
半世紀以上にわたり郷土史料を収集している渡辺泰多さん(86)=岡山市北区表町=が戦後80年の節目に、戦前の雰囲気を伝える約1800枚の写真をまとめた「岡山夢散歩 明治から昭和の回顧集」を自費出版した。少年期に見た岡山空襲(1945年6月29日)から間もない市街地の光景が頭から離れず「焼け野原になる前の岡山の記録を後世に残したい」と古写真を集めてきた活動の集大成だ。
【写真】「天空の山城」として知られる備中松山城もかつて荒れ果てていた
岡山空襲の時に6歳だった渡辺さんは疎開していて難を逃れたが、表町地区の自宅が焼失。周りの見慣れた建物もほとんどなくなっていることに衝撃を受けた。20年後、空襲で焼けた岡山城を鉄筋コンクリートで再建する様子を見て、父親と木造の天守閣に上った時の感動を思い出した。「あの頃が懐かしいな」。戦前の風景が残っていないことが寂しく、自宅周辺の写真を探し始めた。
古い新聞を隅々までたどり、全国各地の古書店を訪ねた。次第に県内全域に関心を持つようになり、自治体広報紙や歴史書、社史、鉄道の情報誌などに対象を拡大。集めた数万点の史料から、今との違いが一目で分かる写真を10年がかりで厳選し、街並み、教育、鉄道・交通、災害といったテーマでまとめて1冊にした。
特に思い入れがあるのが、昭和初期を中心に撮影された表町地区をはじめとする岡山市内各地の商店街の写真。「大売り出し『誓文払』の時には、和服の人でぎっしり埋まっている。私と年齢が近い人はいろいろ思い出すのでは」と語る。上る時にぎしぎしと音がしたという木造の岡山城は1896(明治29)年に、屋根瓦や壁の凹凸が確認できるほど鮮明に撮影されている。
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岡山市以外では総社市の高梁川を行く高瀬舟、牛窓町海水浴場、津山大橋などの戦前の写真がある。県内の古地図も掲載している。「当時を散歩するような気分でページをめくってもらえたら」と渡辺さんは話している。 A4判、386ページ。8800円。問い合わせは丸善岡山出版サービスセンター(086―233―4640)。
(まいどなニュース/山陽新聞)
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