高級感を増した富士フイルム「X-E5」はスチル重視 撮ってて気持ちいい、あれこれ工夫したくなるカメラ

0

2025年06月29日 08:31  ITmedia NEWS

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ITmedia NEWS

精悍で高級感のある顔つきになったX-E5。同時に発表された23mm F2.8のレンズが似合う

 昨今のミラーレス一眼はどれも動画に力を入れていて、新製品を見るたびに「私は動画より写真を撮りたいんだー」とお嘆きの皆さま、お待たせいたしました、って感じの新作が出てくれたのである。富士フイルムの「X-E5」。


【画像33枚あり】画像は上がクラシックネガのみ、下はVelvia + FSレシピで華やかに仕上げたもの。同じ被写体でもこれだけ変わる


 X-Eシリーズの5代目だが、従来のモデルはコンパクトでちょっと廉価なジャンルだったのに対し、X-E5は性能をがっつり上げたのみならず、高級感を増し、ちょっと上のランクになったのだ。


 X-E5のカメラとしての基本性能は「X100VI」準拠と思ってよさそうだ。


 イメージセンサーは約4020万画素の「X-Trans CMOS HRセンサー」。APS-Cサイズながら4000万画素という高画素タイプだ。


 さらにX-Eシリーズでは初のボディ内手ブレ補正搭載。画像処理エンジンは「X-Processor 5」。乱暴にいえば、“レンズ交換式X100VI”的かも。


 マウントの左上にあるコントロールレバーもX100 VIや「GFX100RF」ゆずりだ。X100VIと違って光学ファインダーを持たないので、機能としては同様のレバーを持つGFX100RFと同じ感じ。


 このレバーは左右に倒す+左右に長倒し(なんか妙な表現だけど、レバーだから長押しならぬ長倒しということに)で4パターンの機能を割り当てられる。


 ユニークなのはGFX100RFで採用されたサラウンドビューが搭載されていること。


 X-E5にはX100VIやGFX100RFと同様のデジタルテレコン(1.4xと2x)が搭載されており、その際のファインダーの見え方を変えられるのだ。撮影範囲に枠を付けたり外側を半透明表示にしたりできる。


 また、アスペクト比を変更したときもサラウンドビューを使えば撮影範囲の外も見られる。


 その辺の操作をコントロールレバーで行うのだ。


 単焦点レンズのレンズ一体型カメラならわかるけど、それをレンズ交換式のX-E5にも持ってきたのが面白い。X-E5にはコンパクトな単焦点レンズが似合うから、それで撮影を楽しんでほしい、もし望遠が足りないときは4020万画素もあるから、多少クロップしてもOkだよ、といわれてる気がする。


 デジタルテレコンはもちろんどのレンズでも使えるわけで、16-50mmのテレ端を少し伸ばし、16:9で東京メトロ丸の内線を狙ってみた。それでも1600万画素相当はあるので、よほど大きくプリントしない限りは気にならないだろう。


 続いて背面。軍艦部がアルミ削り出しになったことですごくきれいな曲面が作られている。


 注目すべきはファインダー。EVFの仕様が「X-E4」と変わらない(約236万ピクセル)のは残念であるが、新たにクラシックモード表示が追加された。画面内の様々な情報を撮影の邪魔にならないよう最小限に減らし、フィルムカメラ時代を彷彿とさせる赤い露出表示と、露出メーターにするもの。最近のミラーレス一眼は機能が増えた分、ファインダー内が情報過多になりつつあり、それに辟易している人は大歓迎かも。これは、ファインダーを覗いた状態でDISPボタンを押すと切り替えられる。


 ちなみに、背面モニターはX-E4と同じで自撮り対応のチルト式だ。


 そして上面。シャッタースピード、露出補正、Fnボタン、シャッターボタンと電源というお馴染みの構成だが、アクセサリシューの左側にクラシカルな丸窓が一つ追加されている。


 この丸窓が今回のミソだ。


 基本的な6つのフィルムシミュレーション+FS1〜3の3つの自由に設定できるフィルムシミュレーションが用意されている。


●新機能「FSレシピ」を使いこなそう


 FS1〜FS3は自由に好きなフィルムシミュレーションを割り当てられるのだが、そこに新機能「FSレシピ」を加わったのが一番のトピックだ。簡単にいえば、色やトーンやダイナミックレンジや粒状性やホワイトバランスといったパラメータの組み合わせを「FSレシピ」として登録し、それに任意のフィルムシミュレーションに対してかけることができる機能だ。


