「日本ラグビーに捧げてきた」来日10年目に悲願の代表入り 30歳のオーストラリア人がエディージャパンを救う

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2025年06月27日 10:00  webスポルティーバ

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 日本でラグビーをプレーして10年目──。

 悲願の日本代表入りを果たした「オーストラリア出身選手」がいる。

 6月12日、エディー・ジョーンズ体制2年目のスタートとして、ラグビー日本代表37名が発表された。現役大学生や社会人1年目など13人が初めて日本代表に選出されるなか、30歳のSOサム・グリーン(静岡ブルーレヴズ)の名前もあった。

※ポジションの略称=HO(フッカー)、PR(プロップ)、LO(ロック)、FL(フランカー)、No.8(ナンバーエイト)、SH(スクラムハーフ)、SO(スタンドオフ)、CTB(センター)、WTB(ウイング)、FB(フルバック)

   ※   ※   ※   ※   ※

 身長178cmのグリーンはFBでもプレー可能なマルチプレーヤーで、パス、キック、ランと3拍子揃ったゲームコントローラーでもある。ジョーンズHC(ヘッドコーチ)が掲げる「超速ラグビー」にフィットするのでは──と、以前から期待されていた選手だ。

 司令塔である10番のポジションは、今の日本代表で最も層が薄いポジションのひとつ。今回選ばれたSOとFBの4選手について、ジョーンズHCは「宮崎で見て、誰にどのポジションを任すかを決める」と話していたが、グリーンは10番で起用された。

 6月16日から始まった宮崎合宿で、グリーンは初招集と思えないコミュニケーション力を発揮する。ランとパスを巧みに織り交ぜ、積極的にアタックをリードしている姿があった。

「トレーニングでは、いいアタックのモメンタム(勢い)が作れています。10番のジャージーを着てプレーするのは好き。どのポジションでも与えられた役割をプレーするつもりです」

 6シーズン目を迎えた静岡では14試合中9試合で10番を背負い、チームを初のプレーオフ進出に導いた。そして6月上旬、長野・菅平で行なわれた強化合宿の参加を経て、念願だった日本代表入りを果たした。

「日本代表の仲間入りができたこと、本当にうれしいです。自分の能力には自信がありますし、チームメイトたちとつながりたいと思っています。これからの試合が本当に楽しみです!」

【コロナで夢を絶たれるも......】

 グリーンは21歳の時に来日。豊田自動織機で3シーズンプレーし、2018年度にはニュージーランドのレジェンドSOダン・カーターを抑えてトップリーグ得点王にも輝いた。2020年にヤマハ発動機(現・静岡ブルーレヴズ)に移籍。気づけば、来日して計9年が経った。

 日本に住み続けるグリーンが「桜のジャージー」を目指したのは、自然な流れだろう。

「日本のチームで長くコミットすることによって、日本との結びつきを強く感じるようになった。プロとしてのキャリアのほとんどを日本のラグビーに捧げてきたから、この国と日本ラグビーに深い愛着を感じています」

 現在、外国籍選手が日本代表の資格を得るには、日本で5シーズンプレーすることが条件となる。ただし、改訂前の資格条件は「3年間居住」が必要で、当時のグリーンは2023年のワールドカップ出場を視野にそれを目指していた。

 しかし2020年のコロナ禍によって条件をクリアすることが困難となり、日本代表入りを断念した経緯があった。

「そのような事情により、残念ながら(代表資格を得る)時間をリセットせざるを得ませんでした。しかし今、日本代表資格を得て、ここに来ることができて、本当に感謝しています」

 グリーンはオーストラリア・ブリスベンの北部にあるサンシャインコースト出身。6歳からラグビーを始めたが、水泳、陸上、さらにクリケットもやっていたという。アスリートとしての資質が高いのだろう、ラグビーに専念するとオーストラリア高校代表にも選出された。

 2015年、地元のスーパーラグビーチーム「レッズ」でデビュー。翌年もレッズでプレーしていると、そこで思わぬ出会いが訪れる。のちにヤマハ発動機でチームメイトとなる日本代表FB五郎丸歩がレッズに加入してきたのだ。

 五郎丸から日本のラグビーについて、若きグリーンはいろんな話を聞いたという。そして彼のアドバイスもあり、豊田自動織機でのプレーを決めた。

「ゴロー(五郎丸)は私が20歳でまだ若かった頃、すばらしいメンターでした。南アフリカ遠征でも同部屋になりましたし、一緒にプレーできる機会を得られたことは本当に幸運でした。特にプレースキックは、彼と一緒にたくさん練習しました。彼の経験から多くのことを学び、吸収することができました」

【日本代表の10番に必要なもの】

 ジョーンズHCも同じオーストラリア出身だけに、グリーンにとっては、それも大きなプラスになるだろう。

「エディーとはいい関係を築けています。彼は経験が豊富で多くの知識を持っているので、質の高いコーチングを受けられます。エディーのアタッキングラグビーが大好きです」

 もちろん、目指すは母国で開催される2027年のワールドカップだ。そのためにはジョーンズHCの掲げる「超速ラグビー」に慣れる必要がある。

 今の手応えを聞いてみると、「もちろん(慣れました)! 速いラグビーこそが自分の強みで、ボールを持ったアタックが得意です。ですからこのスタイルに馴染むのは、私にとってはごく自然なこと。不安もありません。スキルもゲームプランも自信があります」と胸を張った。

 将来の目標に「ワールドカップ・ベスト4」を掲げている日本代表は、今年最大10試合のテストマッチを戦う予定だ。2019年以来となる世界トップ10を倒し、世界ランキング10位以内(現在13位)も目指している。

 2024年、日本代表はテストマッチで4勝7敗と大きく負け越した。「超速ラグビー」を統率する10番の出来が勝敗を分けたとも言われている。

 エディージャパンの10番に必要なものとは──グリーンに聞いた。

「決断力を持って、いい判断を下し、スピードと勢いでリードすることです」

 オーストラリア出身の司令塔は、エディージャパンの救世主となれるか。

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