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2025年06月26日 18:11 ITmedia Mobile
ソフトバンクが6月26日、第39回定時株主総会を開催した。会場で785人、オンラインで278人の合計1063人が出席。ソフトバンク代表取締役 社長執行役員 兼 CEOの宮川潤一氏が議長を務め、中期経営計画目標(2025年度までに営業利益9700億円)を1年前倒しで達成したこと、モバイル事業は値下げの影響を脱し2024年度から増収に転じていることなどを説明した。
質疑応答では、株主から通信、金融、AIに関する事業戦略から会社経営の在り方、“ファン”としての要望まで、さまざまなトピックが挙がった。その一部を紹介する。
●PayPay以外の株主優待も考えてほしい
―― 株主優待の付与時期が1年後なのはどうか、PayPay以外でも優待を考えてほしい。また、子どもがスマホを持っていないので優待を受けられないが、どうしたらよいか。
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宮川氏 PayPayマネーライトを渡す時期は、株主優待の案内時から2026年5月と伝えていた。時期が1年先と少し先になるが、ご理解いただきたい。お渡しするまでの間、株主の皆さまには抽選でホークスやBリーグのチケットが当たるなど、さまざまなキャンペーンを検討している。登録アドレスで案内するのでお待ちいただきたい。
優待をPayPayのみにしている理由は、当社グループの経済圏の中心であるPayPayをこの機会に利用いただき、グループサービスへの理解を深めてもらうとともに、国が推進するキャッシュレス決済を広めたいという思いからだ。PayPayを使っていない方は、ぜひこの機会に使ってみてほしい。
スマホをまだ持っていない18歳未満の株主が優待を受けられないという指摘はごもっとも。将来スマホを持つまでは、代理として親御さんにPayPayマネーライトを進呈できるように急いで調整する。
―― 利益が回復基調だが、なぜ増配しないのか。
宮川氏 ご指摘のように、携帯電話の値引きが始まった4年前から比べると、もうけの幅も増え、景色が変わってきた。これも株主の皆さまと一緒に苦しい時期を乗り越えてきたたまものだと感謝している。配当予想を据え置きとするのは、議長を務める今回で5回目となる。
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日本の急激なインフレ環境下で配当を維持することは、実質的な減配に近いという思いも抱いている。ただ一方で、急成長し続けるAIへの投資チャンスに恵まれている。今は攻めの姿勢を緩めることなく、むしろ積極的にAI投資を行う方が、将来の当社の企業価値向上につながると考えている。この先行投資を行いながらも、さらに業績が上振れた場合には、株主還元の強化を検討していく。AIインフラの構築には相応の時間がかかったが、徐々に事業化へと実を結んできた。次の地域計画ではこれらを織り込み、増配への期待にも応えられるような、強い企業へと導いていく。
●携帯料金、ソフトバンクも値上げをする可能性は?
―― ドコモとKDDIが値上げを発表したが、ソフトバンクの対応は?
宮川氏 通信業界の健全な発展のためにも、価格の見直しは必要だと考えている。インフレを考慮すると、当社の社員だけでなく、取引先やその従業員さんの労働者も含め、この業界に関わってくださる方々のことも考えていかなくてはならない。競争も激しく大変であるが、他社の動向をよく見ながら慎重に判断していく。
―― 業務委託先企業による個人情報漏えいの可能性があった報道を見たが、今後どのような対策を取るのか。
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宮川氏 まず、お客さまに多大なご迷惑とご心配をおかけしたことを深くおわび申し上げる。委託先の管理が不十分だったことを真摯(しんし)に受け止め、再発防止に取り組んでいく。個人情報を取り扱う情報委託については全面的に見直し、当社の直接管理のもとで運用していく。二度とこのようなことが起こらないように注視していく。
●宮川社長が大切にしている経営哲学は?