 富士フイルムのカメラは以前からトーンコントロールやノイズ低減や明瞭度……といった一般的なパラメータに加え、「グレインエフェクト」や「カラークローム・エフェクト」、「スムーススキンエフェクト」など独特の項目がいっぱいあり、細かい画作りができるけれども、使いこなしが難しかった。


 でもFSレシピとして組み合わせを登録して、いつでもフィルムシミュレーションにプラスしてかけられるとなれば話は別だ。シチュエーション別やシーン別のFSレシピを用意しておき、かけたいときにかけられるのである。


 例えば、FS3にクラシックネガに対して、グレインエフェクトをかけ、ホワイトバランスを太陽光に固定し……てな感じでよりセットしてみた。


 FSレシピはレバーの長倒しで(他のボタンに割り当ててもいいけど)オンオフできるので、FS1〜3にセットしたフィルムシミュレーションはそれぞれFSレシピのオンオフで全6パターン使えるわけだ。


 もっと極端に差が出る例を作ろうってことで、バラの花を渋いの(クラシックネガ)と、超派手なの(ベルビアにFSレシピでダイナミックレンジを拡げてカラークロームエフェクトを強くかけたもの)を並べてみた。同じ被写体でこれだけ違う画を作れるのは良い。求める画を追い込んでみたい。


 さらにフルサイズで人物作例ってことでわざとらしいポートレート用にASTIAにダイナミックレンジ優先をオンにしてスムーススキンエフェクトを強にしてシャープネスは弱め、って設定も作って録り比べてみた。


 フィルムシミュレーションに加えてカラークローム・エファクトやグレイン・エフェクトといった細かい加工を施せるのは富士フイルムならでは。グレインエフェクトなどはフィルムっぽい粒子感を出してくれていい。


 かくして、フィルムシミュレーションを選ぶのみならず、フィルムシミュレーション+FSレシピで自分ならではの表現を楽しむカメラになったのである。


 モノクロ写真もFSレシピを使えばこんな風に少し青みがかった写真も撮れる。


●レンズ交換式カメラならではの多彩な撮影も


 とまあX-E5のポイントはこんな感じ。


 レンズキットとなっている「XF23mmF2.8 R WR」を装着すると高級コンパクトっぽいが、もちろんレンズ交換は可能なわけで、標準ズームレンズである「XF16-50mmF2.8-4.8 R LM WR」も使ってみた。


 フォーカス関連もX100VIなどと同じで被写体検出AF搭載。


 シャッタースピードはメカシャッターで1/4000秒、電子シャッターだと最高で1/180000秒まで上げられる。連写は電子シャッター時は秒13コマ(クロップなし)、メカシャッター時は秒8コマと。この辺は同じセンサー・エンジンを持つX-T50やX100VIと同じだ。その気になればレンズ交換式カメラならではの多彩な撮影もできますってことで。


 ISO感度はISO125からISO12800までで、拡張ISO感度として、下はISO64、上はISO51200まで拡げられる。高画素センサーということもあり、高感度には強い方じゃないが、ISO12800までならノイズの出方に不自然さもあまりなく、悪くない。


 X-E5は富士フイルムの「X Summit SHANGHAI 2025」で発表されたのだが、昨今の発表会では珍しく、動画の話が出てこなかった。ボディにも動画関連のボタンやレバーはない。モニターも前モデルと同様チルト式だ。


●高級化したX-E5は成功するか


 もちろん動画機能もあり、6.2Kで30fps、4Kなら60fpsまで対応しているし電子式手ブレ補正もあるが、X-E4と同様、動画を撮るにはDRIVEメニューから動画を選ぶ必要がある。


 X-E5は、あくまでも写真をメインに考えたクラシックデザインのミラーレス一眼と考えていい。


 ただ、前モデルに比べてハイエンド指向になったのは気になる人がいるかも。価格も上がり、ボディもアルミ削り出しやボディ内手ブレ補正搭載が関係しているのかいささか重くなった。サイズはあまり変わらないものの、バッテリーとSDカード込みの質量で、約364gから約445gと約81gも重くなった。


 より本格的に撮影をしたい人のためのレンジファインダースタイルのカメラになったと思って良さそうだ。


 その代わり(なのかどうかは知らないが)EVFはないけれども動画も気楽に撮れる廉価なX-M5が用意された。カジュアルで廉価なミラーレス一眼を求めるならX-M5を、より本格的な高画素で操作感もよく本格的に写真を録るならX-E5を、というところか。


 でもまあ、価格や重さの問題はあるけれども、X-E5の質感や操作感やFSレシピの魅力はでかく、撮ってて気持ちよく、あれこれ撮影に工夫をしたくなるのはX-E5なのだよな。



    ランキングIT・インターネット

    前日のランキングへ

    ニュース設定