンダー・ブルー」にしたかったんですね。失恋はしているけれど前向きな曲なので、明るく始まりたかったんです。楽曲的には、「ラベンダー・ブルー」と「My Truth」は同じ女の子を描いているけれど、曲の方向性が違っていたので、「ラベンダー・ブルー」はかわいく、「My Truth」はクールに、そして「ばっかだな」はあえて抑揚をつけずに淡々と歌いました。この3曲は言葉遊びが歌詞に散りばめられていて、「ばっかだな」はとくにそれが強めです。プロデューサーからも「ヤバイ曲がきたから」と言われていたんですが、実際に聞いてみて自分の想像を遥かに超えていましたし、「ラベンダー・ブルー」と「My Truth」の内容も盛り込まれていて、作詞の金子麻友美さんには頭が上がらないなと思いました。
――4曲目の「たどり着いた場所であたしお熱が出ている」は、アコースティックライブで1回だけ披露されているんですね。
ファンの皆さんと私との連帯や、1年の歩みを歌った曲で、「僕たちの計画」というアルバムタイトルは、この曲の歌詞から抽出した部分もあって、この曲がないとアルバムが成立しないくらいに大切な曲です。わりと私は曲の主人公になって歌うことが多いのですが、この曲が一番直田姫奈っぽい歌い方をしているし、語っている感覚もあります。レコーディングは、表現をたくさんつけるというよりは、思い出のアルバムを見ながらしゃべっているような感覚で、ラストだけ少し温もりを乗せて歌ったつもりです。CDに収録するにあたりバンドサウンド用にアレンジしていただいたので、ライブのよりも華やかになりましたし、コーラスも入って厚みが増し、ライブとはまた違った雰囲気が感じられると思います。これまで歌詞はもちろん、朗読の台本などもお願いしていた金子麻友美さんがこの曲のコーラスを担当してくださって、ご一緒できて光栄でした。
――5曲目の「Monday Night」は、どんな曲ですか?
アルバム中では一番ロックな曲で、荒々しく、イラつきのような感情を乗せて歌いました。でも、一音でもズレるとすぐにわかるので、歌うときは冷静に、ていねいに歌うことを心掛けました。ライブのときよりも私がこの曲をどう歌いたいかがわかりやすくなっているのではないかなと思います。
――6曲目の「レスピラールの花束」の聞きどころは?
全曲でギター演奏をさせていただいたのですが、なかでもこの曲はスピード感があってかなり難航しました。リズムがかなり変わっていくので、そこがおもしろくもあるのですが、そのぶん大変でしたね。右耳からアコギの弦がピックに当たるような、刻む音がするのですが、そこがとてもお気に入りなのでぜひ聞いてほしいです。
――7曲目の「エヌ・オー」は、セリフが入ってくるところもおもしろいですね。
この曲もリズムが難しかったんですが、歌うときはすごく楽しかったですね。声優をやっていて、心の底からよかったと思いました。歌なのか叫びなのか、なんと表現したらいいのかわからないのですが、ぜひ皆さんもすかした気分で歌ってみてください。
――ストレス発散的に叫んでいるような部分もありますよね。
「No!」の部分はけだるげな声や叫びなどを録ってミックスしているので、どんどん声が厚くなっていくんですよ。音源だといろいろな「No!」が聞こえてくると思うので、一緒に叫んでみてほしいです。いつか、皆さんの前でまた披露する機会ができたときは、一緒に叫びましょう。
――8曲目の「DAYDREAM BEAT」は、先ほどもおっしゃっていたように少し明るめの曲です。
ドラマーの柴田 尚さんに作っていただいたのですが、ドラムのビートがカッコいいんです!前向きな曲なので、聞いていても歌っていても元気が出ますし、小さいことを気にしないとかなんでもいいよという、歌詞の主人公には共感できる部分も多くてスムーズに歌えました。
――9曲目の「ASTRO ESCAPE」も柴田さんの作曲ですね。
そうですね。こちらはかわいく、かつ強気な女の子の歌だと思っています。すごく自信があって、自分以外ないでしょって思えるくらいなんですよね。宇宙空間を漂っているようでいて、これから始まる出来事へのドキドキが隠せないという感じもキュートな曲になっています。以前は、直田姫奈として歌うときにどう取り組んだらいいのか悩んだりもしていたのですが、最近は曲を聞いて浮かんだ絵を表現するように歌えばいいんだと思えるようになっているので、この曲では主人公になりきって歌いました。ただ、ここまでの曲と印象が大きく違うので、違う人の歌が混じっていると思われちゃうかもしれません(笑)。
――そしてアルバムの最後を飾るのが「好きだった」です。こちらはタイトルから受ける印象とはまた違った爽やかさがありますね。
切ない純愛の歌なのですが、明るく疾走感のあるメロディなんですよね。未練がなくてすっきりとした感情を持つ主人公なので、スカッと明るく歌うことで、より歌詞の切なさが引き立つ気がしています。また、アコースティックライブで披露したときは、すごく切ない響きになってしまったのですが、バンドサウンドだとかなり印象が変わります。明るさのなかにある切なさを感じてもらえたらと思います。
――バラエティ豊かな曲のなかで、一番のチャレンジ曲は?
