
フジテレビの親会社の株主総会が終わり、会社側が提案した取締役の候補11人全員が選ばれました。対立していたファンドは、さっそくフジテレビ側にメッセージを出しています。
新経営陣を選任 フジテレビ側の提案が全員選任 一方で…井上貴博キャスター:
テレビ局は4月と10月に改編期がありますので、その2か月前くらいにはスポンサーを決めておきたいという、テレビ局側の都合があります。フジテレビとしては、もう時間がない中で、どうやっていくのか。
見方として、ひと山越えたと言えるかもしれません。
「フジ・メディア・ホールディングス」の新たな取締役は、フジテレビ側が提案していた11人が全員選任されました。一方で、ダルトン側が提案していた12人は全員が落選となりました。
【フジ側】
・現フジHD専務取締役 清水賢治氏
・ファミリーマート元社長 澤田貴司氏
・Tver社長 若生伸子氏
・現フジHD財経局長 柳敦史氏 など
11人を提案し、全員選任
【ダルトン側】
・SBI HD会長兼社長 北尾吉孝氏
・ワーナー・ミュージック・ジャパン会長 北谷賢司氏 など
12人を提案し、全員落選
ダルトン側が求めていたのは「不動産事業との切り離しをしなさい」ということ。そういうことからいうと、プロと見られていた人が1人ぐらい入るかもしれないと言われている中で、全員落選という結果になりました。
桜美林大学 准教授 西山守さん:
何とかフジ主導で乗り切ったなという感じです。フジ側の提案が通ったということで、今の経営陣に対する一定の評価は得られたのかなと思います。
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慶應義塾大学教授・教育経済学者 中室牧子さん:
フジ側の提案を見てみると、女性が45%ぐらいということ。それから、年齢も50代くらいとだいぶ引き下がっています。その布陣を見る限り、ガバナンス改革というのを視野に入れていることがわかるかなと思います。
今後この先どうなるのかはわからないですから、ガバナンス改革という意思は見えるけれども、結果を出せるかどうかは別の問題ではないでしょうか。
井上キャスター:
その結果を、スポンサーの皆さんがどう見ていくのか。CMスポンサー各社はどう見てるんでしょうか。
【「フジテレビ」CM出稿の検討】(6月26日時点 フジテレビ資料より)
「継続中・再開した」46社
「再開したい」17社
「他社の動向次第」89社
「フジテレビや世論の動向次第」48社
「前向き」なのが63社。そして、137社が「静観」しており、周りがどうなるかを見極めている。
トヨタ自動車、日本生命保険、サントリーなど、このあたりの動きが大変重要と言われています。
桜美林大学 准教授 西山守さん:
スポンサー企業や広告会社の方といろいろお話をするのですが、皆さん、CMを戻したいと話しているんです。ただ、きっかけが見つからないということでした。
株主総会が1つきっかけになるのではないかという雰囲気はあったのですけれども、きょう(6月25日)、落ち着いたところで言うと、一歩は進んでいるとは思います。
これで完全に戻るかどうかはまだ予断を許さないところですが、少なくとも前進はしているので、戻るきっかけは見えてきていると私は思います。
出水麻衣キャスター:
今回の株主総会で、スポンサー企業は、どういったところに注目していたと思いますか。
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桜美林大学 准教授 西山守さん:
まずは「経営陣」です。ダルトン側(の提案)が通ろうが、フジ側(の提案)が通ろうが、刷新されていることに変わりはないので、一新されたという既成事実が得られたということが一つです。
あとは「コンプライアンス」です。株主総会の議決ではないけれども、そこがアピールできているのかです。
これは株主総会に限らず、ここまでのプロセスにおいて、一定の評価は得られているのではないかなというのが根拠にあります。
一方で、オンラインカジノ問題があり、確実に進んでいるとも言い難い部分もあります。
井上キャスター:
コンプライアンスを組織として今、問われています。けれども、ダルトンや他の株主側からすると、「儲ける体制にして欲しい」という、少し違う方向の角度もあるということですよね。
慶應義塾大学教授・教育経済学者 中室牧子さん:
