
都内で会社員として働くAさんには20代の息子がいます。彼は大学卒業後に大企業に就職したものの1年ほどで退職し、その後は暗号資産の運用で生計を立てていると聞いていました。
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Aさんには暗号資産の世界はよくわかりません。ただ息子はいわゆる「億り人」と呼ばれる存在で、彼が所有する資産価値は軽く億を超えるほどになっているようです。妻に先立たれており1人暮らしをしている息子の近況を心配していたAさんでしたが、お金で困ることのない状況になっていることを聞き、安心していました。
しかしある日、Aさんのもとに信じられない知らせが届きます。最愛の息子が不慮の事故に巻き込まれ、亡くなったのです。突然のことで、Aさんは深い悲しみに暮れました。葬儀を終え少しずつ落ち着きを取り戻したAさんは、息子の財産を整理することにします。そこでふと、息子が運用していた暗号資産がどうなるのか気になったのです。
Aさんが把握しているだけでも、息子が所有する暗号資産は莫大な金額です。暗号資産は、株や不動産のように形のあるものではないため、どのように相続の手続きを進めればいいのか見当もつきません。そもそも、暗号資産は相続の対象になるのでしょうか。そして相続した場合の税金は、どのくらいかかるのでしょうか。正木税理士事務所の正木由紀さんに話を聞きました。
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ーAさんが支払う税金はいかほどになるのでしょうか
仮にAさんが息子から100億円の暗号資産を相続したと仮定します。その場合のAさんに課せられる税金は相続税と所得税です。
相続税の税率は、取得する財産の金額に応じて高くなります。法定相続分が6億円を超えると最高税率55%が適用されるため、基礎控除や各種控除を考慮しても、100億円規模の財産を一人で相続する場合、納税額は54億円を超えてくるでしょう。
さらに相続した暗号資産を売却した場合、その利益は所得のうち「雑所得」の対象となり、ほかの収入と合算した額に応じて最大45%の税率が課せられます。住民税が約10%かかる点も加味すると、最大で55%の税率にも達します。
ただこのように課税されるのは、相続した暗号資産を売却する時の価値が相続時よりも上がった場合のみです。もしも売却時の暗号資産の価値が、相続時と同じか下がっている場合は利益が発生しないため、所得税や住民税は発生しません。
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ーつまり売却益が発生する場合は、二重に課税されてしまうということですか?
もしも相続後に即時現金化するのならば、二重課税に見えてしまいますよね。しかしこれは二重課税ではなく、「相続」と「現金化による利益取得」の2つの行動に対してそれぞれ課税が発生している状態なのです。
そのため、例えば相続した暗号資産をそのまま保持し続ける場合や、現金化しても利益が発生しなかった場合は、所得税と住民税は発生しません。
ー暗号資産を相続する際に注意すべき点は何ですか
大前提として被相続人が存命のうちに手を打っておくことです。相続が発生する前に暗号資産を現金化してもらい、被相続人に所得税を収めてもらいます。そのうえで現金で相続すれば、相続人に所得税は発生しません。また税金がかからない範囲で、贈与をしておくのもおすすめです。
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もし生前に対策ができず、たとえば暗号資産の急激な価値下落や、納税資金を確保できないといった状況に陥った場合には、相続した資産よりも納税負担が上回り、結果的に赤字となるおそれもあります。そのような場合には、選択肢のひとつとして相続放棄を検討する必要があります。ただし、相続放棄の期限は死亡を知った日から3カ月以内のため、注意が必要です。暗号資産の相続は、その評価方法や税務上の取り扱いが複雑であるため、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
◆正木由紀(まさき・ゆき)/税理士 10年以上の税理士事務所勤務を経て令和5年1月に独立。これまで数多くの法人・個人の税務を担当。現在は、社労士や司法書士ともチームを組み、「クライアントの生活をより充実したものに」をモットーに活動している。私生活では2児の母として子育てに奮闘中。
(まいどなニュース特約・八幡 康二)
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