「ズキューンキッス可愛すぎる」
そんな声がSNSにあふれた日曜日の朝。2025年6月、ついに「キミとアイドルプリキュア♪」にキュアズキューン&キュアキッスが登場しました。
白と黒の麗しき「お姉さまビジュアル」は、子どもはもちろん大人をも魅了しました。
SNSではSnow Manの佐久間大介さんが「#キミプリ」タグで実況を投稿し、「メロロンかわいいな〜(^^)」「神エンディングね」とファン目線全開の熱いコメントを連投。トップアイドルがプリキュアを実況する時代。それは「推し活」が当たり前となった今の時代を象徴しているようにも思えます。
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しかし、その一方でプリルンの「大切な思い出を封印して変身する」という展開は「推し活」の光と闇を象徴しているように自分は感じます。
2025年6月15日、「キミとアイドルプリキュア♪」(以降キミプリ)の第19話「ふたりの誓い♪キュアズキューン&キュアキッスデビュー!」にて、ついに新プリキュアコンビ「キュアズキューン」と「キュアキッス」が初変身をしました。
その圧倒的で華麗な強ビジュアルの変身シーンは、お子様のみならず大人をも一瞬にして魅了。SNSでも大きな話題となりました。
ちなみに2人の変身シーンの原画は、プリキュア変身バンク職人「板岡錦」さんによるもの(※今千秋SDのXより)。空間を最大限に生かした2人の超絶で美麗な動きにファンは大興奮したのです。
キュアズキューンとキュアキッスに変身するのは妖精「プリルン」と「メロロン」。
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プリルンがプリキュアになるには「咲良うたとの記憶を封印しなければならない」というプリキュアではヘビーな展開には多くのファンが驚かされました。
そして、もうひとりのプリルン大好き妖精「メロロン」が封印したものは何なのか? の考察も盛り上がりを見せています。
そんなキミプリでは、SNS上でも“ある注目すべき出来事”も起きています。
実は、「キミプリ」では現役トップアイドルSnow Manの佐久間大介さんがX(Twitter)で「実況」をしているのです(※実況とは放送内容に合わせてリアルタイムでつぶやく行為です)。
佐久間さんはアニメ好きでも知られるアイドルで、キミプリでも作品中でレジェンドアイドル「響カイト」の声優として出演していますが、そのつぶやき内容は決して宣伝などのビジネスライクなものではなく、“ファン目線”そのものの熱さなのです。
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「#キミプリ」「#precure」のハッシュタグをつけ、番組開始と同時に「はじまた」から「メロロンかわいいな〜(^^)」「神エンディングね」など感情たっぷりのツイートを投稿、そのすべてに1〜2万の「いいね」が付くほどの注目を集めています。
もちろんお忙しい方なので毎週実況というわけではないのですが、男性トップアイドルが「プリキュアの実況をする」なんて少し前であれば、とても考えられないことでした。
ここ最近は落ち着いてきていますが、少し前までは「男性のプリキュアファン」というだけでも周りから白い目で見られることも多く、イベントなどでも「ひっそり目立たないようにすることが男性プリキュアファンの生存戦略」だったことを思うと、男性トップアイドルがプリキュアを熱く語り、それが当たり前のように受け入れられる世の中になっているのは、「推し活」時代を象徴する出来事のようにも感じます。
プリキュアファンにとっても本当に良い時代になったものだと思います(だからこそ、逆にわれわれプリキュアファンは「節度をもった行動」が必要になってくるのかもしれませんね)。
さて。そんな「キミとアイドルプリキュア♪」は、アイドルをモチーフの一つとしていることもあり、作中でも子どもたちに「推し活」の概念を伝えています。
第18話「キミは誰!?ハートズキューンされちゃった」では、紫雨こころ(キュアキュンキュン)のセリフを通して「推し活」「沼」「布教活動」といった言葉の説明も行われました。
紫雨こころ「推し活。それは自分が推している、つまり人におすすめしたいくらい好きなアイドルをいろんな形で応援する活動のこと」「キミとアイドルプリキュア♪」第18話 紫雨こころのセリフより
また、痛バッグ(缶バッジをたくさん付けたバッグ)など、実際の“推し活アイテム”の描写もあり、子どもたちに今の「推し活」とはどのようなものなのかを詳細に伝えました。