私が仮にクライアントだったらと考えると、重視する点が3つあるかなと思います。
▼新しく刷新された取締役会が、意思決定の透明性を担保してくれるのかどうか。
▼社内文化をきちんと改革してくれるのかどうか。
▼外資ファンドと今回、部分的に対立することになったわけですけれども、そこときちんと対話の道を開くことができるのかどうか。
ここら辺を見極めてから再開するかどうかという意思決定を、自分だったらするかなという思います。
井上キャスター:
サントリーHD会長・経済同友会代表幹事の新浪剛史氏は6月3日、CM再開について「株主総会を見た上で最終判断していくのが一番いいと思う。総会が無事終わることがひとつの試金石」と話しています。
多くの会社が静観している中で、新浪さんの一挙手一投足はある程度、判断材料になるのかなと考えられるわけです。今後、新浪さんの反応などが入ってくれば、つぶさにお伝えしたいところです。
個人的に今回、日枝久さんは出てこないのかと感じたのですが…ここは別に関係ないのですか。
桜美林大学 准教授 西山守さん:
あくまでもスポンサー企業にとってですけれども、経営者がどうであるかというよりは、コンプライアンス体制がきちんとできているのか、取引するに値するかどうか、というところの方を重視すると思います。
もちろん関係なくはないのですが、現経営陣がしっかりして、新しい体制ができたことの方が重要になると思いますね。
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井上キャスター:
スポンサー企業が重視することは、桜美林大学の西山守准教授によりますと、「『コンプライアンス体制の強化』を、世論=株主がどう受け止めたか」です。
フジテレビ側の対応として、▼中居正広氏・元編成幹部を巡る問題について「問題を起こした社員の処分」。▼提訴を考えている状況でもありますが「旧体制と本当に決別できるのか」。▼清水社長が元女子アナA氏へ直接謝罪したという動きもある中で「補償など合意書を締結」。
桜美林大学 准教授 西山守さん
少なくとも、今あげたフジテレビ側の3つの対応例でいうと、しっかり手は打っているとみなせると思います。
もちろん中居さんに対して「訴訟を起こさないのか」みたいなことは、株主総会でも言われましたが、そこは保留であってもいいとは思うんです。
基本はできていると見てもいいんですけど、新たに発生したオンラインカジノ問題がありますので、「本当にコンプライアンス体制がしっかり作れているのか」という疑問は、どうしても出てきてしまいます。
経営陣が変わった後で行われていたことだったりするので、本当に新経営陣がきちんとできているのかどうかに、少し疑問符がついてしまう部分はどうしても残ったかなとは思います。
井上キャスター:
オンラインカジノ問題は、一個人の問題ではなく組織としての問題だと考えますか。
慶應義塾大学教授・教育経済学者 中室牧子さん:
そうですね。なので、今の経営陣が「社内文化の改革」をきちんとやれるのかどうかは、多くの人たちが関心を持って見ているところかなと思います。
オンラインカジノの問題は、前段の中居さんの問題とは全く違う原因によって生じていると思うのですが、これを解決に導いていくためのプロセスで、社内でしっかりとリーダーシップを取りながら、コンプライアンスの問題に準拠していくことができるのかということではないかなと思いますね。
出水キャスター:
刷新された経営陣が、これから様々な問題を解決していくのに、私達としてはどれくらいの時間、注視して見ていけばいいでしょうか。
桜美林大学 准教授 西山守さん
2つあると思っています。CMが戻ってきてビジネスが通常化するというのは、もう逆戻りできないとなった段階で戻ってきます。ですので、短期的に見ると7〜10月の間、秋の改編までには戻していくのが理想ではあるし、現実的だと思います。
あとは、信頼回復となると、もっと1〜2年、場合によってはもっとかかってくると思います。その2つのことを分けて考える必要があると思います。
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<プロフィール>
西山守さん
桜美林大学 ビジネスマネジメント学群 准教授
広告・マーケティングが専門 企業リスクに詳しい
中室牧子さん
慶應義塾大学教授 教育経済学者
教育をデータで分析
著書「科学的根拠で子育て」