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生活保護費を2013年から3年間にわたって段階的に引き下げたのは、健康で文化的な生活を保障した生活保護法に違反するとして、受給者が国などに減額の取り消しと賠償を求めた訴訟の最高裁判決が27日に予定されています。
生活に困窮する人を救う最後のセーフティーネットといわれる生活保護ですが、どのような制度なのでしょうか。
Q 生活保護費ということばはよく聞くけど、そもそもどんな制度なの?
A 憲法25条で国民には「健康で文化的な最低限度の生活」が保障されています。病気や障害で働けなくなった、失業して仕事が見つからないといった時でも必要な生活費や医療サービスを支給することで、自立を後押しするための制度です。
Q どんな支援があるの?
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A 食費や光熱水費に当たる「生活扶助」をはじめ、家賃に当たる「住宅扶助」▽義務教育の教材費や給食費などの「教育扶助」▽受診料などの「医療扶助」▽介護サービス費用の「介護扶助」▽出産費用に当たる「出産扶助」▽高校の授業料や技能習得にかかる費用といった「生業扶助」▽葬儀代の費用「葬祭扶助」――があります。医療や介護については自己負担はありません。
Q 生活保護費はどのように決めるの?
A 総務省が公表する全国家計構造調査を基に、一般の低所得者層(年収が下から10%の層)の消費との均衡が図られるように検討して決められる生活扶助基準で決まります。
基準額は住んでいる地域や世帯構成などによって異なります。また、障害者や母子世帯などには加算もあります。
Q 収入があれば受けられないのかな?
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A そんなことはありません。働いていたり、年金を受給していたりしても収入が基準額以下であればその差額が支給されます。
Q どれぐらいの人が生活保護を受けているの?
A 厚生労働省の発表によると受給者数は約200万人います。バブル崩壊後の1990年代後半から急増しましたが、現在は微減傾向となっています。受給世帯数は約160万世帯で横ばいの状況です。生活保護費の総計は年間3・5兆円程度に上ります。
Q 最後のセーフティーネットなのに、受給者への偏見もあるよね。
A 過去には収入を申告しない不正受給が問題視されたこともありました。それが今回の訴訟で問題となった保護費引き下げの背景にあるとの見方もあります。しかし、保護費の総額に占める割合は0・3%ほどです。不正受給はいけませんが、偏見で生活保護を利用する権利がある人がためらうことがあってはいけません。
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Q 恥ずかしいと思う必要はないんだね。
A 健康で文化的な最低限度の生活を送ることは憲法で保障された国民の権利です。しかし、自治体の窓口で申請をなかなか受理しない「水際作戦」が問題になっています。
また、生活扶助基準を検討する際に比較対象となる一般の低所得者層には本来、生活保護が必要なのに受給していない人が多くいるとみられ、これでは基準額がどんどん下がることになると指摘する専門家もいます。
さらに基準算出に使われる全国家計構造調査は5年に1度しか公表されないため、昨今の急速な物価高に対応できないという課題もあります。
27年度には生活扶助基準の見直しが予定されています。どのような制度がふさわしいのか改めて議論が求められます。【回答・内田幸一】
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