「Monday Night」や「My Truth」のようなクールな曲は、勢いだけで歌いきれない難しさがありました。また「レスピラールの花束」は歌詞が抽象的なので、その意味を読み解く難しさもあって。その3曲がチャレンジ曲だったかなと思います。
――全曲ギター演奏もしていますが、レコーディングの感想は?
まさかギターのレコーディングをすることになるとは夢にも思わなかったです。コンテンツでバンド活動はしていますが、自分の音が誰かの音と合わさった音を聞くことがあまりなかったので、私もバンドの一員になれるんだと思ってうれしかったです。とくに「DAYDREAM BEAT」は自分の演奏がすごく聞こえるんですね。ギターは奥が深く、自信を持ってできると言えるところまで達していないので、恥ずかしさとドキドキはいまもまだあります。でも、先日アコースティックライブのあと、編曲を担当してくださっているリアジュボーンの皆さんとお話をしていたら、「もっと自信を持っていいですよ」と言ってくださって、いまはやっちゃっていいんですね、という気持ちになっています(笑)。まだライブでは数曲しか演奏できないので、もう少し一緒に演奏できるようになりたいと密かに思っています。
――直田さんが考えるギターの魅力は?
音がカッコいい(笑)。エレキギターだと、1本でもいろんな音に変えられるのもおもしろいですね。ベースやドラムもカッコいいですが、わかりやすく弾いているぜ感があるところが好きなんです。自分はベースやドラムのようにバンドの音を支えられる気がしないので(笑)、きっと過去に戻ってバンドを組むことになってもギターを選ぶと思います。
――あらためて完成した1枚は、どんなCDになったと感じていますか?
曲の個性がぶつかり合うアルバムになりました。思い出が詰まった曲ばかりなので、ファンの皆さんにもありがとうと言いたくなるアルバムです。
――アルバムと言えば、ブックレットも欠かせない要素ですよね。
たくさんお写真を録っていただいたので、パラパラと見ても楽しいと思います。また、飾ったり布教したりできるので、どうぞ皆さん思う存分推し活をしてください(笑)。
――思い出も魅力もたっぷり詰まったアルバムになりましたね。
本当におっしゃるとおりです。私にとっては待望ですし、皆さんにとってもそうであってほしい、この1年間のアーティスト活動の集大成となる、とてもいいアルバムになりました。これからまた皆さんと一緒に計画を作って進んでいきたいと思うので、このアルバムを聞いて心をフィーバーさせ、今後も応援していただけたらと思います。
Profile
すぐた・ひな/4月17日生まれ。兵庫県出身。2024年4月にデジタルシングル「ラベンダー・ブルー」でアーティストデビュー。
これまでに、デジタルシングル3作をリリース。声優としての主な出演作は、『その着せ替え人形(ビスク・ドール)は恋をする』喜多川海夢役など。
Information
「FEVER -僕たちの計画-」
発売中
日本コロムビア
3300円(税込)
直田姫奈が初のフルアルバムでCDデビュー。配信リリースされた3曲と、ライブで披露された6曲、アコースティックライブで披露された1曲を加えた全10曲収録。
全曲とも直田本人がギターで参加し、バラエティに富んだ歌声と演奏を聞かせる。