「校務DX」導入に足踏み 6割の自治体が「未着手」

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2025年06月28日 19:11  ITmedia ビジネスオンライン

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校務DXに向けたICT整備動向調査

 文部科学省が推進する「校務DX」の導入は、まだ1割止まり――。ICT市場調査コンサルティングのMM総研(東京都港区)が実施した「校務DXに向けたICT整備動向調査」で明らかになった。


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●28%がクラウド型校務システム採用 「SaaSシフト」が加速


 校務DXは、クラウドを前提とした次世代校務支援システムの整備や、校務系・学習系ネットワークの統合、ダッシュボードによる情報の見える化などを柱とした取り組みだ。教員の柔軟な働き方を促進し、自治体ごとに異なる業務フローの標準化を目指している。


 校務DXの取り組みのうち、次世代校務支援システムをすでに導入している自治体は、全体の約10%にとどまった。導入・検討状況には都道府県ごとに差があり、文部科学省が推進する「次世代の校務デジタル化推進実証事業」に参加した山口県、秋田県、岩手県などでは導入率が高くなっている。


 一方、導入や検討が進んでいない自治体は全体の約6割にのぼった。特に人口規模の小さい自治体では、人的・財政的リソースの不足が課題となっている。導入を検討している自治体は、2025〜2029年度にかけて、既存システムの更新時期に合わせて分散的に進行すると考えられる。


 文部科学省は都道府県単位での共同調達を推奨している。調達の手間や運用負担を減らし、小中学校間でのデータ連携の強化やノウハウ共有を進める狙いがある。


 今回の調査では、28%の自治体が「共同調達の具体的な動きがある」と回答。26%が「都道府県から案内があった」としている。一方で、45%の自治体は「都道府県から何も知らされていない」と回答していて、対応には温度差が出た。


 共同調達については、賛成する自治体が全体の71%に達し、特に小規模自治体では高い傾向がみられた。


 システムの導入形態については、28%の自治体が「クラウド型(SaaS型)」を採用・検討しており、「PaaS型/IaaS型」は5%、オンプレミスは2%にとどまった。帳票のカスタマイズなど、完全なSaaS型での導入には課題が残っているものの、今後は「業務フローをシステムに合わせる」形での導入が増えていくと見込まれる。


 校務系と学習系ネットワークの統合を進める自治体は44%に達し、2023年4月の調査の10%から大幅に増加した。文部科学省の専門家会議による成果の報告や予算措置が後押しとなり、ゼロトラストセキュリティを基盤とするネットワークインフラへの見直しが進んでいる。


●校務支援システムの利用率 3位「内田洋行」、2位「スズキ教育ソフト」、1位は?


 校務支援システムの利用率については、1位が「EDUCOM」(33%)、2位が「スズキ教育ソフト」(27%)、3位が「内田洋行」(8%)となった。直近では、ベンダー各社から次世代校務DXに対応したSaaS型新製品のリリースが相次いでいるほか、新規参入ベンダーも複数現れるなど、校務支援システム市場が活発化している。


 学習eポータルについては、1位が「NTTコミュニケーションズ」(45%)、2位が「内田洋行」(36%)、3位が「オンライン学習システム推進コンソーシアム」(7%)だった。


 汎用クラウドや生徒の端末管理をするMDM(モバイルデバイス管理)など端末に関連するソフトウェアについては、「Google」と「Microsoft」の利用率が高かった。また、教員用の汎用クラウドでは、「Google Workspace」の採用が進み、Microsoftが独占していた環境から多様化が加速している。


 今後導入が進む「ダッシュボード」については、1位が「Google」(35%)、2位が「NTTコミュニケーションズ」(31%)、3位が「デジタルアーツ」(15%)となり、異なる領域のベンダーが並んだ。デジタル教材の学習履歴、汎用クラウドのログイン状況など、可視化するデータや目的が多様なため、自治体は試行錯誤しながら最適な運用を模索している。


 校務における生成AIの利用率については、自治体ベースでの導入率は17%だった。直近2年間で数%から10%程度の利用率で推移しており、着実に普及が進んでいる。


 生成AIの利用ツールについては、「Google」(46%)が最も多く、次いで「ChatGPT」(42%)、「Microsoft Copilot」(34%)が続いた。国内ベンダーの名前は挙がらず、外資系ベンダーが存在感を強めている。


 調査は、全国の市区町村1741の教育委員会を対象に、電話アンケートを実施した。調査期間は2025年2〜3月まで。


(小松恋、アイティメディア今野大一)



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