画像提供:マイナビニュースダイハツ工業が6月5日に発売した新型「ムーヴ」はスライドドアを採用し、「カスタム」を廃止した。これらのダイハツの決断により、ムーヴは「一歩先ゆく軽自動車」になったように感じる。
ライバルに先駆けて(?)スライドドアを導入
スライドドア付きの軽自動車といえば、ダイハツ「タント」、ホンダ「N-BOX」、スズキ「スペーシア」などのいわゆる「スーパーハイト系」が多い。「ムーヴ」が属するのは「ハイト系」というカテゴリーで、ここでのライバルはスズキ「ワゴンR」、ホンダ「N-WGN」、日産自動車「デイズ」/三菱自動車工業「eKワゴン」などだが、この中で新型ムーヴは、他に先駆けてスライドドアを導入した。
スライドドアは乗り降りが楽で荷物の積み下ろしもしやすい。軽自動車市場では、新車販売の実に6割がスライドドア付きになっているという。スーパーハイト系ほど背が高いクルマは欲しくないが、スライドドアは欲しいという軽自動車ユーザーはきっといるはずだ。
ダイハツでは普通のドア(スイングドア)の従来型ムーヴからスライドドアの新型ムーヴに乗り換えても違和感がないよう、乗り味やデザインにこだわって開発を進めたという。例えば、スライドドア付き軽自動車は「箱形」に見えがちなので、新型ムーヴでは「Aピラー」(フロントウィンドウと前席横の窓の間にある柱)を寝かせた(角度を小さくした)デザインとしたそうだ。
今後、ワゴンRやN-WGNがモデルチェンジする際にスライドドアを導入するかどうかは不明だが、もし導入すれば「ダイハツには先見の明があった」と思えるし、もし導入しなければ、スライドドアがライバルたちとの大きな差別化ポイントになるはずだ。
ちなみに、ムーヴと同じようなサイズ感でいえば、ダイハツ「ムーヴキャンバス」とスズキ「ワゴンRスマイル」もスライドドア付きの軽自動車だ。これら2台もライバル関係にあるが、先に登場したのはムーヴキャンバスだった。
ライバルに先駆けて(?)カスタムを廃止
今回の新型ムーヴでは、従来モデルでは用意していた「ムーヴカスタム」という車種を廃止した。
そもそも、軽自動車にノーマルタイプとカスタムタイプを用意するという手法を始めたのはムーヴであったとダイハツは説明する。初代ムーヴに初設定したカスタムを当時は「裏ムーヴ」と呼んでいたそうだ。今では5種類の軽自動車を取りそろえるダイハツだが、初代ムーヴ投入時、軽のラインアップは他に「ミラ」しかなかった。少ないラインアップで多様なニーズに対応するため、ムーヴに雰囲気の違う「裏ムーヴ」を追加した、というのが当時の台所事情だったらしい。
ムーヴが先鞭をつけてくれたおかげで(?)、メッキを多用するなどして押し出しを強めた「オラオラ系」「ギラギラ系」のカスタム軽自動車がたくさん登場したわけだが、最近の動向を見ていると、自動車業界全体で、押し出し強めのクルマは減りつつあるような印象を受ける。カスタムをなくしてワンシルエット化し、あとは機能・装備の違いで選んでもらうという新型ムーヴの打ち出し方は、そんな時代の空気を先取りした、一歩先ゆくやり方なのではないだろうか。
とはいえ、軽自動車のカスタムモデルはすでにクルマ文化の一部になっているような観があるし、新型ムーヴにカスタムがないということに不満を感じるユーザーもいるかもしれない。そういう人には外観の雰囲気を変えられる「アナザースタイル」がある。ディーラーオプションにはメッキを使った「ギラギラ系」の選択肢もあるそうだ。(藤田真吾)