米Adobeは6月13日(現地時間)、iPhone向けカメラアプリ「Project Indigo」を無料公開した。最大32フレームの画像を合成し、従来のスマートフォンカメラにありがちな明るすぎる仕上がりとは異なる、デジタル一眼レフのような自然な写真を撮影できるという。「Adobe Labs」から試験的なアプリとしてリリースされるが、日本のApp Storeでは今のところダウンロードできない。
【写真を見る】iPhoneアプリ「Project Indigo」で撮影された写真など(全15枚)
アプリを開発したのは、2020年に米GoogleからAdobeに移籍したMarc Levoy氏(スタンフォード大名誉教授/Adobeバイスプレジデント兼フェロー )とFlorian Kainz氏が所属する「Nextcam」チーム。Levoy氏は、鮮明な夜間撮影を実現する「Night Sight」や一眼のようなボケ味を再現した「ポートレートモード」をはじめとした、Pixelの主要カメラ機能の開発を牽引した人物で、2019年の「Made by Google」に登壇した時は「Pixel 4」のカメラ技術について解説していた。
多くのスマートフォンカメラは、強いトーンマッピングに加えてグローバルブライトニング、高彩度、強力なスムージング/シャープニングのほか、AIを活用した「セマンティック分析」と美化処理により、顔を明るく、肌を滑らかに、空を青く補正するという。こうした「スマートフォンルック」は、ある程度は消費者の好みによるもので、小さな画面や悪い照明条件でも写真を見やすくしてくれる一方で、より大きな画面で見ると非現実的に見えることがあると指摘する。
一部のカメラアプリは「ゼロプロセス撮影」をうたっているが、写真家との対話を通して、ゼロプロセスではなく、一眼が生み出すような自然な見た目を求めている事に気づいたという。そのため、Project Indigoでは軽度のトーンマッピング、彩度の向上、シャープニングのみに限定し、セマンティック解析によるマスクベース調整もわずかとしている。同社の「Adaptive Colorプロファイル」に近い見た目で、「Camera Raw」や「Lightroom」との互換性もあるが、撮影時のカメラ設定を把握しているため、既存プロファイルよりも忠実な仕上がりという。
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マニュアル操作機能も充実しており、フォーカス、シャッター速度、ISO感度、露出補正、ホワイトバランスを設定可能。バースト撮影のフレーム数も制御でき、撮影時間とノイズレベルのバランスを調整できるという。長時間露光モードでは光跡を描く写真も撮影可能だ。出力形式はJPEGとRAW(DNG)に対応し、JPEG形式はSDRとHDR両方の情報を含むハイブリッド形式。撮影後Lightroom側で編集する連携機能もある(JPEGとDNGの両方を記録した場合はDNGが読み込まれる)。
Project IndigoのRAWファイルは、ピクセルがシーンの明るさに比例する(トーンマッピングされていない)ほか、ダイナミックレンジが広い(RGB各16bit)という。また、複数フレームの位置合わせして結合する機能により、高ダイナミックレンジと低ノイズを実現。デモザイク処理前に保存することから、Apple ProRAWよりもファイルサイズが小さく画質も損なわれないとする。
撮影モードは「Photo」と「Night」の2種類を用意。Photoモードは、「ゼロシャッターラグ」によりシャッターを押した瞬間を撮影できるという。一部のハイエンド一眼に搭載されている「プリ撮影」に近い機能で、シャッターボタンを押す前からDNGを連続撮影しており、ボタンを押す直前に撮影された画像を「参照画像」として使用することで、連続画像と合成。動きの速いシーンでも狙った瞬間を捉えた感覚が得られるという。Nightモードは最大1秒の露光時間で32フレーム撮影することで、ノイズを低減する。
デジタルズーム時の超解像にも対応。AIベースの超解像技術と異なり、ノイズ低減時よりもさらに多くの画像を使うマルチフレーム超解像を利用。2倍以上の焦点距離(例えばiPhone 16 Proの光学5倍なら10倍以上)で鮮明なズーム写真が撮影できるという。ディティールの復元は、AIベースの「幻覚(hallucinated)」とは異なる、現実の写真をベースにしているとする。
対応機種は、ProモデルならiPhone 12 Pro/Pro Max以降、非ProモデルならiPhone 14以降。ただし、かなりの高負荷になるため、新しいiPhoneほどより快適に使えるとしている。今後はAndroid版の開発、ポートレートモードやパノラマ、動画撮影機能の追加を予定しているほか、天体撮影に便利な露出ブラケット、フォーカスブラケット、フレーム間で1つ以上のカメラパラメータを変化させるマルチフレームモードのサポートも検討しているという。また、プレビュー時に最終的な仕上がりを確認できるリアルタイムレンダリング(同社は真のWYSIWYGとアピール)にも取り組んでいるとしている。
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