―― 企業経営において、宮川社長が大切にされている価値観や経営哲学について伺いたい。
宮川氏 私の哲学と呼べるほどではないが、目標に掲げているものがある。それは、これからの社会の中で唯一無二の、なくてはならない存在意義のある会社を作り上げていくことだ。AIと共存する未来を見据え、このソフトバンクを次世代社会に必要なインフラを提供する会社にしたいと考えている。逆算しながらさまざまな取り組みを進めている。
この考え方の原点は、恐らく私の生い立ちにある。実家は1200年以上続いている禅寺だが、人々に寄り添い、社会に対する存在を示し続け、それが受け入れられたからこそ、同じ場所でこれほど長く続いてきたのだと考えている。会社も同様に、継続するだけでなく成長し続けるためには、これからの社会の中で確固たる存在意義を示し続けることが不可欠だと思う。
私は、恥ずかしながら禅寺を継ぐのが嫌だという理由だけで、26歳のときに起業し10年間スタートアップを経営した。その後ソフトバンクに入り、技術を中心に20年間、孫さんにも鍛えていただきながら、経営者としてさまざまな経営経験を積んできた。5年前に社長を拝命したので、これまでの人生の集大成として、ソフトバンクを持続的に成長させ、株主の皆さまの期待に応えていきたい。
―― 他社を見ていて、能力のない愛社精神のない社外取締役が大きく足を引っ張っていると思う。会社運営は愛社精神のある能力ある社内取締役が中心になって運営すべきではないか。社外取締役の選任についての考え方、社外取締役をいかに評価し監督していくかについて伺いたい。
宮川氏 社外取締役は、今回議案にも入れた役員の報酬の件について、今年度(2025年度)から社外取締役にも当社の株を持ってもらう試みを始める。当社の常勤取締役は以前より報酬を株で取得し、我が人生とこの会社の株価はイコールであるぐらいのつもりで経営している。社外取締役も、いつも議論では本当にその思いは一緒だが、もっと現実ある形として株を持っていただけるように、報酬制度も株を織り交ぜた形で実施する。
これから退任する社外取締役と、新たに就任する社外取締役がそれぞれ2名ずつとなるが、ある程度の長すぎる期間の就任期間ではなく、リフレッシュしていくことも並行して議論しながら決めてきた。これからもこの機能が発揮できるように努めていくし、その姿をしっかりとお見せしていく。
―― 中期経営計画として数字を上げているが、株主としては長期で株を保有したいと考えており、5年後、10年後の売上規模と利益の展望を知りたい。
宮川氏 今日プレゼンしたのは、2年前に出した3年計画の最終年である。今期は自信があるとまで話した。来年(2026年)の株主総会、もしくは決算発表会のときには、それから3年間ないしは5年間の長期的な目線での経営計画を出したいと考えている。その準備は着々と進めており、高い目線で社員を引っ張っていくために、かなりストレッチな計画を立てている。
経営とは、達成できる数字を毎年積み上げて「達成できたからよかったね」というものではないと考える。できるかできないか分からないぐらいの目線でまず計画を立て、社内でできるかどうかを真剣に議論し、世の中に公言するときにはできそうな範囲内で話していきたい。ぜひ来年の計画発表まで少しだけお待ちいただきたい。もちろん、小さくなる会社にするつもりは一切なく、これからも伸ばしていきたいと考えている。
●ソフトバンク幹部とのフォトセッションを設けてほしい
―― 私は株主総会の出席を「大人の推し活」と呼んでおり、孫社長や宮川社長と個別に写真を撮りたい。株主総会終了後、フォトセッションを設けてほしい。物理的に無理であれば、例えば1万株以上保有や3年以上継続保有といった条件で絞ってもいい。昨年(2024年)は株式分割、今年(2025年)はPayPayポイントだったが、来年はフォトセッションを前向きに検討してほしい。
宮川氏 大変素晴らしい、面白いご提案を頂戴した。今後の参考にさせていただきたい。フォトセッションについては、ご本人たちが恥ずかしそうなので、少し検討させていただきながら、Web等で発表していきたい。前向きに検討していく。
●ChatGPTの愛称は「チャッピー」になる?
―― AIについて、若い人の間で今、ChatGPTを「チャッピー」という愛称で呼んでいる人が多く、ソフトバンクもこれから展開していくAIに、愛称のつけやすい名前やニックネームをつけて、消費者になじんでもらえるようなものを展開する考えはあるか。
宮川氏 まさに商品名は非常に重要だと考えている。いつも何らかのサービスを開始する前には、いくつかの候補を出してもらい、その候補を内証でマーケットリサーチを行い、一番伝わりやすいかを決めて商品名を決定している。チャッピーという呼び方は初めて聞いたが、おそらく明日から私の中でははやり言葉になるだろう。ぜひいただいた貴重なご意見、参考にさせていただきたい。
―― (企業向けAIサービス)クリスタル・インテリジェンスは、どのように推進していく予定か。
宮川氏 4月1日にSB Open AI 準備室を立ち上げ、我が社のAIタスクフォースとしている。現在のプロダクトの具体的な内容については、Open AI側と協議している。クリスタル・インテリジェンスの開発は、今日ビデオでお見せしたようなものになるだろう。それができたら、ソフトバンクの中で徹底的に使い倒し、ブラッシュアップした上で個人のお客さまに提供していきたい。もう少しお待ちいただきたい。
●PayPayの上場準備でソフトバンクへの影響は?
―― PayPayが上場準備を開始したとのことだが、ソフトバンク株式会社の保有持ち分は上場時に一部売却するのか。
宮川氏 準備をするといろいろな制約があり、事前加入の観点で指摘されるリスクがあるため、現時点ではコメントを控える。しかし、PayPayは当社にとって大変重要な子会社であり、大変シナジーも大きいということだけコメントさせていただく。
―― 報道ではQR決済の加盟店にとって手数料が負担となっているため、一部の加盟店が離れてしまったとのことだが、どのように考えているか。
宮川氏 PayPayの手数料が高いというのは、少し誤解されているのではないかと思う。クレジットカードの手数料は一般的に3〜4%程度だが、PayPayの手数料はその約半分ぐらいである。PayPayを導入しているからこそ、その店舗を使うお客さんもいるため、集客の対価として手数料をいただいている。実際に今なお加盟店様は順調に増え続けているので、加盟店向けのサービスをさらに確立することに注力し、PayPayと加盟店の双方が発展するようにしていきたい。
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