ドコモ前田社長が語る「通信品質1位」への道筋 銀行業でd経済圏を加速、新AIエージェントも提供へ

1

2025年06月27日 06:11  ITmedia Mobile

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ITmedia Mobile

ドコモが銀行業に参入することで、スマートフォンだけで貯金、決済、投資、保険、融資、ポイントなどの金融サービスを一元的に提供可能になる(画像は5月29日のニュースリリースより)

 ITmedia Mobileでは、NTTドコモの前田義晃社長にインタビューする機会を得た。2025年のドコモは、4月に新料金プランを発表し、5月には住信SBIネット銀行の子会社化を発表するなど、大きな動きが起きている。一方で、課題となっているネットワーク対策の現状も気になるところ。


【その他の画像】


 今回は前回の料金プランに続き、銀行業、ネットワーク、AIについてのトピックをお届けする。


●銀行サービスは2026年から 住信SBIネット銀行の子会社化で「経済圏」を加速


―― 金融サービスについて伺います。住信SBIネット銀行の子会社化で、ついに念願の銀行サービスを手に入れることになります。会見では具体的なサービス内容について触れる時間がなかったようですが、もう少し詳しく教えていただけますか。


前田氏 まず、基本的な部分から申し上げると、住信SBIネット銀行が弊社グループに加わりますので、そこで口座を開設していただき、例えば通信料をお支払いいただいたり、やdカードの引き落としを設定していただいたりすることで、ポイント還元をするようなサービスはありますよね。


 ご存じの通り、今は他行さんにご協力いただいて決済を行っている状況です。その場合、手数料を支払うことになりますが、グループ内に銀行を持つことで、その分を原資にポイントとしてお客さまに還元できるようになります。これは、やはり「経済圏」ならではの強みであり、組み合わせで使っていただくことで、どんどんお得になっていくサービスを提供していきたいと考えています。


 弊社はこれまでも決済、証券、ローンといったさまざまな金融サービスを提供してきましたが、これらをシームレスにまとめていきたいという思いがあります。しかし、それを実現するためには、銀行としての基幹機能がないと難しい。今回銀行をグループに迎えたことで、それが格段に作りやすくなります。ですから、ワンストップでまとまったサービスを、正式な手続きが完了する秋以降にしっかり作っていきたいと考えています。


 具体的に申し上げれば、銀行はやはり「融資」という機能を持っています。住宅ローンは定型的な例だと思いますが、お客さまのさまざまなライフイベントにおいて、資金の面で支えることができるようになるでしょう。住信SBIネット銀行は非常に強い領域を持っていますので、ここをドコモのサービスと一緒に使っていただくことで、大きな相乗効果を生み出せると思います。


 また、われわれは決済やポイント利用を通じて、お客さまの消費行動に関するさまざまなデータを蓄積しています。ここに銀行のデータが加わることで、お客さまが生活の中で「お金をどう使っているか」という情報も理解できるようになります。メインバンクとして使っていただくことが前提になるかもしれませんが、お客さまのライフステージやライフスタイルに合わせた、よりパーソナルな提案が可能になると考えています。そうしたことを進めていきたいですね。


―― サービス名、銀行の名前はもう決まっているのでしょうか。


前田氏 まだ決まっていません。もちろん、変更していくことになると思います。われわれがグループとして銀行業を始めたことがお客さまから見て明確に分かるように、ドコモの名前や「d」の冠を入れていくことになると思います。このあたりは、三井住友信託さんとも相談しながら進めることになります。


―― 実際に銀行サービスを開始するタイミングは2026年以降になるのでしょうか。


前田氏 銀行はグループに入ってもらいますが、銀行業自体はずっと継続しています。弊社として完全に連結化されるのが2025年秋です。ですから、秋のタイミングでわれわれがグループとして銀行業をしている状況が生まれるということです。さまざまなサービスを連携させるには、もちろん開発が必要です。そこは検討と開発を進めさせていただき、デジタルサービスが始まるのは来年度(2026年度)以降になると思います。ただし、店頭で住信SBIネット銀行の口座開設をお勧めすること自体は、特に待たなくてもできる話ですので、そこは速やかに進めていきたいと考えています。


―― 店頭で口座獲得をするという点で、ドコモショップの役割が重要になると思いますが、コロナ禍以降、ショップ数が3割減ったと思います。銀行業を始めることで、その方針は変わってきているイメージでしょうか。


前田氏 いえ、銀行業があるかどうかに関わらず、ショップを減らすという方針は既に撤回させていただいています。今の競争環境を考えると、ショップを減らしていいとはわれわれも思っていません。そして、銀行の話もそうですが、通信だけでなくさまざまなサービスをご利用いただくことで、事業全体を成長させていきたいと考えています。それはドコモだけでなく、さまざまなパートナーの方々と一緒に進めることで実現できると認識しています。その大きな力が、ドコモショップや量販店といったチャネルにあることは事実ですので、これらはどちらも充実させていく方針です。


―― つまり、ショップ数を今増やしているということでしょうか。


前田氏 トータルで言うと、今は増やそうとしています。ただ、やはり人があまりいらっしゃらない場所など、全ての店舗で同じようにというわけではありません。現状で言えば、トータルで見るとそれほど数は変わらないかもしれませんが、お客さまにどんどん来ていただけるのであれば、数を増やしていきたいという思いはあります。


