
「昔のラインを見てたら、今はもう無い実家で寝てる、今はもういない猫の写真が出てきた。でも、何か今もどこかにこの家があって、この猫も寝てて、いつでも帰れるような気がするんだよなぁ。不思議」
【写真】畳とふすま、そして猫 “あの頃の実家”を思い出させる一枚
Xユーザー・相澤いくえさん(@aizawa_ikue)が投稿した、そんな一文に添えられた1枚の写真が、14万件を超える“いいね”を集め、静かな共感の輪を広げています。
写っているのは、今はもう存在しない実家の和室。昔ながらの和室の中央で、猫が仰向けになって眠っています。両足を軽く広げ、まるで日差しを楽しむような、無防備でのびやかな姿です。開いた引き戸の向こうからはやわらかな光が差し込み、その手前では、風に揺れる薄いカーテンが、部屋の静けさをそっと包み込んでいます。
かつてこの場所で家族が暮らし、猫とともに過ごした時間の気配が、今もなお残っているかのようです。部屋に差し込む光も、猫の寝息も、記憶の中にある懐かしい匂いさえも——。その一瞬を切り取った1枚の写真が、「あの頃、確かにあった実家」のぬくもりを静かに呼び起こしてくれます。
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続く投稿では、「今はない実家シリーズ全部いいから見てってください! そこらじゅうに猫がいる。撮影は弟です」とつづり、さらに4枚の写真を紹介。どのカットにも、時間と愛情が積み重なった生活の風景が息づいており、見知らぬ誰かの記憶に、自分の記憶が重なっていくような不思議な余韻を残す投稿となっていました。
この投稿に込められた思いとは——。投稿主さんに詳しくお話を伺いました。
“なくなった実家”と、家族の思い出を見つめて
ーー撮影時期はいつ頃でしょうか。ご実家について、覚えていることを教えてください。
「撮影時期は2019年ごろだったと思います。帰省した弟が撮ったものです。実家は宮城の山奥にありました。和室は2部屋あって、写真は“奥の和室”と呼ばれていた親の寝室です。私は2階の自分の部屋で、窓を開け放して過ごすのが好きでした。兄弟が全員上京し、両親がふたりだけになったタイミングで、実家を手放して街中のマンションに引っ越しました」
ーーこの猫さんとの思い出はありますか。
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「この猫は『モカ』という名前で、赤ちゃんの頃は茶色だったのですが、成長するにつれてグレーのまだら模様になりました。サビ猫だったのかもしれません。小学生の頃、父が拾ってきた猫で、たぶん家にいた猫の中で最初の存在だったと思います。他の猫も、モカちゃんにはあまり立ち向かっていかないというか、小競り合いが起きても、モカちゃんは高いところからそれを見下ろしているような、別格の存在でした」
ーー今回の投稿は多くの反響を呼びましたね。今、ご実家についてはどのような思いを抱いていますか。
「ちょうど私自身も引っ越しの時期と重なっていて、住む場所とは何か、実家とは何か…と考えていたタイミングでした。上京して10年住んだマンションも、最後まで自宅という感じがしなくて…。もしかしたら、私にとって自宅って、なくなってしまったあの実家だけなのかもしれないと感じていました。そんなときにあの感覚に共感してもらえたのが、すごく嬉しかったです。いつか、自分の自宅を見つけたいと思っています」
実家を思い起こさせるこの投稿は、多くの人の心にある帰れないけれど大切な場所をそっと呼び起こし、大きな共感を集めました。リプ欄には、実家の記憶や大切な存在を思い返す声が数多く寄せられています。
「なんか泣けてきた」
「写真が記憶の入り口なのでいつでも帰れますよ、きっと」
「ワイも帰りたくなったら実家帰ってる、心の中で。なぜか家族みんな若い」
「わかります。悪いことせずに死ねたらいけるのが、こういうとこだといいと思いました」
「わかります……! 目を閉じれば鮮明に思い浮かべることができます。私はそこを天国だと思ってのぞいています。大好きだった、おじいちゃんと、おばあちゃんとうさぎたちが居間で相撲を見ています。そんな思い出がある私たちは幸せです!」
「ノスタルジーとかサウダージとか哀愁郷愁あの日に帰りたいとか。ピッタリ合う言葉がない、日常の懐かしさと少しの寂しさのとても素敵なポストです。ひっくり返ってる猫ちゃん良すぎる!」
「みなさんのコメントを見て心が温かくなりました。何気ない実家のひとコマが宝物になるんですよね。先日、母から引き継いだ着物の箱を開けたら、今は無き実家の匂いがフワッと漂ってきて涙があふれて止まらなくなりました」
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(まいどなニュース特約・梨木 香奈)