まさか「推し」「沼」「布教」など、かつてはネットスラング的だった言葉が、プリキュアで丁寧に説明される日が来るとは思ってもみませんでした。
紫雨こころ「布教活動っていうのは推しの素晴らしさをみんなに広めること。立派な推し活の一つです」「キミとアイドルプリキュア♪」第18話 紫雨こころのセリフより
「推しができると毎日が楽しくなる」「お手伝いや宿題もやる気が出る」といった、推し活のプラス面がしっかりと描かれ、応援する気持ちを通してポジティブになれる。そんなメッセージがきちんと子どもたちに伝わるようになっていたのは良かったと思います。
ただ一つ、個人的にはプリルンがキュアズキューンに変身する際に迫られた選択、「キュアアイドルを助けるために、咲良うたとの大切な思い出を封印しなければならない」という展開になったことにはやや疑問点が残りました。
確かにプリルンの献身、一途な思いは感動的でドラマチックな展開ではありますが、「推しのために自分の大切なものを差し出す」という、いわば“自己犠牲”を肯定するような描き方が、個人的には少しだけ危うさをはらんでいるようにも思えました。
「ねえたま? ハートキラリロックでねがいをかなえるには、その代わりにねえたまもメロロンも一番大事なものを封印しなくちゃいけないメロ」「一番大事なもの……プリ?」「メロ。ねえたまの宝物、咲良うたとの思い出は全部なくなっちゃうメロ……それでもいいメロ?」「いいプリ! それでキュアアイドルを守れるなら……プリルンは……大丈夫プリ……」「キミとアイドルプリキュア♪」第17話 プリルンとメロロンの会話より
キミプリで初めて「推し活」に接する子どもも多いと思います。そんな子どもたちが最初に接する「推し活」に自己犠牲の美徳を内包してしまうのは個人的にはあまり好きになれませんでした。
「大好きな人のために尽くすこと」自体は美しいものとは思います。自己犠牲的な表現自体が悪いわけではなく、あくまで“子ども向け”の推し活導入としてどうなのか、という点が気になりました。
もちろんフィクションの中の演出なので単純比較はできませんが、これは例えば現実世界において、悪い大人に「あなたの大好きな推しを助けるために、全財産を差し出してください」と言われたときに、何の迷いもなくOKしてしまうようなことのようにも思われます。
ただ、これは「自分自身を傷つけるような推し活は良くないよ」ということを伝えるアンチテーゼなのかもしれません。
事実、第21話のラストにおいて「咲良うたが倒れてしまう」という衝撃のラストからも、「無理な推し活は、推しもファンも幸せにならないよ」というメッセージを伝えていく布石なのかもしれませんね。
「キミとアイドルプリキュア♪」というタイトルが示すように「アイドルとキミとの関係性」に重点を置き、「推し活」の概念を子どもたちに伝える今作において「推す側」と「推される側」の関係性のはかり方は、大切なテーマの一つであると思います。
ここまでのキミプリは「応援することの楽しさ」や「誰かを好きになることで前向きになれる気持ち」にスポットを当ててきました。
その一方で、今回のプリルンのように「推しのために大切なものを差し出す」という“自己犠牲”ともとれる姿勢も描かれており、その描き方は一歩間違えば誤解を生んでしまう危うさもはらんでいます。
「アイドル」という概念をプリキュアで描くにあたり「みんな」ではなく「キミとの関係性」を重視した作風、「推し活」を前提とした作品構成、現役トップアイドルによるSNS実況……。
「キミとアイドルプリキュア♪」は、例年以上に作品内外での「ファンとの関係性」を重視しているように感じます。
それだけに「推すことの楽しさ」と「推しとの距離感」のバランスを本作がどう描いていくのかが今後のポイントになっていくのではないでしょうか。
応援する楽しさと、自分を大事にすること。
キュアズキューンとキュアキッスを加え5人になった「アイドルプリキュア」がこの先、どんな活躍をみせるのか。
そして子どもの「推し活って何だろう?」という問いに、「キミプリ」がどんな答えを出していくのか。
「キミとアイドルプリキュア♪」。
夏以降もますます盛り上がっていきそうですね。
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「ときメモ」告白の不具合を修正(写真:ITmedia NEWS)121
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