●通信品質は「2025年度末には差がない状況に」「2026年度に1位を目指す」


―― 前田社長が就任されてから、2024年度内にOpensignalの「一貫した品質」で1位を目指すと宣言されてきました。2024年度最後の調査では一貫した品質の調査が省かれたため、2025年度以降に持ち越しとなりましたが、ネットワーク対策の進捗(しんちょく)状況を教えてください。


前田氏 会見でもお話しさせていただきましたが、進捗は着実にしています。就任時に申し上げた通り、都市部を中心にSub6の増設を進めており、全国レベルで見ると5G基地局数は20%増加しています。人口集中地域に絞って見ると、70%程度の増加になっています。増設はもちろん、チューニングなども行ってきましたので、ダウンロード速度自体は確実に上がっています。全国平均で見ても20%程度の上昇です。Opensignalの別の指標では、5Gが1位になっているという結果も出てきています。カバレッジが1位なのは、もともとそういう打ち方をしているためです。


 申し上げているCQ値(Consistent Quality=一貫した品質)については、ずっと取り組んできていますが、Opensignalさんのデータでは、比較が難しいところはあります。ドコモの場合、3Gのデータも入っています。irumoの0.5GBの通信速度(最大3Mbps)も入っていますが、他社さんはサブブランドが入っていない場合もあります。全部合わせていくと、それほど差がないレベルに来ていると思いますが、分かりやすく今トップの状態になっているかというと、必ずしもそうではありません。近づいてはきているとは思います。


 5Gの基地局数、特にSub6の基地局数は、今年度(2025年度)でほぼ他社さんと変わらない数になる予定です。あとは4G周波数帯の転用も、今年度もしっかり取り組んでいますし、来年度はさらに増やしていきます。その結果、来年度(2026年度)には確実に1位に持っていけると考えています。今年度末には、ほとんど差がない状況に持っていけるのではないでしょうか。進捗はしっかりしています。


―― 一貫した品質1位を達成する目標は変わらず、来年度までにそれを達成するということですね。


前田氏 はい、来年度までには達成できると思っています。今年度でも相当良いところまで来ていると自負しています。


●AIエージェントサービスを2026年度提供に向けて開発中 ドコモが持つ「データ」が強みに


―― スマホの競争力がAIへと移りつつあるように感じます。メーカーが主導でGoogleやOpenAIの技術を活用し、AIサービスを構築していますが、キャリアとしてこのAIをどのように捉え、取り組んでいかれるのでしょうか。


前田氏 キャリア側の話になりますが、お客さまへ提供するAIという点では、スマートフォンも含めて、究極の「パーソナルエージェント」が目標だと考えています。これは、20年以上前からわれわれが追求してきたコンセプトです。


 現在の生成AIを含めたAIの進展により、これまでやりたかったけれど技術的な制約でできなかったことが、劇的に環境が整備され、実現可能になってきています。お客さまにさまざまな設定をしていただくことでエージェント的な機能を提供してきましたが、その技術進展を生かし、パーソナルエージェントのサービスをしっかり提供したいと考えています。


 具体的にどう進めるかというと、GoogleさんやOpenAIさんなどのLLM(大規模言語モデル)は、それを磨き上げてさまざまなアプリで利用できる状態にしています。私も使っていますが、現時点のサービスは、どちらかというとインタラクティブなやりとりの中で自分を理解してもらい、問われたことに対して返すというエージェントスタイルだと感じています。


 しかし、これだと入力が前提となります。私自身の人となりや生活スタイル、何をしているかといったことを全て入力しなければならないのか、という話になってしまいます。さすがにそのような使い方は難しいでしょう。そこで生きてくるのが、先ほど申し上げた、さまざまなサービスをご利用いただく中で蓄積されている、お客さまを理解するためのデータです。これをどう連動・連携させるか。いちいち自分で入力しなくても、自分に合ったエージェントが振る舞ってくれるようになるか。ここがデータを持つわれわれの強みだと考えています。


 まさにそのようなサービスを作り上げたいと考えており、現在検討を進めているところです。できれば今年度中に作り上げたいと思っています。LLMとの連携が不可欠ですので、LLMについては外部の企業とのアライアンスを組むのがいいと考えています。また、生活のさまざまな場面でエージェントとして振る舞うためには、さまざまなコンテンツやアプリケーションとの連携が必要です。APIを通じて他事業者さんと連携できるような、プラットフォーム的な振る舞いができるAIエージェントサービスを、今、開発・構築を進めているところです。


―― ドコモでは「my daiz」というAIエージェントサービスがありますが、それとは別のサービスになるのでしょうか? それともmy daizを発展させるようなイメージでしょうか。


前田氏 今作ろうとしているものは、少し別の形です。ただし、my daizやその前のiコンシェルといったサービスの考え方や経験を生かして、今回のサービス開発を進めているのは事実です。新しいサービスを始めれば、古いサービスは必ずしも提供し続けることにはならないと思いますので、ある種入れ替わることになるかもしれません。



このニュースに関するつぶやき

  • 住信SBIネット銀行でもdポイント推しをやる気だな。迷惑だなぁ。
    • イイネ!8
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(1件)

ランキングIT・インターネット

前日のランキングへ

ニュース設定